東男に京女。「あずまおとこにきょうおんな」と読む、お似合いの男女を表した江戸時代の言葉です。江戸っ子男子は粋でたくましく、京女はおしとやかで優しいというイメージから、ベストカップルとされました。つまり、京都の女性は全国屈指の「モテ女」なわけです。でも、ホントに京女はおしとやかで優しいのでしょうか。私の貧困な人生経験からの偏見ですが「そんな女性もいれば、そうでもない女性もいる」としかいいようがないですね。ではなぜ京都の女性が、おしとやかで優しいと「思われて」いるのでしょうか。そこには京都弁の魔力、いえ魅力が絶大な効果を発揮していたのでした。
合コンにおける京都弁と大阪弁のモテ度
マイナビウーマンのアンケート「思わずキュンとしてしまう女性の方言」によると、男性の圧倒的支持を得たのが京都弁だったそうです。「おしとやかで上品」「10倍増しに聞こえて、つい付きあいたくなる」「清楚」「ほんわかしている」といった声が多くありました。一方こちらも根強い人気を誇るのが大阪弁。特に自分のことをいう「うち」にキュンする男性が多いようです。とはいえ、関西圏外の人にとっては、京都弁も大阪弁も同じように思われていますよね。
しかし、合コンなどひとたび実践の場になると、京都弁と大阪弁ではその明暗がクッキリと分かれます。早口になりがちな大阪弁は「なんだかキツく聞こえるね」と言われたり、「漫才みたいだね」と言われることもあるようです。漫才みたい=笑いをとれる=明るい女性であり好感度的にはOKなのですが、キャライメージとしては吉本新喜劇の島田珠代さんあたりになるのでしょうか。友だちとしてはウエルカムですが、彼女となると「うーん…」となっちゃいますよね。(珠代さんゴメンナサイ。あくまで新喜劇のキャラでの話です)
いっぽうの京都弁女子。
「それ、ほんまなん?」「そんなんかなんわぁ」「あーしんど」etc…。京都人にとっては、なんてことのない日常会話なのですが、ひとたび関西という境界線を越えた瞬間、キラーコンテンツとなります。そのフワッとした語感に萌え度が倍増、男性陣のハートを鷲づかみにします。
ただし、問題は京都弁のふんわり感と、ご本人のキャラ(本性?)が必ずしも一致するわけではなく、実際に付きあいはじめるとそのギャップに愕然とする男性も多いとか。そう考えると実質本位の大阪弁女子の方が長続きするお付きあいができるのかもしれませんね。
京都弁vs大阪弁
さて、ここで京都弁と大阪弁の違いを整理してみます。
たとえば「書く」「言う」の尊敬語をそれぞれの方言にすると
京都弁 → 書かはる 言わはる
大阪弁 → 書きはる 言いはる
となります。国語のお勉強的にいうと京都弁は活用部分「か」の母音が「ア」段であり、大阪弁の「き」は「イ」段となります。そんなメンドクサイ話はおいといて、この「~はる」という敬語にも京都と大阪ではニュアンスが異なります。大阪弁の「~はる」は、立派な尊敬語であり相手への敬意を示す最も一般的な言い方とされます。
いっぽう京都弁の「~はる」は、いちおう敬語の範囲ではありますが、「赤ちゃんが~しはる」など本来敬語を使わない身内にも使われ、その敬意度は低いとされます。また、動物やモノ、はたまた「今日はお日さん晴れたはるわ~」など天気にまで使われる場合もあり、ここまでくるともはや敬語とはいえなくなります。
では、その違いはどこから来るのか。大阪は商人の街です。買うのか買わないのか、白黒つけなければならないため、言葉もわかりやすいものが好まれる空気があり、必然的に「~はる」の使い方も尊敬の意味1本となります。
いっぽうの京都は、公家衆と庶民、その庶民も室町商家、西陣の職人、祗園花街などある意味、人種のルツボの歴史があり、「~はる」の使い方も複雑な人間関係のなかで多様性を持つようになったのではないでしょうか。
言葉は人格をもつ
つぎに、それぞれの言葉が持つイメージ、ひいては大阪弁と京都弁がもつキャラクターで考えてみましょう。まずは大阪弁。早口でまくしたてるイメージがありますよね。吉本新喜劇でいえば未知やすえさんの鉄板ギャグで、ヤクザなどを罵倒するセリフ「お前の頭スコーンと割ってストローで脳みそちゅーちゅー吸うたろか!!!」を2.38秒で一気に喋りきる感じですね。もちろん「怖かった~♡」のオチでズッコケるのがお約束です。
次に、さっきのギャグにも通じることですが、大阪弁には少々怖~いイメージもありますよね。おヤクザさんのセリフは大阪弁がよく似合うのは皆さんごナットクかと。このように吉本新喜劇をはじめ、阪神の監督と巨人をボロカスに罵倒しまくるタイガースファンや、マンガ「じゃりん子チエ」が大阪弁の世界観を表わしています。
いっぽうの京都弁。スローテンポでゆったりと柔らかい印象、やっぱり舞妓はんのイメージですよね。代表キャラとしては今や日本を代表する梨園の妻・三田寛子さんでしょうか。独特のふんわり感が放つそのオーラは京女そのもの。ご主人の不倫騒動のときも決してそのスタンスを崩さず、ワイドショーの囲みにも淡々と応じていました。もし、未知やすえのダンナ・内場勝則さんが同じことをしでかしたら、彼女の鉄板ギャグがリアルトークになってしまうのは必定です。
京都に京都弁はない?
ところで、ここまで京都弁京都弁とくり返し述べてきましたが、京都人にとって「京都弁」は存在しないとされています。京都は千年の都であり、そこで使われる言葉はこれすなわち標準語。だから「京都弁」などというとローカル色がにじみ出てくるので決して認めません。そこで生みだされたのが「京ことば」という呼び名です。これも結局は方言を意味しているのですが、何といいましょうか「ひとつの文化」みたいな響きを感じますよね。そのへんが京都人らしいっちゃあらしいコダワリなのです。
さて、冒頭のモテ女の話に戻します。どんなにキッツイ性格の女性でも京都弁を使いこなすことで女っぷりを倍増させ東男を虜にする、京都弁には魔性の力があります。
「人は見た目が9割」というベストセラーがありました。
その人が発する言葉も「見た目」のうち。
外見と内面がそろっている真性京女さんと、その差異をキャラにするギャップ京女さん。
東男のみなさん、よ~く見極めてくださいね。
(編集部/吉川哲史)