京都へ移住してきたら、まちのあちこちに「ゆ」の暖簾が掛かっていて、昔懐かしいお風呂屋さんの姿にほっこりしてしまいました。
いつしか銭湯巡りが私のライフワークになり、2016年には「ひつじの京都銭湯図鑑」として出版にも至るほどに。

そんな京都の中でも、私が住む上京区は、2019年で区制140周年。
この歴史ある上京区を眺めながら、そこにある個性豊かな銭湯を一緒にのぞいてみましょう。

ここからは、らくがきひつじがご案内します。
銭湯の屋根をパカっと開けて、上からのぞいた「間取り図」で銭湯の内部の様子をお伝えします。

映画のまち西陣

上京区の大部分は、「西陣」と呼ばれるエリアに属しています。
西陣織で有名な西陣ですが、実は映画のまちでもあったということをご存知ですか?

千本通沿いには映画館が何軒も密集していたのだとか。
その中でも、千本中立売のバス停すぐ、「西陣京極」という一帯は、ひときわ映画館が密集していました。
中には「封切館」と呼ばれる、新作映画が全国で最初に上映される映画館もあったとか。

(「上京 史蹟と文化」1992年vol.2掲載画像より抜粋の上、筆者加工)

現在も映画館として残っているのは千本日活のみ。
西陣京極からも映画館の姿は消えてしまいましたが、実は、当時の面影を感じられる場所はチラホラと残っています。

その一つが、西陣京極で営むこと70年の銭湯、京極湯です。

京極湯に残る映画のまちの面影

暖簾をくぐった玄関スペースには、銀幕を彩った往年の映画ポスターが飾られています。
ご主人が、映画のまちの雰囲気を味わってもらおうと飾ったものです。
レタリング(手書き文字)や人物画は今見ても圧倒されるクオリティーですし、「総天然色」などの売り文句から、映画がカラーになった時代の高揚感が伝わってきます。

近くの白黒写真に目を向ければ、映画館に人が溢れる町並みや、当時人々の足となった市電の様子が見て取れます

映画だけではない、懐かしい銭湯

そんな古き良き時代を垣間見ながら戸を開ければ、脱衣所や浴室にも昔懐かしい雰囲気が漂っているではありませんか。
番台、コーヒー牛乳、大きな壁付け扇風機、タイル貼りの洗面台…
せわしない日常を忘れて、しばしタイムトリップを。

タイル貼りの浴室では、体の芯から温まる、あつあつの湯船に加え、電気風呂や薬湯、スチームサウナに水風呂と、バリエーション豊かなお風呂が楽しめます。
あつあつ湯船の秘密は釜場にあり。
天然の地下水を汲み上げて、薪で沸かすのが京極湯のこだわりです。

そのおかげで、熱くても肌当たりが柔らかいお湯となり、体の芯から温めてくれるのだそうです。

近年は様々な取組もされていて、楽しみが多いのも嬉しいところ。
通りで目を引く色鮮やかな塀は、芸大の先生による作品。
金土日曜日は、あひるのおもちゃが湯船に浮かんで、子どもはもちろん、大人だって童心に返ってしまいます。
ご主人が釜の火で焼印を押して作る木札も販売してますので、記念にどうぞ!

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大武 千明

手描き図面工房マドリズ
間取り図クリエイター/一級建築士

1985年愛知県生まれ。住宅メーカーの設計業務で手描きの図面作成スキルを身につける。
2013年に京都市へ移住、銭湯に通い始める。銭湯の営業中は内部撮影不可のため、イラスト化することを思いつく。
2016年に著書「ひつじの京都銭湯図鑑」を創元社より出版。
2018年に「手描き図面工房マドリズ」として独立。

                                   

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