お彼岸に「お寺トーク」できるかな!? ~京都人なら知ってるはずの常識3選~【京都人度チェック】

「暑さ寒さも彼岸まで」
よう言うたもんですね。お彼岸が近づいてきたら、いくらよう晴れた日でも半袖姿ではくしゃみが出てきます。否応なく季節が変わっていくのがこの時期です。そしてお彼岸というと、春でも秋でも行くところが「お墓参り」。

神道やキリスト教などの方はごめんなさいですが、大多数の日本人の宗旨はいまだに仏教で、この時期お墓参りに行く方が多いと思います。お寺や墓地に行く時期のトップ4は「お正月・春のお彼岸・お盆・秋のお彼岸」となり、きっちりお参りしている方は最低年に4回はお墓参りにいくことになります。

そう考えると、お彼岸というのは年に2回あり、年間でお参りに行く回数の半分を占める重要な行事となっています。そしてお彼岸は、法事が多かったりご先祖さんについて考えたりすることが多い時。今回の京都人度チェックは、このお彼岸に関係することで、京都人が大切にしていることをいくつかお尋ねすることにしましょう。


お寺も神社も山ほどある京都

さて、ご存じのように私の住んでいる京都には神社もお寺も多くて(注1)、年がら年中神社のお祭りがあり、お寺では法要があります。例年観光客でごった返す寺院は今年その様相は違うけれど、お彼岸はお墓参りがあるので地元民による人の出入りは多少減りながらも無くなりはしません。

京都に古くから住んでいる京都人はやはり京都の中に菩提寺を持っています。お寺は大小街中に数えきれないほど建ち、寺町通などはお寺の行列で、ほんまに並びがずーっとお寺お寺お寺です。そんなお寺1つ1つに檀家さんがやはるので、お彼岸になると大勢の人がそれぞれのお寺になだれ込んでいきます。うちの近くもお寺がたくさんありますが、みなさんお墓にお供えするお花を持ってゾロゾロと歩く風景が見られます。例年やったら民族大移動のようにあちこちで見かけたもんでした。

そうなるとどうしても始まるのが「お寺トーク」。お寺の多い京都に住んでると、お寺に関係あることを話す機会が多くなります。その結果、お寺関係の知識も自然と身に付く。つまり逆に言うと、京都ではお寺トークの知識がないと話しづらいシーンが度々出てくるかもしれません。ということで、まず最初のチェックはこのあたりのごくごく基本的なことをお尋ねしましょう。

 

京都人度チェック ①宗派と菩提寺は?

①あなたの家の菩提寺・宗派を知っていますか?

はい、ここではこの2つをさっと思い出せるか?というのがポイントです。そして同時に、あなたがお寺参りをしているかどうか、という確認となるのです。

ふだんお寺に行ってたら、まず菩提寺の名前は憶えてますよね?え、場所は知ってるけど名前は聞いたことないって?私の知り合いにもたしかそんな人2,3人いましたが、どうやってお寺まで行ってるのやろ…?

それから宗派の判断の仕方ですが、お坊さんが唱えたはるお経やお念仏などで大体のことがわかるんですよ。これも関心の無い方にとっては難しいことらしい。まず一つ目、「南無阿弥陀仏」やったら浄土宗か浄土真宗です。10回まとめて言うのが浄土宗、南無阿弥陀仏を長いこと節つけて唱えやはるのが浄土真宗。「なっむぅ~あ、あ、あみっだぁ~ぶっつっ♪」とか言わはってリズミカルですよ。私結構好きです。そして「南無妙法蓮華経」が日蓮宗。般若心経多めなのが禅宗ってとこですか。ほんでから、真言宗は「南無大師遍照金剛」、お大師さん(空海)のことですね。でもお大師さんは宗派を超えて人気があるので、境界線がちょっとぼやけてるかも。

うちの親戚もほぼ全部京都市内に菩提寺がありますが、うちと違う宗派の親戚もあります。子どものころからそんな親戚の法事に行って、宗派の違いで違う造りのお寺を見て驚いたり、いろんなお経やお念仏・お題目を聞いて面白がったりしながら知識を増やして行ったもんでした。

