京都市内にはぎょうさんの神社があって、どこへ行っても鳥居を見つけます。遠くから見えるような大きな神社もたくさんある。自転車で走ってるとき、目の端に赤いもんがチラッと見えて振り返ったらかいらしい(可愛らしい)鳥居が見えたりする。
もう神社だらけですわ。

その中でも、京都人になじみが深い「氏神さん」と呼ばれる神社があります。知ったはりますか?

そこで京都人度チェックですが、

京都人度チェック④

「氏神さん」て何ですか?

あの、このあたり基準がよう分からんのですが、「氏神さん」ていう言葉を初めて聞いた、ていう方やはるんでしょうか?京都の人にはごくごく自然な言葉ですが、実は他の地方にも間違いなくあるはずなんですよ。なので、こちらのサイトに来やはる方はご存じの方が多いかもしれんなぁと思いながら書くことにします。

で、まぁ「確認のため」になりますが、早速答えです。
氏神さんというのは、「ある特定の地域の平和や無事を守る神様」のことを言います。もともとは1つの氏族がお祀りをした神のことを言いましたが、次第に地域ごとの守り神となっていかはりました。この、氏神さんが守ったはる地域ていうのは、時代により多少の変動はありますが、京都に関しては大きくは動いてないですね。

そしてもう一つチェック。

京都人度チェック④-2

あなたの氏神さんはどこの神社ですか?

こっちのほうが大事かも。京都人にとって、マイ氏神さんを知ってるていうことが大事やから。

ちなみに、うちの氏神さんは北区の「今宮神社」さんです。

そして、今宮神社さんの「平和や無事を守ってくれたはる地域」というのは、多少の凸凹はありますが、

北は 北山通(西は鷹峯も含む)
南は 二条通
西は 七本松通
東は 堀川通

大体この範囲内になります。これが氏子区域ですね。
今宮さんの氏子区域は、神社の周りだけでなく上京区の西陣も含んでるので相当広いです。そしてこの中に住んでたら、「私はいやや~」言うても今宮さんの「氏子」になります。

なので、引っ越したときに違う神様の氏子区域に住むことになったら、自動的に氏神さんが変わります。

もう1つ似た言葉で「産土(うぶすな)神」ていう言い方がありますが、自分が生まれた氏子区域の神様のことを言います。そやしこれは一生変わりません。昔は人が移動することはあんまりなかったので、「氏神」さんイコール「産土神」さんという式が成り立ってたということですね。

この氏神さんが京都の中で、どの地域を氏子区域にしているか簡単に表してみると

こんな感じですかね。京都市内、かなりしっかり網羅されています。
白いところは何にもないのと違(ちご)て、小さい神社さんがたくさんやはったり、歴史的にこのような氏子制度でないところがある、ということです。

先に書きましたが、氏子制度は京都以外でもたくさんあります。そやけどひとつ、京都には大きな特徴があるんですよ。それは、氏子の組織が学区で成り立っていて、総代さんも学区別に決められていること。

「学区」、わかったはると思いますが、念のために言いますと、「同じ小学校に通っている区域」のことですね。京都では地域活動の基本単位です。

これだけ学区で氏子区域がはっきりと区分けされてるところも珍しいみたいですね。また、中には2つの神社の氏子区域の境界がある学区もありますが、そこはちゃんとうまいこと住み分けしたはるところが多いです。とにかく、京都の地域力というのは歴史があるので、地域活動が宗教と関係があるのは、当たり前言うたら当たり前かもしれませんね。

小さい氏神さん?

大体氏神さんのお祭ていうのは、1年に1回だけですが、人によっては何回もお祭に参加したはる方がやはります。

「いやあの人、またお祭のハッピ着たはるやんか。」

「そんなにそんなに、お祭が好きなん?」

えらい言われようですな。
そういう私も小さい頃は「なんでやろ」、て思ってました。

「おみこっさん担ぐの好きな人やはるしなぁ」

まぁ中にはそういう人もいますが、礼装姿の役員さんは地元の人やし、あっちこっち行ったりしやはらへんと思います。

「そしたらなんでおんなじ人が違う氏神さんのお祭に出たはることがあるのん?」

大人になって自分が関わるようになって、そのあたりがだんだんわかってきました。

最初に小さい神社さんもあると書きましたが、図に書いた氏神さん以外にも、小さい氏神さんがたくさんやはるんですわ。

たとえば晴明神社さん。こちらは超有名な神社さんですが規模自体は小さいです。こちらも氏子区域を持ったはるのですが、図を見たらあれっ?って思う人もいるはず。

今宮神社さんの氏子区域内に晴明神社さんの氏子区域がある?!

