京都に紅葉の名所は数多くあります。
なかでも、山沿いにあるところは色づきが見事です。
京都市でも中心から北へ上がること約10kmの大原地域などは、山に囲まれており紅葉の色づきに良い条件が揃っている場所です。
大原にある 魚山 三千院。
天台宗に属するお寺です。
比叡山延暦寺を総本山とする天台宗の中に、特に格式の高いとされる五つの門跡寺院があります。
天台宗五箇室門跡、または縮めて天台宗五門跡と呼ばれます。
門跡寺院とは、皇族もしくは摂関家の子弟が住職を務めるお寺を指します。
三千院も、代々 出家した親王(法親王)が住持していましたが、明治政府による廃仏毀釈政策がこのお寺にも影響を与えます。
明治四年に当時の昌仁法親王が還俗。それまで京都市内にあった土地も接収、移転を余儀なくされ、当時名乗っていた梶井門跡という名前も使えなくなりました。
新しく名前を付けなければいけない。
悩むお坊さんたちの前に、当時薬師堂にかかっていた額(扁額)が目に止まったのだとか。
そこには、霊元天皇の手による言葉が書き込まれていたのです。
それが、「三千院」。
三千院は長い歴史を持つお寺ですが、何度か移転や改名をしてきた経緯があり、現在の場所と名前に落ち着いたのは明治時代のことなのです。
境内の中に見える菊花の紋。これまでの皇室とのゆかりが偲ばれます。
三千院は、五箇室門跡の中でもいちばん北に位置します。
北から数えて、三千院、曼殊院、青蓮院、毘沙門堂、妙法院。
青蓮院と毘沙門堂は南北、よりも東西に並んでいるという感じですが、全て京都盆地の東側に位置します。
比叡山から見ると、山伝いに歩いて移動可能な場所ばかり。
本山から連絡しやすい場所だからこそ、格式高い寺院を置くのに適していたのでしょうか。
それぞれ景観に恵まれた寺院ばかりですが、紅葉の美しさにかけては、やはり三千院を置いては話ができません。
しかし、京都北部の並み居る紅葉名所の中でも、三千院ならではの魅力があります。
伽藍と紅葉の調和です。
三千院には、歴史ある寺院らしく、数多くの由緒ある建造物が立ち並んでいます。
鮮やかな紅葉と、歴史ある寺院ならではの大きな伽藍、その組み合わせた景観が楽しめるのが三千院の特色ではないかと思います。
建物から見る、庭園。聚碧園。
建物は客殿といいます。明治には竹内栖鳳など名だたる画家たちが襖絵を奉納したのだとか。障壁画は、現在は円融房という建物に移され保管されています。
聚碧園は池泉観賞式のお庭で、江戸時代の茶人 金森宗和の手によって修築されたと伝わります。
緋毛氈の上は茶席になっており、抹茶をいただきながら眺めることが出来ます。
建物から見る、別のお堂。往生極楽院。
宸殿(しんでん)という重要なお堂があります。
三千院の数ある行事の中でも最大の「御懴法講(おせんぼうこう)」を執り行う場所です。生きていく中でついしてしまう悪行を悔い、心の中にある「むさぼり、怒り、愚痴」の三毒を取り除くという内容で、平安時代末期の宮中に起源をもつ大変由緒あるものです。
さて、有清園のお庭に降りていきましょう。
苔が鮮やかです。大原は山に囲まれた盆地。紅葉の色づきだけでなく、苔の生育にも条件が良いのでしょう。
有清園は三千院の中でも特に紅葉が多い場所です。回遊式になっており、見事な赤色にいざなわれて奥へと進んでいきます。
紅葉が彩る往生極楽院。
建物に絡みつくように枝を茂らせる紅葉。見事です。
往生極楽院は平安末期(12世紀)の創建だそうですが、江戸時代に大改修を受けています。重要文化財指定。中には国宝 阿弥陀三尊像が安置されています。
(仏像は撮影禁止)
境内はさらに奥へ続いていきます。
往生極楽院から坂を上がっていくとたどり着くのが観音堂です。
観音堂の脇には、比較的新しい庭園があります。
1997年完成 中根庭園研究所の手による二十五菩薩慈眼の庭。
東屋から眺めれば、額縁景観を楽しむことが出来ます。
最後にご紹介したいのは「わらべ地蔵」。
往生極楽院の南側にたたずむ、可愛らしい石のお地蔵さんです。
苔に包まれて、すっかり庭の一部のようになっています。
愛らしい表情で参拝者の人気を集める石仏さんです。
大原の紅葉は京都市街地と比べると1週間~10日ほど早め。
11月中旬ころを目安に訪問すると良いかと思います。
参照
三千院公式ホームページ
中根庭園研究所公式ホームページ
京都山城 寺院神社大辞典 平凡社