京都人は初午に何食べる? ~意外とシャレ好き京都人!!~【京都人度チェック】

「初午」と神様との関係

節分は季節の大きな節目ですが、もう一つ、節目の行事がありますね。こちらは節分ほどメジャーやないですけど、「初午」と言われるものです。

「初午」とは、新暦2月の初めての午の日のことを言います。そしてこの日には、稲荷社の「初午祭」が行われ、多くの方が「初午詣」をされます。

「初午祭」ってなにかというと、全国30000ある稲荷社の総本社の伏見稲荷大社、京都人がいう「お稲荷さん」のお誕生日なのです。お稲荷さんの歴史は古く、1300年以上前の和銅4年(711年)、旧暦2月の初午の日に、稲荷山の3つの峰に鎮座されたということです。なんと平安京ができたより古い、由緒ある神社なんですよ!

そしてこの神様をお祀りしたのは、渡来系の家の秦伊侶具(はたのいろぐ)で、もともとは古代の豪族、秦氏の氏神さんやったそうです。秦氏っていうのは、伏見ではお稲荷さんを創り、太秦では松尾さん(松尾大社)を創ったはる、強大な勢力を持った豪族やったんですね。


さて、このお稲荷さんの「稲荷」は、「いなり=稲生り・稲成り」が語源で、稲の実りを守るという五穀豊穣の神さんやったんですが、やがて商売繁盛・家内安全などオールマイティーにお願い事聞いてくれる神さんになっていかはりました。昔は旧暦2月の初午にお祭があり、これから農耕が始まるという3月やったので、お願い事も五穀豊穣がちょうど合ってたんでしょうね。でも新暦では一番寒い時期、冬枯れの2月です。年が改まってこれからという時なので、「この一年お守りいただきますように」「お商売がうまくいきますように」とお願いするのにタイミングが良くなったのかもしれませんね。


 

京都人度チェック 初午に関係ある食べ物は?

さて、ここで京都人度チェックです。

・全国では初午の日、いなり寿司を食べるところが多いですが、京都はそれ以外にも必ず食べるものがあります。それは何でしょう?

京都のいなり寿司は三角ですよ!

もちろん京都でもいなり寿司も食べます。京都では、この「いなり寿司」も「おいなりさん」て呼ぶんですよ。伏見稲荷大社も「おいなりさん」、いなり寿司も「おいなりさん」。ややこしいですが、京都は何にでも「お」や「~さん」を付けるので、不思議と違和感ないんですよね。

ところで、おいなりさんの使いである狐の好物がおあげさんなので、おいなりさんをお供えしたり食べたりしますよね(やっぱりややこし?)。狐は、ホンマは生きた小動物を餌のメインとする雑食なのですが、昔々はネズミの油揚げを餌にして狐を捕っていたらしいのです。(注1)それが、仏教的な意味や手に入りやすさもありお豆腐を揚げたものになった、と説明されているものが多いですね。

そうそう、ちょっと調べてたら、関東の方では「しもつかれ」とかいうお料理を食べるそうですね。大根おろしと人参、鮭の頭におあげさんとか酒粕とか入れるらしい。かす汁みたいであったまりそう。初午団子とか、いろんなバリエーションがあって楽しいです!

で、京都では何を食べるか、ですが、これです!

畑菜の辛子和え!

畑菜の胡麻和えに辛子を入れるのがとっても美味しいんですが、これを食べるのがきまりになってます。それはなんでか、って?

それは「畑菜」という名前に関係しています。

「畑菜」    は
「はたけな」  と読みますが
「はたけ+な」 と分けて考えると
「秦家+菜」  とも読めて
「秦家菜」   おぉ!!

つまり
「秦家」の菜っ葉や!
ということで食べることになったらしいんです!
他の理由を探してみましたが
結局ここに行きつきます。

京都人てシャレが好きなん?

最初にも書きましたが、お稲荷さんは、秦家の氏神さんなので、この日に食べるのは秦家の菜っ葉がええやろって思わはったんでしょう。簡単な話引っ張ってすみません。
いや、美味しいんですよ、畑菜の辛子和え。


畑菜ってどんな菜?

畑菜というのは、京野菜の一つで、菜種菜の葉っぱを食べられるように改良したものなのやそうです。京都では江戸時代から作られていて、こんな風に表現されています。(注2)

「蕪菁に似て別なり。京都にてはたけ菜と云。近江の兵主菜、田舎にて京菜と云。
其味蕪菁にまされり。菜の上品とす。…」

近所のスーパーでは、POPで「なっぱの王様」と書いて販売されていましたが、昔から美味しいと評判やったのですね!

「なっぱの王様」らしいです。

とっても馴染みのある菜っ葉ですが、よそでは流通はあんまりしてへんようですね。あんまり身近にありすぎて、他所に無いというのは最近まで知りませんでした。

昔の初午は3月ですが、この時期葉物野菜はだんだん少なくなるころなので、この時期が旬の畑菜は貴重な野菜やったようです。そしてとっても栄養が豊富で、カロチン、ビタミンB6、ビタミンC、カルシウム、鉄を豊富に含んでいます。(注3)

葉の形は確かにアブラナの葉っぱに似てますね。小松菜やホウレンソウみたいに葉質がしっとりしてなくて、カサカサした感じです。茎も固いのですが、茹でると柔らかくなります。私は辛子和え以外には、お昆布とカツオ出汁でおあげさんと一緒によく炊きますが、ちょっと炊きすぎるぐらいにしてふわふわに柔らかくなったのが美味しいんですよね~

ちょっと難点なのは、早く傷みやすいこと。他の菜っ葉より早く色が悪くなるのでそこだけ注意です。写真の畑菜も買ったばかりですが、すでに葉の縁が黄色くなってきています。

でも茹でたらきれいな緑になりますよ~

胡麻擦って濃い口しょうゆと辛子を入れて

和えたらできあがり♪

簡単に作れるので、手に入る方は是非初午に作っていただきたいです。

胡麻和えの中でも、普段はあんまり辛子和えはしないので、「辛子和え」というとこの「畑菜の辛子和え」になります。なんで普通の胡麻和えだけでなく辛子を入れるのかはよくわかりませんでした。

京都の行事・習わしは食材やお料理・お菓子などと密接にかかわることがとても多いです。これからもそういった習わし事をご紹介していきますので、どうぞ期待しとおくれやっしゃ♪

注1:俳諧・新増犬筑波集(1643)下巻・淀川「ネズミのあぶらあげにて狐をつる也」
注2:「農業全書」(1696年)宮崎安貞著。「はたけ菜」として初出。
注3:京都生果合同株式会社HP
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この記事を書いたライター

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
お申込みは「鳴橋庵」HPまで。

|鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長|お盆/織田稲荷/京都人度チェック/パン/氏子/十三参り