たしかに京都市内にはパン屋さんが多いと思ってました。自宅周りを見てみても、自転車で5分以内で行けるパン屋さんは10店舗以上あります。こんなにあったらどこか潰れるのとちゃうかと思うけど、昔からやったはるところも結構残ってる。
ちなみにうちはずっとご飯です。あ、子どもが小さい頃だけパンやったかな。今は時間ができたので毎日お味噌汁とだし巻きでいただいてます。そんな私とこでも、どこかに行った帰り道、パン屋さんに寄って何個か買うて帰るのが普通になってます。食パンも切らしたことないし、パンのない生活はあり得ませんね。
なんでパンの話をするかというと、こちらの「Kyotolovekyoto」さんの記事、「なぜ京都は『パンの街』なのか?その奥深きナゾに迫る」を読んだから。面白かったですねぇ。なんやったら先にそっち読んでもろてもかまへんのですが、まぁこのままいきましょ。私はその記事中にあった、某テレビ局の番組でのランキングを見てビックリしたんですわ。パンの購買量日本一は京都やって!続けて読んでさらにビックリ!「京都人の9割が朝にパン食」やて?!ええっ、ほんまにほんま??うちは残りの1割?
こちらの記事ではそんな京都人のパン好きについて考察したはったのですが、最初の5つの説はようある考え方で、筆者がいくつか却下しやはった理由も納得できました。すみません、先そっち読まはりますか?気ぃ持たせてすみませんねぇ。できたらこのあとで読んでください。で、最後の6つ目の説「和菓子とパン職人が関係ある」説も理解はできたけど、私はまだ他にもあるのとちゃうかなと思たんです。
これは昔の京都人の食生活を覗いてみたらわかるかもしれんと思い、
考える基準を京都の「歴史」から考えてみることにしました。
で、ここで唐突に京都人度チェックです。
京都人度チェック③
今は朝食にパンを食べる京都人が多いらしいですが、パンの販売が今ほど多くなかったころ、京都人は何を食べていたでしょう?
答えは――サラサラ~って食べるもの…お茶漬けです!
なぁんや!ていう答えかもしれません。京都は「ぶぶ漬けでもどうどすえ」ていう文化やって言われますしね。まぁ私は「ぶぶ漬け」とか言うたことありませんが。あれ、どこで言うたはるんですかね。聞いたことないです。しかも大事なお客さんにお茶漬けなんか出さへんし!
失礼、ちょっと怒りでちゃう方向に行ってしまいました。私あの「ぶぶ漬け伝説」嫌いですのん。まぁそれはまた別の機会に書くことにして、パン食ですね。パン食好きな京都人は、ちょっと昔(50年くらい前まで)は朝食にお茶漬け食べてたんですよ。すべての人、ていうわけではありませんが、おそらく西陣を中心としたものづくりやったはるところは多かったと思われます。
そこで次の京都人度チェックです
京都人度チェック③-2
京都人がお茶漬けを食べていた理由はなんでしょうか?
2つ理由があると思います。
やっぱり1つ目は時間短縮のため。
これには京都人(特にものづくりやってる方)の仕事のしかたに理由があります。
京都では男性だけではなくて女性もよう働かはりました。西陣織でも織元さんから職人さんまで、朝も早よからトンカラリンと機を織ったはったんです。
朝、ちょっとでも早いこと仕事を始めようとしたら、朝ごはんの時間を短(みじこ)うせんとあかん。ここは今も一緒ですね。しかし昔の始業時間はもっと早かった。私が小さい頃(昭和、ウン十年前)ですら、午前7時には機の音が聞こえてました。そして夜7時ごろまでお仕事したはったところも多かったですね。職種によったら夜なべのところもありました。そんな労働環境やったから、男女ともにやらんと間に合わんかったし、女性も主婦というよりは一人の労働者やったわけです。
当然、朝もご飯作ってる時間なんかあらへん。おくどさんでご飯炊いてたころは、もうそれだけで一苦労です。もちろん朝からご飯を炊くお家もありましたが、私が聞いた限りですが、職人さんのなかには、御櫃(おひつ)に残ってる前の日の晩炊いたご飯にお茶をかけて食べる、ていうところも多かったようです。
そしてお茶漬けは洗いものの時間を節約できます。こびりつきが防げますしね。お昼にすぐに食べられるように、朝のうちに素早く洗(あろ)て置いとけます。
そして2つ目の理由は、「質素倹約」が普通やったから、ということです。
質素倹約は職人はもちろんですが、お金持ちの商家でもいきわたってました。
母がよう言うてました。
「大きなお商売したはるとこでもなぁ、暖簾くぐったら、目玉の映るようなおかい(粥)さん食べたはるのんえ。」
そうやって無駄なお金を使わんと貯めて、出さなあかんところでは思いっきり出す。主(あるじ)は特にそうやって模範を示さんと、お商売は続いていかへんのやと聞かされました。
