お月さまと大文字

さてこの送り火、実は昔は灯す時間や順番が違ったのは知ったはりますか?江戸時代、大文字の点灯が始まるのは日が暮れたばかりのまだ空が明るい時やったそうです。(注4)たしかに昔は懐中電灯なんか無いし、真っ暗な中でやったらこけますやんねぇ。鴨川の河原の状況に加えて、随分と今の送り火とは違う風景やったのでしょう。

旧暦の時代、16日というのは必ず満月(十五夜)の次の日なので、送り火が済んだあとに大きな十六夜のお月さんが出ていました。先ほどの「花洛名勝図会」にもありましたが、大文字山の後ろの方にお月さんが描かれていますよ。もう一度見ときましょか。

▲矢印がお月さま。

▲矢印がお月さま。

大文字とお月さま、これもええ風情ですねぇ。
令和元年(2019年)の送り火の日はちょうど旧暦の7月16日やったそうです。今は時間がうんと遅いので、消えてからではなくちょうど灯っているときに一緒に月が出てたのやとか。実は私も平成23年(2011年)に大文字と一緒のお月さんを見てるんですよ~!はい、先ほど出て来た大きな大文字を見に行った時のことです。あの年は大きな悲しみのあった年、ご先祖さんと一緒に多くのみたまを送るつもりで御所に行ったのでした。火がそろそろ弱まってきたところで、ふと大きな赤いお月さまがそばについたはるのに気が付き、ほんまに驚きました。たくさんの人が同じところで見たはったのですが、みな手を合わせ深い祈りを捧げていました。そして今年も、いろんな意味でしっかりと送らせてもらおと思ってます。

▲2011年の大文字(旧暦7月17日 月齢16.4)

▲2011年の大文字(旧暦7月17日 月齢16.4)

送り火も終わり、ようやくお盆もおしまい。ちょっとホッとするとともに、夏がそろそろ終わっていくのやなぁと実感するときです。でもまだもう一つ夏の大きなイベントが残っていますよ!今度は町内の、子どもたちのお盆、地蔵盆です!次回は地蔵盆の準備から実際の催しや、昔の地蔵盆の受難の時代から復活した私らの先人のお話もさせてもらいますね。

注:
(1)田中緑紅「緑紅叢書4 京の送り火 大文字」p.12
(2)Webサイト:そば・うどん業界
「-京都・五山送り火を見ながら蕎麦を頂く【大文字蕎麦】-」
(3)青木博彦「大文字古記録の研究」p.87 「筆満可勢」引用より
(4)同p.90
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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

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