錦の京野菜事情 その1 【京都のお雑煮】

京野菜

 私は京の台所と呼ばれる錦市場で京野菜を取り扱うお店を営んでおります。
 私のお店がある錦市場は、よくテレビや雑誌等に取り上げられますが最近では食べ歩きなど観光のお客様向けの記事が目立ちます。
 しかし本来、錦市場は料亭や地元のお客様の台所を400年間支えてきた市場で今もしっかり受け継いでいるお店もたくさんあります。そんな中で皆様が知らない京野菜の実情をお伝えしていきたいと思います。

 京都は他の地方とは色々と文化の違いがあります。特に料理の文化に関しては洗練されており、またそれに使用する食材にもかなりのこだわりがあります。
 京都市内は海からも遠いため、昔は鮮魚等が手に入りにくく、また寺社仏閣での精進料理などもあり野菜をメインにする料理が発展してきました。
 また、近隣に畑が多かった為、消費者の声が生産者まですぐに届きます。そんな中、農家同士も切磋琢磨してより良い品質、また独自の技術で作られた野菜が数多く出来ました。それが今日、京野菜と呼ばれています。

そして今回は年末だけに出回る京野菜について書かせて頂きます。

お雑煮について

京都のお雑煮

京都の雑煮といえば、白味噌!

白味噌ベースに、丸餅を焼かずに使う
かしら芋を1個、そして輪切りにした雑煮大根、それぞれを湯がいて入れる

かしら芋は家長がもっとも大きい一つを
そして奥様やお子さんたちがそれぞれ控えめなサイズを召し上がるため
かしら芋が大中小と店頭に並びます。

かしら芋
雑煮大根

・・・ですが

 昨今では、昔ながらの雑煮を作るご家庭も高齢化、かしら芋も大きいものは食べきれなくてと言われるご家庭も多く、中には、大きいものを買って、半分に切って使われるご家庭もある様子。
 もちろん伝統を守り続けているご家庭もおられますが、
昔からのしきたりはもはや形だけになっていると言っても良いかもしれません。

 若いご家庭や、京都に引っ越ししてきた方が京風のお雑煮を作ろうと思っていたとしても京野菜の使い方もよくわからないし、お値段も安いものではないので代用品で済まそうかなと思われる方もおられるはず。
 一番の心配は使いたいのに、手に入らない状況になること

 かしら芋・雑煮大根は、年末たったの1日きりの入荷、たった一度きりなんです

 なぜなら生産者さんも減り、後を継がれる方も減り、入荷量も減っている。さらに消費量も減っているからです。

 かしら芋にせよ、雑煮大根にせよ
京都が京都らしかった時代には当たり前に使っていたものが
現在は当たり前ではなくなっています。

飾り切り(細工野菜)

 例えば、当店でも年末に登場するおせち用の飾り切り(細工野菜)なんかは、昔は店頭で取り合いになるほどでしたが、近年は店頭でお買い求めになるお客様は減ってきております。
 その代わり料理屋さんのおせちを買われるお客様が増えてますので料理屋さんからの注文は増えております。

梅にんじん
松笠くわい

「これでないと年は越せない!」
とは思わない、現代の臨機応変さはよいですが昔からのしきたり
といった観点からみると、伝統が継承されないのはちょっと残念でもあります。

思い描く「京都らしさ」
幻想かもしれないですが、やはり「京都らしさ」というのは
京都に来る観光客にしても、住んでいる人にしても思い当たるものがあると思います

ちょっとめんどうくさいくらいが「京都らしさ」につながる

 だから、やっぱり、お正月にはおなかいっぱいになっても
ひとり1個のかしら芋、雑煮大根、そして丸餅のはいった白味噌のお雑煮を食べ続ける。
そんな行事を守り続けたいものですね。
今年の年末は是非ご自宅でのお料理チャレンジしてみてください。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いたライター

 
錦 川政 四代目店主
1975年京都市生まれ。同志社大学商学部卒。
有限会社川政兄弟商会 代表取締役社長。
京都錦市場商店街振興組合 青年部会 会長
京都の料亭をはじめ全国の飲食店へ京野菜を届けております。
厳しいプロの料理人の方にそして京野菜を食される全ての方に喜んでもらえるよう日々努力しております。

|川政兄弟商会 代表取締役・錦神輿会 青年部 会長|錦市場/京野菜/祇園祭/錦の神輿/お雑煮