さて、「質素」ということは、「安くですむ」ということでもあります。
お茶漬けのおかずは決まって「おつけもん(お漬物)」でした。これは塩辛いので量はあんまり要りません。昔は「栄養が~」とか「塩分が~」とかあんまり言わへんし、これで食べられるのやったら安いしそれで良かったんやと思います。
私も小さい頃はお茶漬けにおつけもんが普通の朝食でした。おつけもんのメインはたいがい「水菜の塩漬け」、「どぼ漬」か「おこうこ」。
水菜は今の水菜と違(ちご)て広い葉の「壬生菜」のほうでしたね。
「どぼ漬」は「ぬか漬」のこと。もう1つ、「おこうこ」てわかります?これはたくあんのことです。私もずっと「おこうこ」て言うてきましたが、たくあんとおんなじ意味やと知ったのは中学生ぐらいになってからでした。私はおこうこは辛い(塩辛い)のであんまり好きやなかったですね。どっちかいうと甘い紀の川漬のほうがよろしです。
京都のおつけもんはバリエーションもあって美味しいです。ほかにも千枚漬、しば漬、すぐき漬、ゆず大根、奈良漬、おなすの辛子漬、あちゃら漬、日の菜漬と、ほんまにたくさんの種類のおつけもんが毎日入れ替わり食卓に並びました。そういう意味では贅沢な朝食やったかもしれません。
「質素やけど贅沢」
京都の人はそんなところで密かに贅沢を味わったはったのかもしれません。
ここまで京都人の昔の朝食を見てきましたが、さぁここからはパン食との比較です。
パン食以前では、1.時間短縮、2.質素倹約のためにお茶漬けを選んできたと書いてきましたが、パン食でもこの2つの要件は満たせそうですね。
パン食は言うまでもなく時間短縮ができる。これは私の周りでパン食をしている人たちがすべて言うことで、しかも何かしながら片手で食べることもできる。手が汚れるので職人さんは仕事中は無理かもしれんけど、ちょっとの時間で食べられるならそれほど有難いことはない。
そして質素倹約。パンは、あの超豪華な食パンとかを除いたらそんなに高いものではありませんし、お手軽なことはあきらかです。
しかも、安いのに結構カロリーや栄養が摂れる。ここがお茶漬けとはちょっと違うところではないですかね。炭水化物だけでなく、糖分・脂肪分はお茶漬け食よりうんと高いです。
そして、京都人がよく食べる菓子パンでは、大好きな甘味がとれます。
そう、京都人は甘い菓子パンが好き。最初に紹介した「なぜ京都は『パンの街』なのか?その奥深きナゾに迫る」の記事の6番目の説が、まさに「和菓子作りの創作精神」を持った職人がいたからこその理由でしたが(詳しくは読んでくださいね)、京都人は和菓子のような甘いものが昔から好きやったんです。
昔は簡単に手に入れられなかったお砂糖。それを使ったお菓子を京都人はこよなく愛してきました。甘いものは贅沢品やったので、甘いものを食べると幸せになりました。そうそう、おかずもちょっと甘いめの味つけをしますね。
そういう意味でも「パン食はお茶漬けより贅沢かな」と京都人は思ったかもしれません。
パン屋さんていうのは、トングで取るタイプのお店ですよね。最初に出した写真もそういうところのパンです。が、地元のスーパーでは、お総菜パンより菓子パンに大きなスペースを取って販売されてるところが多いような気がします。こういうところが、菓子パン売り上げに大きく貢献してるのかもしれませんね。
パン食は
お茶漬けのように手軽で、節約ができる。
そしてパン食は
お茶漬け以上に栄養が摂れるうえに、甘くて美味しい!
そのような理由から、京都人は
お茶漬けからパン食にシフトしたのではないでしょうか。
私もパン、好きですよ。
小さい頃食べてたお茶漬け、
お茶ばっかり飲んでご飯が残るんです。
いつもそれで叱られてました。
「そんな食べ方してたらちっとも早いこと食べられへんやんか!」
そんな私も今は早食いで主人に怒られてますが、もう朝食のお茶漬けはやめましたね。
そやけど、毎食ご飯食べ終わる時、母に「お茶碗にお茶入れてご飯粒を落として、一粒も残さんと食べなさい」と言われたことだけはやってます。母の声が聞こえる、そんな動作が好きです。パンやったらそれはできひんのですよ。
もちろんパンも大好き。ちょっと外に出たらすぐに買える美味しい食べもの。
そやけど、お漬物の贅沢も知ってる。
紀の川漬でお茶漬け食べるたび、そんな京都人の心も残していきたいな…
と、私は今でも密かに思っているのです。
追伸:
身近な人にアンケート取ったのですが、そこではご飯派とパン派は同数でした。
参考にした調査結果に観光客の消費量が含まれているのかどうか、年代別に違うのかなど、そのあたりも今後は探っていきたいですね。