前回は歳神様をお迎えするところまでの説明でしたが、今回はいよいよお正月の楽しみ、お雑煮とおせちのお話です。
お正月の京都の習わしには京都の文化が詰まっていて、京都人度チェックをするにしてもかなりたくさんの項目になってしまうのですが、ここでは6つのチェックをしながらご説明していきましょうね。
京都人度チェック① 雑煮椀の形
では早速1問目。
①京都の雑煮椀の大きな特徴はなんでしょう?
「雑煮椀の特徴は何?」っていう問いなんですが、木のお椀、漆塗り、蓋が付いてるとこまでは同じです。紋も付いてますよ。
が、実はこれ、一見したらわかるんですよ。ご覧になった事ある方おられますか?
ほれ、小さい!蓋が!
これは男用ですが、ちょっとわかりにくいので女用もご紹介。
小さいですね。蓋の役目は果たしてませんね!
初めて見たらちょっと異様な感じすらします。
開けてみたらこんな感じ。
そうなんです。これは蓋ではなく、取り皿なんですよ。
ここにはあとでご説明する「三種」を入れることになっています。
お椀の違いについてはもっと厳密に言うと、女性用のお椀の紋は女紋にするべきところですが、またそれは別のところで。
京都人度チェック②③ お雑煮の中身は?
今度は中身のお話しましょうね。
京都のお雑煮は白味噌ですが、中に入っている具も京都ならではのものが入っています。そこでチェック2問目!
②お雑煮には何が入っていますか?
いろんな地方の方がご覧になっているかと思いますが、お雑煮の具って千差万別ですよね。京都は山に囲まれているので新鮮な海の物は手に入りませんし、具も山の物ばかりです。
丸いお餅 小芋(海老芋) 雑煮大根 全部丸い
白味噌 お砂糖
出汁は昆布だけ かつお節はあとでかける
写真を撮ってみたんですが、白味噌って中身見えへんのですわ。
見てもわからんので答えを並べて見ると、
焼かないお餅(丸餅)
雑煮大根
小芋(海老芋)
以上です。少ないでしょ?
そして、具も全部白いので、ただでさえ見えにくい白味噌の中に入れたら真っ白のお雑煮になります。また形はというと全部丸い!お餅も丸い、小芋も丸い、雑煮大根も輪切りにするので丸い!これは歳神様の御霊(みたま)を表していると言われています。歳神様へのお供えであるお鏡さんも丸いですね。
お家によっては金時人参(京人参)を入れるところもありますが、うちでは真っ白にして神様にお供えする気持ちで作っています。
でも上にかつお節かかってますよね?実はお雑煮の出汁は、かつお節を入れず昆布出汁だけ。これはなんでかというと、仏さまに上げるためなんです。かつお節を入れると精進でなくなってしまうので、仏さまに上げてから、私らはかつお節をかけていただきます。仏さまへのお供えでも、ちゃんと小さく切った3種類の具を入れるんですよ!
さてここで、もう1つチェックを入れますよ。
③一家の主であるお父さんのお雑煮には別のものが入っています。それは何でしょう?
見たことない方はビックリしやはるんですが、これです!
おっきなお芋ドーン!!
これは小芋の親、頭芋なのです!迫力あるでしょ~
しかもこれはまるごと1個入れんとあかんことになってるのです。切ったらあかん!
刃物入れたらあかんのです。なので余計に食べにくい!しかしこれもやっぱり丸い。丸いもんは丸いまま入れるのがしきたりなんやろなと思ってます。
頭芋は一家の主と跡継ぎが食べることになっているので大体男なんですが、私は女でも子どもが私だけやったので、結婚するまでずっと食べてました!
もうこれだけでお腹いっぱいになりますよ。うちは元日だけですが、三が日食べるお家もあるそうで、いやいや家長さん大変…
主人は結婚してから食べるようになったので、初めてのお正月は、この「まるまる1個ドーン!」に面食らってましたねぇ!今はおとなしく食べてますが、年でちょっとしんどくなってきたみたい。それで、残ったら知らん間に私のお椀に入れてます。私慣れてるので食べますよ~
頭芋は1個ずつ売られています。ちょっと高いめのを買いますよ。
前の日に下茹でしておきますが、頭芋でもいろいろあって、安いのはいくら茹でても下の方が柔らかくならへん。ガリガリ言わせながら苦労して食べんとあかんので、ちょっとはりこんでええの買うんですよ。これも主人のため♪
京都人度チェック④ おせちの三種
さて、チェック①のところで触れたおせちの「三種」が、次のチェックとなります。
この「三種」って何?と思う方がやはると思うので、先にご説明しますと、
「三種」とは、おせちの中でもこれだけは揃えておかんとあかん「祝い肴」のことを言います。ではチェック。
④京都のおせちの中で「三種」と呼ばれているものは何でしょう?
