前回に続き、昨年の京都マラソンをご案内します。

2月16日に行われた京都マラソン2020は、コロナや天候の心配がありましたが、1万5千人のランナーが都大路を無事走りました。雨が降りましたので京都マラソンのコースを電車で回り、マラソン沿線とりわけ世界遺産が並ぶ『きぬかけの路』の風景を取材しました。コース沿道には市民の方々に混じってお坊さんもランナーを励ましており、その後ろからは門を守る阿吽の二王さんも必死の形相で応援していましたのでご覧ください。

ご案内

京都マラソンコースを“電車でマラソン”してみた。歩くまち京都『バス・鉄道の達人』を使い、スタート地点の西京極からフィニッシュ地点の岡崎まで、嵐山(第1関門)・仁和寺(第3給水所)・北山(中間点)・京都市役所を経由し、それぞれの滞在時間を15分として電車と歩きのみのマラソンである。

京都マラソン2020コース

京都マラソン2020コース

9時15分にたけびしスタジアム京都を出発し、西京極駅から桂経由で阪急嵐山駅に行き、嵐電嵐山駅から御室仁和寺駅に向かった。仁和寺二王門前でお坊さんと一緒に応援した後、帷子ノ辻まで戻って天神川で地下鉄に乗り換え、かぎの手状に北東に行き北山駅に着いた。この時すでに12時を回っていた。閉鎖時刻には間に合ったが、だいぶ遅いタイムである。叡電と京阪を乗り継ぎ京都市役所に午後1時に着き、フィニッシュの岡崎には午後1時30分に到着した。

仁和寺

仁和寺

お坊さんと一緒に応援した仁和寺は、1994(平成6)年に世界文化遺産に登録されている。888(仁和4)年に宇多天皇により完成した同寺は、応仁・文明の乱(1467~77)により全伽藍を焼失したが、寛永18~正保元年(1641~44)に再興され、このとき当時御所にあった紫宸殿と常御殿が移築されて、それぞれ金堂と仁和寺御殿(明治20年焼失)に転用されており、また清涼殿の古材を用いて御影堂が造営されたほか、二王門・中門・五重塔などが建てられ、境内の整備が次々と進められたという。同寺のHPは、「京都では珍しい道路に面した『二王門』(京都3大門のひとつ)より足を一歩踏み入れると、広大な境内には国宝の『金堂』をはじめ、重要文化財の『五重塔』『御影堂』『観音堂』や、御殿内の『遼廓亭』『飛濤亭』などがあります。皇族や貴族とのゆかりが深かったため『仁和寺御殿』といわれる御所風建築物が特長です。」と案内している。

御室仁和寺駅(後方は双ヶ岡)

御室仁和寺駅(後方は双ヶ岡)

仁和寺への移動に利用した嵐電北野線は、1925(大正14)年に北野駅-高雄口駅(現・宇多野駅)間が開業し、翌年、帷子ノ辻駅まで延伸され嵐山本線とつながった。同線開通前後の大正11年と昭和10年の地図を比べると、鉄道開業後に仁和寺の東方が急速に市街化していった様子がうかがえる。同線は1958(昭和33)年に今出川通の拡幅に伴って北野駅-白梅町駅間を廃止して出発地を北野白梅町駅(白梅町駅を改名)に変え、現在の路線になっている。

仁和寺周辺の変化(上:昭和10年/下:大正11年)

仁和寺周辺の変化(上:昭和10年/下:大正11年)

仁和寺二王門が面する市道衣笠宇多野線は1963(昭和38)年に開通した、金閣寺前から福王子を結ぶ山際の道路である。大正期に構想された遊覧都市の一環として計画された観光用道路の一つであったが、戦後の高度経済成長期にようやく開通することとなった。沿道には金閣寺・龍安寺・仁和寺の3つの世界遺産があり「観光道路」と呼ばれていたが、1991(平成3)年に愛称募集した結果、「宇多天皇が真夏に雪見をするために衣笠山(別名きぬかけ山)に絹を掛けたと伝えられる故事にちなみ『きぬかけの路』と命名」(「きぬかけの路」観光ポータルサイト)されたという。
仁和寺に長居しすぎたのでフィニッシュ地点の岡崎へ直接向かった。ゴールする選手は正面に大鳥居、左手にリニューアルされたばかりの京都市京セラ美術館、右手に武田五一の府立図書館、そして後ろには平安神宮と、京都の貴重な文化財に囲まれてのフィニッシュであった。

フィニッシュ岡崎

フィニッシュ岡崎

この京都マラソンの風景が京都の文化的景観になるのはいつのことだろう。

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この記事を書いたKLKライター

京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
松田 彰

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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松田 彰

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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