山鉾連合会理事長が語る「祇園祭は疫病に負けたのか」

今日22日は私の72歳の誕生日なのです。例年なら後祭の宵山で、明日から4連休前日といろいろな行事があり、その忙しさに紛れて忘れてしまっているのに、今年は何か違う誕生日を過ごしています。

4月20日の八坂神社で今年の山鉾巡行・宵山行事等の中止を記者発表しました。3月の時点では今年の祇園祭も昨年同様にとの心意気で準備しておりましたがコロナウィルスの感染拡大で、すっかり状況が変わってしまいました。
それでも6月になれば状況も好転し山鉾建ては出来るのではと期待していたのですが、その6月にはとうとう山鉾建てまで自粛していただくように要請しました。

34の保存会全て了解をしていただき、是には連合会として感謝しています。
理事長就任1年目の今年の祇園祭がこのようなことになろうとは思いもしませんでした。
でも各保存会には町内神事は三密を防ぎながら工夫して実行してくださいとお願いしました。

長刀鉾では7月1日が八坂神社へのお千度詣 今年、長刀鉾稚児奉仕者は決めなかったで、理事長・役員で3名参拝されました。
その他いくつかの保存会も吉符入りの儀をされたと聞いています。

2日は例年ならば鬮取り式が京都市議会議場で行われ、その後八坂神社へ各保存会代表者と社参の儀を行うのですが、本年は社参の儀のみ行い 疫病退散を祈願いたしました。
5日は毎年長刀鉾町吉符入りの儀が行われ大勢の人々に稚児舞の披露をするのですが今年は、その日に吉符入りと清祓を一緒にして、八坂神社の神官に来ていただき清めのお祓いを受けました。
このようにして各保存会は工夫して神事を行っているのです。

祇園祭山鉾連合会の中心行事はやはり17日の前祭巡行と24日の後祭巡行です。
八坂神社の神輿渡御は中止ですが御神霊は御旅所にお迎えするとのこと、そこで神社と相談の上、山鉾連合会もなにか山鉾巡行に代わるものはと考えて、各保存会に山鉾の代わりの依り代として山鉾名の札を付けた榊の枝をお渡しすることとしました。

その榊の枝を持って17日の朝9時から前祭の23基の山鉾町代表者に四条烏丸から御旅所迄、昨年の鬮順に従って歩いていただき、御旅所にて東を向いて八坂神社に遥拝していただきました。

このことは戦後の混乱期に、山鉾が四条寺町まで往復したとの記録に倣い行いました。
当日は小雨の降る中、裃に威儀を正した約30人が整然と歩きました。
依り代の榊の枝を保存会に持ち帰り処分することで神様を送ったとして前祭の終了としました。
無事に前祭が終わり、ほっとしています。

昨夕今年だけの行事との御神霊渡御祭の行列が当方の前をお通りになり、門口で拝礼させていただきました。このように今年は異例ずくめの祇園祭でした。私も例年以上に忙しく 決め事が多く楽しみもなく、気の休まることのないお祭りでした。後祭も無事に終われるようにと思っています。 それよりも来年のお祭りが例年通り行えるようにと祈っています。

※2020年7月22日現在のものです。

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この記事を書いたライター

 
1948年生まれ。
小学2年で長刀鉾の囃子方に。
長刀鉾囃子方副代表、祇園祭山鉾連合会理事、副理事長を経て2019年から現職。
悉皆(しっかい)屋「万足屋きむら」3代目

|公益財団法人祇園祭山鉾連合会 理事長|祇園祭/山鉾/前祭