答えは、「数の子・たたきごぼう・ごまめ」。
関東の方は「あれ?違う!」と思った方がおられるでしょうね。関東では「数の子・黒豆・田作り」となりますね。
このように関東と関西は1つ違うものが入り、京都も関西なので関西風の「三種」となりますが、最近は関東風に押されて、大阪などでも東京と同じものを揃えているご家庭も増えてきてると聞いています。京都では京料理屋さんが守ってくれたはるので、これが間違いない、という確信を持って言えますが、この潮流に逆らうのがだんだん難しくなってきているようです。
そこで私とこでは、母に教えてもろた覚え方で忘れんようにしています。
「かずかずごんぼにごまめ」
「かずかず」は御所言葉で数の子のこと、「ごんぼ」はごぼうの京ことば、「ごまめ」は田作りのことですね。
ところで、そしたら関東には入っていてこちらでは外れてしまった「黒豆」はどうするか、っていう問題が出てきます。黒豆は京都でも縁起の良い食べ物とみなしています。三種は「3」という縁起が良い奇数になっていますが、黒豆を足してしまうと「4」になってしまう。これは大きな問題です。
で、どうするかというと
4つともそのまま乗せます!
な~んや、って思う方、ものは考えようですよ。うちでは「4種」ではなく「3種+黒豆」と思って乗せているのです。そやし「4種類や」って思ったことないんですよ。
ええ加減と言われたらそうなんですが、まぁ、よろしやん!(ニッコリ)
京都人度チェック⑤ 京都のおせちに入っているお魚?
最初に、京都は海から遠いので、山のものが入っていると言いましたが、お魚も無くはないです。もちろん三種のごまめもお魚やと言われたらそうなんですけど、もっと特徴的なものがあります。これが入ってたら京都のおせちや!っていうものですね。ということでチェックにいきます。
⑤京都らしいおせちの魚の具材は何ですか?
これはご存じの方も多いかもしれません。答えは
「棒鱈(ぼうだら)」。
色濃いでしょ~!
あの白いタラとは似ても似つかん黒っぽい色!
でも「いもぼう」て言うたらわかっていただける方もあるかと思います。「いもぼう」は海老芋と棒鱈を長い時間炊き合わせた京都のおかずです。今はわざわざ普通のおかずとして炊く方はほぼ無いですが、有名なお料理屋さんの名物となってますね。口に入れたらほろっと崩れるほど柔らかく炊けると、とっても美味しく食べることができます。
家ではこれがなかなか難しい。棒鱈の名前の由来は、タラをカチカチになるまで棒状に乾燥させたところから来てますが、作るにはまたこれを水で戻さんとあきません。私は戻すとこからやったことないんですが、2週間くらい水に浸けて、しかも毎日毎日水を替えんとあかんのです。戻して柔らかくなったタラを、今度は灰汁取りと色付けのため番茶で茹でます。その後出汁とお醤油・みりん・お砂糖でコトコトコトコト炊いていかんとあかんので、本当に時間のかかるお料理なんです。
で、私はというと、そんなことやってられへんので、圧力鍋でシューっと一日で作ってしまいます!棒鱈もカチカチのを買わず、今は戻したものが売ってあるのでそれを使えば簡単!手間をかけたほうがきっと美味しいのやろなと思いながらも、そのせいで作らんようになったら元も子もありません。骨まで柔らかくなるし、そこそこ美味しいし、これでよろしやん!(また出た)棒鱈が入ってたら間違いなく京都のおせち!
京都人度チェック⑥ 祝い箸
そして最後のチェックです。
⑥京都の祝い箸は、上下どちら向きにお箸が出ていますか?
これは意外と京都の人も気が付いてない。
ずっと使っている人も、指摘して初めて気が付いた、という返事が返ってきましたよ。
答えは「下向き」。
普通のお箸は上にお箸が出てますよね。
ところが、京都のお箸は
ほれっ、下向き!
このお箸ももう荒物屋さんにしかありません。
前使った写真ですが、ここにありますよ。
来年も売ってるやろか。
どうしてスーパーは売ってくれへんのやろ。
毎年毎年思うことです。
どうか無くなりませんように。
そして我が家も今年のおせちをいただきました。ちょっと恥ずかしいですが、最後にうちのおせちをご覧ください。
私が母から習い、母は自分の父から習い、祖父は自分の祖母から習い、祖父の祖母は母親から習ったおせちです。現代の製品以外は江戸時代から変わっていません。私はまた子どもたちに教えていきます。
さて、三が日もあっという間に終わり、そしてすぐに七日正月がやってきます。
七草粥にも習わしがありますよ。次はその説明をしますのでお楽しみに♪