二条城は、徳川家康による築城(1603年)に始まり、家康と豊臣秀頼の「二条城会見」(1611年)、二条城の最盛を極める寛永行幸(1626年)や最後の将軍15代慶喜公による大政奉還の表明(1867年)など、260年にわたる江戸時代の最初と最後の舞台となりました。
さらに、明治17(1884)年には、皇室の別邸・二条離宮となり、大正4(1915)年には、大正天皇即位の饗宴が行われるなど、わが国における近世、近代の舞台となった空間で、建造物、庭園、障壁画のどれもが、家康、家光の時代から明治、大正、昭和とそれぞれの時代に作られた「ほんもの」です。

国宝・二の丸御殿

国宝・二の丸御殿

家康による築城、家光による大改修の姿を今に残す。1867年10月、ここで大政奉還が表明された

二条城の正門・東大手門(重要文化財)

二条城の正門・東大手門(重要文化財)

家康による築城時から数えて3代目になる。平成29年春に約5億円をかけた修理工事が完成。

このように二条城は、京都市という大都市の真ん中に位置しながら、わが国の歴史と文化を今に伝える貴重な文化財であり、これをしっかりと守り、必要な修理をしながら次代に継承することが一番の務めです。
同時に、実物の歴史資料を保管、展示する博物館施設であり、年間200万人もの来城者を迎える観光施設でもあります。最近は、ユニークべニュー(特別な場所)として、二条城の有する空間を活かした各種のMICE(ウェディング、パーティ、お茶会、ライトアップイベントなど)の会場としても活用しています。

二条城桜まつり~唐門でのプロジェクションマッピング

二条城桜まつり~唐門でのプロジェクションマッピング

MICE会場としての二条城

MICE会場としての二条城

企業によるレセプションは人気です。

こうした活用により、歴史や文化に関心の少ない方にも二条城にお越しいただき、使用料を積み立てて、二条城の修理の財源ともしています。ただし、二条城はテーマパークではありませんから、その本質的な価値を伝えることを見失ってはならないと常に意識しています。
「文化財の保存と活用」が今日的なテーマとなり、活用に批判的な意見も頂戴することもありますが、文化財に物理的な傷をつけないこと(あまりにも当たり前ですが)、歴史を重ねてきた文化財に精神的リスペクト(尊敬)を意識すること、この二つを物差しに「保存と活用のバランス」に挑戦しています。
ここでは、二条城について、パンフレットやガイドブックに出ていない内容を数字を使って紹介します。

2017年度の入城者数 [243万人]

平成29(2017)年度の入城者数。昭和45(1970)年度(なんと!前の大阪万博が開催された年)の211万人という過去最高を大きく超えて更新しました。この年は、徳川15代将軍慶喜公が二条城二の丸御殿で大政奉還を表明してから150年という記念すべき年でした。我が国の近代化の幕開けであり、日本人なら誰もが知っている歴史的出来事。京都市長から会津若松市、萩市、高知市、熊本市、鹿児島市をはじめ幕末に関係する自治体の長に呼びかけて、二条城で「幕末サミット」を開催、「歴史に学び、地域でつながり、未来に活かす」という二条城宣言を採択しました。

平成29(2017)年10月13日、大政奉還150年を記念して幕末サミットを開催。大政奉還が表明された大広間にて記念写真。中央に慶喜公、前列左端が筆者

二の丸御殿大広間

二の丸御殿大広間

一段高くなった一の間には将軍慶喜公。大政奉還表明をイメージした展示

コロナ明け初日の入城者数。 [98人]

令和2年1月30日、京都市内で初めての感染者が確認され、全国、全世界に広まった新型コロナウィルスの影響で、なんとか持ちこたえてきた二条城も4月7日から観覧休止に。5月14日、全国39県で緊急事態宣言が解除されたことなどから、心身の健康的な生活を維持するため、外出自粛、三密回避の中で、広域的な移動を促さないとの観点で京都市民・府民に限定して5月18日、6週間ぶりに観覧を再開しました。その初日の入城者数。平常時は、1日平均5千人以上で賑わう二条城がひっそりとした様子でした。

新型コロナウィルスの影響で休城中。普段は見ることのない無人の二条城

新型コロナウィルスの影響で休城中。普段は見ることのない無人の二条城

[35人]二条城の職員数。

二条城は、昭和14年に宮内省から京都市に下賜され、現在は京都市が所有・管理・運営する施設です。そこで働く市職員は、事務、建築、土木、造園、電気、学芸員、文化財保護技師と幅広い分野の職員が35人。この他に、入城券の販売やQRコードによるチェック、城内案内、清掃、警備、ガイドツアー、土産販売や喫茶など、業者のスタッフも50人ほど。こうした体制で年間200万人のお客様をお迎えしています。


[1,046]二条城が有する文化財の数

二の丸御殿(国宝6棟)、東大手門や唐門等(重要文化財22棟)、二の丸御殿障壁画(重要文化財1,016面)、二の丸庭園(特別名勝)、二条城全域(史跡)。史跡や特別名勝も1つとカウントしていますが、数の多さと種類の多さから文化財の宝庫と言えます。それらは、家康、家光の時代に作られたオリジナルで、400年という時間の流れをひしひしと感じます。

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この記事を書いたKLKライター

元離宮二条城事務所長
北村 信幸

 
京都市文化芸術政策監・元離宮二条城事務所長
京都市において観光、文化財、文化芸術政策を歴任。
2016年4月から二条城事務所長兼務。
二条城を舞台に「文化財の保存と活用のバランス」に挑戦中。
2017年秋、天皇皇后両陛下(当時は、皇太子殿下、妃殿下)に二条城をご案内したことが思い出と語る。
今は、市役所と二条城を往復する日が続く。 

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北村 信幸

 
京都市文化芸術政策監・元離宮二条城事務所長
京都市において観光、文化財、文化芸術政策を歴任。
2016年4月から二条城事務所長兼務。
二条城を舞台に「文化財の保存と活用のバランス」に挑戦中。
2017年秋、天皇皇后両陛下(当時は、皇太子殿下、妃殿下)に二条城をご案内したことが思い出と語る。
今は、市役所と二条城を往復する日が続く。 

|元離宮二条城事務所長|二条城/裏側/文化財/お城

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