ものすごいざっくりやけど、これだけ知ってるだけでもだいぶ違う。あ、すみません…他の宗派は他の方に聞いてください。親戚に無かったもんで…いや全部知らんでもええのですよ(汗)そうそう、お寺トークについていくためにも、ちょこっとだけ勉強していきましょうね。たとえばこんな何気ない会話にも知識が必要です。

A「ちょっと、あそこのお寺の住職さん、こないだ亡くならはったんやて。」
B「いやぁ、そうか~!まぁええ年やったさかいになぁ。いくつやったんえ?」
A「92とか言うたはったわ。」
B「まぁそれやったら天寿全うしやはったいうてもええわな。あそこ何宗やった?」
A「あ~あそこは南無阿弥陀仏や。」

とかいうとこにサラッと出てきます。ここではBさんが「南無阿弥陀仏や」で、これは浄土宗か浄土真宗なんやな、てわからんとあきませんのん。もちろん言うた人(Aさん)もわかってます。

で、ついでに会話続けてみましょね。

B「もうお葬式済んでしもたけど、香典持って行っとかんでええのんか?」
A「え~かまへんのとちゃうか?このごろ香典辞退しやはるとこ多いやんか。」
B「そやけどお寺さんやさかいになぁ。それにほれ、いつやったかお地蔵さん(地蔵盆)のときお参りに来てくれやはったことあるやんか。」
A「あ~そやったかいな…え、そやったかいな?」

あ、このAさん、香典持って行かはりそうにないですね。

京都人度チェック② 京都の精進の水引

さて、香典の話が出てきたのでこのチェックをしてみましょう。これも京都人にとってはごく基本的な問題です。

②香典を渡す時、京都では何色の水引をかけた金封を使いますか?

これは関西圏でも地方によって違うことがあるのですが、興味がなかったら大阪や兵庫の人でもわからんかもしれません。関東の方は多分ご存じないでしょうねぇ。

はい、答えは写真の通り。黒白とちゃいますね。

これについては専門の方が詳しく説明したはるサイトも多いのでサラッといきますが、京都の「精進」の行事、つまり法事に使う金封の水引は、すべて黄色と白です。色の付いた方(濃い方)が向かって右になるので、黄色が右になります。こ、れ帯締も一緒ですね。

裏はこんなん。中袋はありません。お金は直に入れます。

お葬式から年忌法要、お供えまでほぼすべてこれで行けます。1種類でいけるので楽ですよ。上に書くのも全部「御仏前」でええし。大阪ではお葬式は黒白、それ以降の法事は黄白らしいですね。関東では全部黒白ですか。最近はコンビニや100均に行くと、黄白の水引の金封が黒白に押されているように見えます。さすがに上京古い家の多い上京区内の文房具屋さんにはまだ黄白も多く、使う者にしたら安心なのですが、これからはどうなっていくかわかりませんね。

これは、皇室が使わはる「紅白(注2)」の色が「黒白」と似ているので、間違えないように「黄白」を使うということが大きな理由の一つとなってるようですが(注3)、この紅白の水引を今は見ることがないのであまり説得力がないですよね。しかしやっぱり見た目が近いと恐れ多くて使いづらかったというのはわかる気がします。

ただしお地蔵さんのお供えやお寺さんへのお布施は、うちでは水引無しの真っ白の袋にしています。お地蔵さんには「お供」、お寺さんにお渡しするときは「上」と書いたら大体間違いがないと思ってます。一般的にはこのくらい覚えといたら大丈夫かな。詳しいことはいろいろあるので、そこは結納屋さんにお尋ねくださいね。

▲白のお供え袋

京都人度チェック③ お墓に付いてるアレの話

さてもうひとつ、お彼岸ということで聞いてみたいこと、「お墓参り」から思い出しました。
3番目のチェックにしましょう。

③あなたのお家の家紋を知っていますか?

