図2.各住棟の全体平面図(全て2階)

図2.各住棟の全体平面図(全て2階)

住戸について見ると(図3)、同時期に建設された出水団地は3棟ともほぼ同じ間取りとなっている。上長者町団地はアクセス形式が異なるものの、平面構成は出水団地に近い構成となっており、住戸面積も約30㎡と出水団地と同程度の広さである。一方、住戸面積が約40㎡と少し広めに計画されているのが下立売団地と椹木町団地である。下立売団地は中央に三畳間をもった3K、椹木町団地はダイニング(食事室)が設けられた2DKの間取りとなっている。椹木町団地のDKプランは、1951年に提案された団地の標準設計51C型の流れを汲んだものと考えられる。また、下立売団地や椹木町団地でも造り付けの食器棚が設けられており、団地の開発が進むにつれて徐々に立派になっていくのも大変興味深い(写真8,9)。

図3.各住棟の住戸平面図

図3.各住棟の住戸平面図

写真8.下立売団地の造り付け家具

写真8.下立売団地の造り付け家具

写真9.椹木町団地の造り付け家具

写真9.椹木町団地の造り付け家具

 このような堀川団地の違いについて、今から10年前ほど前(2010年頃)に上長者町団地の設計担当者であった三谷昭男氏から話を伺うことができた。上長者町団地は堀川団地の中では後期に作られた団地であったが、前の団地を参考にしながら設計が進められたこと、2ヶ月という極めて短い設計期間で作業が行われたこと、三谷氏の思いとして前に作られた住棟とは違うことをしないといけないという思いもあったこと等が語られた。このような堀川団地の作り手の気概や意気込みが個性的な堀川団地の建設につながったのではないかと考えられる。


まとめ

以上のように、堀川団地は鉄筋コンクリート造の集合住宅でありながら、「立体型京町家」とも言うべき特徴を持っており、平面形状から細部に至るまで魅力が詰まった団地になっている。
堀川商店街の店舗に行かれたときには、団地のデザインにも目を向けていただけると面白いかもしれない。また、堀川通りの東側を南北に歩いて対面の堀川団地を眺めると、6棟の外観の違いがよくお分かりいただけると思う。お近くの方は散歩がてら堀川団地を見に行っていただけると幸いである。

参考文献
•土井脩史,髙田光雄ほか:各住棟のキャパシティからみた堀川団地再生の方向性の検討-市街地型の公的住宅団地の再生に関する研究 その2-,日本建築学会学術講演梗概集(北陸)E-2分冊 pp.63-64,2010.9
•高田光雄,大島祥子,土井脩史,生川慶一郎:堀川団地の記憶と未来,2012.4

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この記事を書いたKLKライター

住宅計画研究
土井 脩史

 
住宅計画研究者。博士(工学・京都大学)、一級建築士。
京都橘大学現代ビジネス学部都市環境デザイン学科・専任講師。
京都・大阪を主な研究対象として、これからのストック活用時代における住宅計画のあり方について研究している。

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