京都の知られざる穴場スポット。
そんな場所を多くの方が探し求めているような気がします。
試しに、本棚にある雑誌の京都特集を見てみると、
「穴場な秋の京都」「みんなの京都 ナイショの京都」「京都人に案内されたい 新顔の京都」……
「穴場」人気の高さが伺えます。
私も実は、このような特集を楽しみにしている読者の一人です。
大阪で生まれ育ち、神戸で学生生活を送り、東京で社会人になり、関西へUターンをして京都で働き始めてからまだ4年足らず。
そんな私からは、いわゆる「穴場」のご紹介とは少し違った、何気ない場所が自分だけの「穴場」に変わるヒントをお届けできればと思います。
木工職人さんに教わった「木目」の見どころ
みなさん、木の香りのする空間や、木製のインテリアはお好きでしょうか。
暮らしの中に木があると、心が落ち着きますよね。
こちらの写真は、私の職場 “0歳からの伝統ブランドaeru”の京都直営店「aeru gojo」の一角。
私のお気に入りスポットの一つです。
洗面台として、工務店さんが見つけてくださった「栴檀(せんだん)」の木の一枚板を使っています。
職人さんと仕事をさせていただくようになったばかりの頃のこと。
とある木工職人さんが、この一枚板の洗面台をご覧になり「ここの表情がすごく良いね!」とおっしゃったのです。
職人さんがおっしゃった「ここの表情」というのは、こちら。
言われて初めてじっと観察してみると、蜃気楼のようなゆらぎの中から、今にも枝がぐいっと伸び出しそうなエネルギーを感じます。
職人さんがおっしゃったのは、「杢(もく)」と言われる木目の表情のこと。
私たち人間の顔と同じで、木目の表情は一つひとつ異なり、中でも希少価値が高く美しいものは「杢(もく)」と呼ばれています。
もちろん、何を美しいと感じるかは人それぞれだと思うのですが、日々たくさんの木と向き合っておられる職人さんが「面白い!」「めずらしい!」「美しい!」と感じる木目があるということを、初めて知りました。
木の香りのする空間や木製のインテリアは、なんとなく心地良いな、好きだなと感じていましたが、木目をじっくりと眺めたことはなかった。
そう気がついて衝撃を受けた出来事でした。
宝探しのように「木目」を楽しむ
さて、この一件をきっかけに木目の面白さを知った私は、木目を見かけると思わず観察してしまうようになりました。
今までと同じものや景色を見ているのに、木目のことを少し知っただけで毎日が宝探しのようになり、なんだか得をした気分です。
また、一度行ったことがあるお寺や神社などの観光名所も、以前と違った楽しみ方ができたり、新しい発見があったり。
京都には、木を贅沢に使って作られた建物がたくさんありますが、歴史ある京町家もそのうちの一つです。
「この壁のチャームポイントはどこだろう」と考えながら眺めてみると、思いがけない楽しい発見があるかもしれません。
また、壁や扉などの大きなものだけではなく、色々な場所で見かける家具にもぜひご注目ください。
写真のテーブルは海外から輸入されたアンティーク。
ウォールナットの根元の“こぶ”の部分を活かしたデザインになっています。
こちらも実は「杢(もく)」の一種で、木の“こぶ”をスライスすることで生まれたものだそうです。
海外の職人さんも、木目の表情を楽しみながらものづくりをされているのですね。
自然の営みが生み出す「木目」の魅力
面白い木目は他にもあります。
以前、富山の製材所を訪問させていただいた時のこと。
たくさんの種類の材木が並ぶ倉庫の中、めずらしい木目のものを扱っておられました。
菌の残した黒い縞模様や、虫喰いの穴がある「楢(なら)」の木です。
職人さんによると、木目は木だけが生み出すのではなく、自然界で生きている菌や虫など、様々な生き物の自然の営みによって生まれるそう。
その命の痕跡が、世界に一つだけの表情となって現れます。
そんな「虫喰い」の木目を活かしたフローリングも。
とあるホテルで床に使用されているのを偶然発見し、思わず足が止まりました。
木目に色々な種類や表情があることを知らなかった以前の私であれば、何も気がつかず通り過ぎていたに違いありません。
京都のまちには、神社やお寺、歴史ある京町家など、今ではなかなか手に入らないような貴重な木が使用された場所がたくさんあります。
建物の壁や柱、扉、机、椅子など、様々なところで面白い木目に出逢うことができると思います。
みなさんもぜひ、自然が生み出した美しい木目を探して、京都のまちを歩いてみてはいかがでしょうか。