これは「麻木(あさぎ)」といいます。全国的には「苧殻(おがら)」て言うものですね。
昔は京都のどこへ行っても「麻木」で通じましたが、最近は全国展開のスーパーには京都しか通じない言葉では置いてないので、京都でもこの言葉を知らない人が増えてきました。寂しいけれど、そのうち無くなる言葉なんやろなぁと思います。他の地方では迎え火も送り火もこれを焚かはるようですが、うちではお膳のお箸にしか使いません。

 

お供え物をする意味

さて、なんでこんなお供え物をするのでしょう?これ、大事ですね。ご先祖さんに食べていただくように、と思うのはたしかに一つの大きな理由です。そやけど仏さんは口から食べやはることはできません。母なんかは「匂いだけ上げたらええのん」と言うてました。しかしホンマに大事なのは「戻って来られたご先祖さんにご飯を差し上げよう」という気持ち。この「差し上げる」行為や気持ちがお布施(ほどこしをすること)になり、ええことをしたということで「功徳」というポイントがたまっていくんです。

そしてその「功徳」ポイントをご先祖さんに渡すと、これが「楽になるチケット」に交換できるんです。このチケットを使って今おられる(地獄かもしれん)世で、ご先祖さんにちょっとでも幸せに過ごしてもらうことができるのです。これが「お施餓鬼供養」ということなのですが、次の記事のお供えのところで説明させてもらいますね。

 

ご先祖さんの生きた証を自覚する

お盆に備えて、もう一つ大事なのはおぶったん(仏壇)の掃除です。これは掃除するだけやなくて、ご先祖さんとの対話を行う作業。仏さんの依代(よりしろ)である仏像は、うちは浄土宗なので本尊の阿弥陀さんがおられます。他にももう100年以上前に亡くなった方が大事にしてたお舎利や懐中仏さんがやはるので、お一人ずつきれいに拭いて行きます。この作業するたんびに、子どものころ読んだ「木仏長者」のお話を思い出すんですよ。お金持ちが持ってる全然拝みもせずホコリのかぶった金の仏さんと、貧乏やけど真面目に働いている人が見つけて拝み続けていた木片の仏さんが相撲取らはったら、木仏が念のこもった力を発揮して勝った、というお話です。うちの仏さんも仏像としての価値はそんなにないかもしれません。そやけどみんなが何百年も手を合わせてきやはった仏さんなので、きっとものすごい力を持ったはる。そう信じて毎年きれいにきれいに磨いています。

掃除が済んだら、普段ゆっくりと見ることができひん過去帳とお位牌をじっくりと見ます。今までに会うたことのないご先祖さんやけど、母から聞いてる祖父の祖母のおしかさん、その父親の里杏さんの名前もあります。みんなたしかにこの世に生きたはった方ばかりなんです。私はその人たちの生きた証を受け継いできたのやなと思いながら、お位牌に向かってお名前を呼んでいます。

次は実際のお供えからおしょらい送りまでのお話をしたいと思います。

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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
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