あ、そしたら、ここは今宮さんのお祭は無しで、晴明さんのお祭だけやらはるの?
いや、そうやないです。
今宮さんのお祭は5月。晴明さんのお祭は9月。どっちもやらはるんですよ。

正直、大変でしょうね~
そう思います。ようやったはるなぁと。総代さん、役員さんは両方掛け持ちしたはる人多いです。それもお祭の日1日つぶれるだけと違いますやん。役員会も複数回あるし、練習もせんならん。神社によってやり方も違う。もちろんお金もかかる。それを年2回、毎年毎年毎年やらはるんです。いや~大変ですよ!やりたないとか思わはらへんのやろか。

それがね、すごいですよ。皆さん信仰心が篤いです。

「毎年こうやってお祭をやらせていただけるだけでありがたい。」
「神さんがよう見てくれたはる。」
「いや~ご利益もろてますわ!」

お祭には鉾やおみこっさん(御神輿)が出ますが、歩く人はほぼ地域の人です(もちろんバイトの方もやはりますけど)。そして神さんを乗せたおみこっさんが通るのを見て、氏子さんは「今年も神さんはみんなを守ってくれたはる」と手を合わせやはるのです。

中には
「ちょっとめんどくさいけどな。」

とか言う人いますけど、まぁよろしやんか。
なんやかんや言いながら毎年ちゃんとやってくれたはるんですよ。ほんま有難い話ですわ。

ほんでもう一つ言うとかなあかんこと。
実は今宮さんの氏子区域には、晴明さんだけやのうて玄武神社さん、水火天満宮さんも重なってます。

ここには表示してませんが、他の大きな神社さんの氏子区域にも被っているところは結構あるのです。神社さんの格の問題とか、歴史的経緯などいろんな要素が絡まって、今のような形になったんでしょうね。


氏神さんがいっぱい?!

しかししかし、もっとビックリすることが!
実は京都市全体が氏子区域になってる神社があるのです。

それはあの、平安神宮。

平安神宮ていうたら明治28年、平安京建都1100年を記念して創建された神社。平安京を作らはった桓武天皇と最後の京都の天皇とならはった孝明天皇がお祀りされています。京都全部をお守りする神社として建てられたので、氏子区域が京都市全体にわたり、京都市民全員が氏子になりました。

平安神宮のお祭が時代祭ですが、氏子である京都市民が参加するお祭なので、全員が時代祭のための準備金を出すことになっています。準備金は個人で一人ずつ出すというのが本来のきまりごとなんでしょうが、大体は町内で集める町内会費から出し、それを学区でまとめます。

学区単位でグループを作り、そのグループ別に巡行参列時の役割が決められています。各グループから毎年決まった数の学区がその年の担当になるので、ある学区が参加するのは10~20年に1度、そのために学区で準備金を積み立てることになります。

というわけで、京都市民全員もう一つ氏神さんがプラスされるわけです。2つ氏神さんがある地域は3つになるわけですわ!

2つだけでも大変やのに、大丈夫?!

それがねぇ、京都市民はちゃんとやるんですよ。私、これはほんま誇れますね。これこそ京都人の「意地」なんやなぁ、って!

みなさんものすご信仰心があるだけやのうて、地域の結束力がすごいんです。まとまってへんかったらこんな大きなお祭できません。

いや、逆に言うたら、お祭があるし地域がまとまってるのかもしれません。地域力でできあがっている京都には、その力を強くするレイヤーがいっぱいあって、氏子制度もその重要な1つになってるのやないかと考えるのです。
京都に住みたいて思う方、このあたり理解してもらえますやろか。京都に引っ越して来やはって、

「お寺やら神社やら宗教系でお金がよく要るわねぇ!」
「うちはここ信仰するつもりはないですわ。」

て思わはる方もやはるかもしれません。

そやけど、これは宗教ていうより、まちづくりの一つやと思てもらえませんやろか。氏子のお祭という一つの大きなイベントで力を合わせる。PTAや地域のイベントとおんなじです。

小さいお子さんが巡行で参加しやはったら、みんなもう運動会で我が子が出る時みたいに動画撮りまくったはりますわ。京都やしたくさんの観光客の方にも見てもらえていっぱい声がかかります。小さいお子さんはお母さんと一緒に歩くことになりますが、お母さんは西陣のきれいな着物お召しになって、ほんま美人さんの行列ですよ。縁日で露店が出たりもしますし、全年代にわたって楽しめます!

難しいことは役員さんがやってくれやはるし、一からイベント作るより楽ですよ。京都以外の方も「京都はややこしいなぁ」と思わんと、そんな風に楽しんでると思ってほしい。みなさん是非是非そのあたり、わかって欲しおすねん。

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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
お申込みは「鳴橋庵」HPまで。

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|鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長|お盆/織田稲荷/京都人度チェック/パン/氏子/十三参り

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