お墓参りに行かはったらいっぺん見て欲しいんです。全部とは言いませんが、半分近くかな、お墓には家紋が付いています。今流行りの自由なお墓には無いと思うけど、ちょっと前では標準仕様やったのとちゃいますかね。これ、学生さんとかに「見たことない?」てよく聞いてみるんですが、「あ、そう言えばお墓の前にあったようななかったような…」と記憶がおぼろげな人がほとんどです。あんまり意識しやはらへんのですかねぇ。

でも京都の人が全員自分とこの家紋を知ってるわけやないですよ。そやけど、京都の人って自分のルーツを語るの好きなんです。こういうお墓参りする時期は特にウズウズしてる人が多いのとちゃうかなぁ…ここにも約1名おりますが。そういう時に、家紋は話をする相手との共通点を探す手段になるんですよ。

A「うち源氏ですねん。笹竜胆です。」
B「へぇ、うちは揚羽蝶やし平家ですわ。」
C「私とこ丸に四ツ目結です。」
D「いやっ!うちもそうですよ!角が立ってるほうですか?寝てるほう?」

角が立ったり寝たり、どうでもええような気がしますが、そのお家にとっては大事な家紋。それぞれに歴史があり誇りに思ったはるので、そこは実は大きな違いなんですよ。でもほんまのところそこに固執してるわけでもなくて、おしゃべりの中でそれぞれのお家の歴史を知って楽しんでる、と言うたほうがええかもしれません。これも「お寺トーク」の一つなんでしょうね。こんな会話、昔は結構あったし面白かった。今は知らん人のほうが多いし話が続きません。ほんま残念なことです。

おはぎを食べて「お寺トーク」が定番

お盆の時期にもお墓参りは行きますが、みんな行く日がずれるのかあんまり会わへん親戚も、お彼岸は大体お中日(春分の日・秋分の日)に行くことになるのでよく出会います。そんなときに始まるのが我が家のルーツのお話。またまた「お寺トーク」ですよ。

「何代前のお祖父さんはこんな人やった。」
「お宅のひいお祖父さんとうちのひいお祖母さんが兄妹で~」

とか、昔はようありました。長老の人らの話を聞いて、自分らのご先祖さんがどんな人やったかを学ぶパターンは、きっとお墓の前で何代も繰り返されてきたに違いありません。

お家への帰り道には、家の近くやちょっと有名なお饅屋さんで美味しいおはぎを買います。京都のお饅屋さんは街中にまだまだたくさんあって、わざわざ作らんでもすぐにゲットできるおはぎ。それをおぶったん(お仏壇)にお供えしてご先祖さんと一緒にいただく、そんなホッとするような幸せがありました。年長の家族とおはぎを食べながらお彼岸に学ぶ昔話。そこでは「お寺トーク」がさく裂してたかもしれませんね。

石投げたらあかんけど、投げたら必ず当たるくらいお寺の多い京都。「お寺トーク」が他所よりかなり多いのは間違いありません。こういった知識はどうしても必要なものやないかもしれんし、知らんでも困らへんし普通に生きていけるでしょう。でも、もし知ってたら、京都暮らしはきっとう~んと楽しくなるんです。今年は遠いところにも遊びに行きづらい。お彼岸の「お寺トーク」、地元にひきこもり京都人のお彼岸はこれで決まり?!

注:
(1)京都府の寺院:3068(平成30年度宗教統計調査)
全国で1番多い都道府県ではないですが、京都市は1608(平成19年度京都市統計書)で、京都府全体の半分以上の数があります。 
(2)「紅白」は紅の色が濃くて黒っぽい色をしているので、普通の「赤白」とは区別をして「紅」の文字を使っています。
(3)単純に黄白の水引しかなかった、という説もあります。また、水引には結び切りは蝶々結びはなく、淡路(あわび)結び1種類です。
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この記事を書いたライター

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
お申込みは「鳴橋庵」HPまで。

|鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長|お盆/織田稲荷/京都人度チェック/パン/氏子/十三参り