皆さま、明けましておめでとうございます。旧年中はKyoto Love.Kyotoをご愛読いただきありがとうございました。この場を借りて御礼申しあげます。本年も一層のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。

さて、2020KLK編集部の記事始めは、一休さんをテーマにしたいと思います。40代以上の方なら「一休さん」といえば月曜夜7時30分に6チャン(関西エリア)のアニメを思い浮かべられるかと思います。あの「♪すき すき すき すき すき~ すきっ! 一休さん」という好き好き大連発のラブコール主題歌が印象的でしたね。

将軍さまや桔梗屋さんのイジワルな無理難題に、とんちで鮮やかに切り返す一休さんは当時、坊主頭の代名詞でもありました。そんなかわいい一休さんですが、一回だけとても恐い話の回がありました。
お正月なのにドクロが付いた杖をもった一休さんが、お経を唱えながら町を歩くんです。そんな一休さんに町の人々は罵声を浴びせ、なかには石を投げる人も…そんな話だったと思います。BGMも「♪すき すき」のような能天気さはなく、おどろおどろしい不気味なメロディでした。リアルタイムで見ていた私は子ども心に「タダゴトではない」空気を感じて、たしかその晩はなかなか寝つけなかったと思います。
そして今ごろになって、あれは何だったんだろうというギモンがふつふつと湧いてきたので、調べてみようと思いたったわけです。

ところで一休さんの本名は一休宗純といいます。アニメのようなかわいいキャラではなく、むしろ超超超くらいのヘンクツ坊主だったそうです。そんなヘンコな一休さんの生涯をたどったところ、アニメの話に該当するエビソードが見つかりました。

ある年のお正月に一休宗純は「門松は冥土の旅の一里塚 めでたくもあり めでたくもなし」という句を詠みました。この句の意味するところは「新しい年を迎えるということは、死に一歩近づくということ。正月の何がめでたいものか」というものです。
昔は年齢を数え年でカウントしたため、年が明けると皆が1つずつ年をとることになります。つまり全員が「死」に一歩近づく正月がめでたいはずがない。門松はいわばあの世へのチェックポイントのようなものだ、というわけです。
新年早々、そんな不吉な話をしながら京の町を練り歩く一休さん。しかもドクロをかざしながらですよ。イヤガラセ以外のなにものでもないですね。おかげで正月モードの華やかな雰囲気は、見事に真っ黒けに塗りつぶされてしまいました。
一説には、この不気味な行脚のせいで、京都の人々は三が日の間は外に出ないようになったとか。

でも、この一休さんの奇行にも意味があったのでした。
人は誰もが必ず死ぬ。しかもそれは今日かもしれない明日かもしれない。生きるということと死ぬことは、常に背中合わせである。皆が一斉に年をとる正月こそ死というものをしっかりと認識しなければならない。そんなことを一休さんは言いたかったんだと伝えられています。

私はもう一歩ふみこんで考えてみました。
いつ死ぬかわからないのが人生。だからこそ、今この瞬間瞬間を大切に一所懸命に生きなければならない。もし明日死んだとしても悔いのないよう、今日という一日を精一杯生きよう。そんな深いメッセージが込められているのだと思います。
少し意味は違いますが、一期一会の精神と似たものを感じました。でもヘンクツ一休禅師ならともかく、そんな重たい話を5歳だったか6歳だったかの小坊主一休さんが触れて回るって、いくらなんでもそれはないっしょ、とやっぱり思ってしまうのでした。

一休さんの真意はともかく「一年の計は元旦にあり」と申します。いつ死ぬかわからないなんて重苦しいことはヌキにして、一日一日を大切にすごし良き一年となるようにしたいものですね。

KLK編集部もよりよい企画、よりよい記事をお届けできる一年となるよう頑張ります。皆さまにとっても佳き一年となりますように。

(KLK編集部 吉川哲史)

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この記事を書いたKLKライター

八坂神社中御座 三若神輿会 幹事 / (一社)日本ペンクラブ会員
吉川 哲史

祇園祭と西陣の街をこよなく愛する生粋の京都人。

日本語検定一級、漢検(日本漢字能力検定)準一級を
取得した目的は、難解な都市・京都を
わかりやすく伝えるためだとか。

地元広告代理店での勤務経験を活かし、
JR東海ツアーの観光ガイドや同志社大学イベント講座、
企業向けの広告講座や「ひみつの京都案内」
などのゲスト講師に招かれることも。

得意ジャンルは歴史(特に戦国時代)と西陣エリア。
自称・元敏腕宅配ドライバーとして、
上京区の大路小路を知り尽くす。
夏になると祇園祭に想いを馳せるとともに、
祭の深奥さに迷宮をさまようのが恒例。

著書
「西陣がわかれば日本がわかる」
「戦国時代がわかれば京都がわかる」

サンケイデザイン㈱専務取締役

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