4 巨椋池に線路を通す

宇治川を渡って土手を下ると、かつては宇治川の遊水地でもあった巨椋池が広がっており、その中に電車を通しました。
ここでも「水とのたたかい」でした。
巨椋池は深い池ではありませんが、盛り土をして電車を通した痕跡が向島駅から南に進み京滋バイパス付近までの間に見ることができます。
線路の両側に高さ約2mの石垣が積まれていますが、沼地に石垣を積んでも強固なものにはなりません。
実は松の生木を地中深くに打ち込んでその上に盛土をし、路盤を支えているのです。
今も線路の下は松の丸太が縦に並んでいるはずです。
また、写真にも写っているように石垣の間に背の低いトンネル状のものが残っています。
これは線路を挟んで東側と西側の池を田船が行き来できるようにしていた痕跡です。
当時の水面がどのあたりだったのかお分かりいただけるでしょう。
奈良電開通時はまさに池の真ん中を電車が通り、車窓からは蓮の花が見られたのです。

巨椋池の干拓地を走る 向島駅南方

巨椋池の干拓地を走る 向島駅南方

近鉄京都線を利用される方も多いと思いますが、今とちがって開業当時は沿線にはほとんど人家はなく、乗客も少なかったので「奈良電」ではなく「ガラ電」と揶揄されたそうで、経営的に大変厳しかったのですが、現在はみごとに近鉄の1路線に成長しました。
京都駅を西向きに発車すること、竹田~伏見~丹波橋~桃山御陵前~向島の区間にはさまざまな社会的・技術的背景があり、今もなお線路を支えていることをお分かりいただけたでしょうか。

(2020.8)

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この記事を書いたKLKライター

鉄道友の会京都支部副支部長・事務局長
島本 由紀

 
昭和30年京都市生まれ
京都市教育委員会学校指導課参与
鉄道友の会京都支部副支部長・事務局長

子どもの頃から鉄道が大好き。
もともと中学校社会科教員ということもあり鉄道を切り口にした地域史や鉄道文化を広めたいと思い、市民向けの講演などにも取り組んでいる。
 

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子どもの頃から鉄道が大好き。
もともと中学校社会科教員ということもあり鉄道を切り口にした地域史や鉄道文化を広めたいと思い、市民向けの講演などにも取り組んでいる。
 
|鉄道友の会京都支部副支部長・事務局長|京都市電/嵐電/京阪電車/鉄道/祇園祭

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