法勝寺八角九重塔跡推定地

法勝寺八角九重塔跡推定地

(※Google Earthに推定地を書き込む)

この調査で塔の基壇の下を掘り下げて作られる「掘り込み地業」の跡が、八角形の平面のうち5ヶ所のコーナー部で検出し、その地業の東西幅が約32メートル、総面積約850平方メートルと推測されることから、塔は巨大な建物であったことが明らかになった。そして園内で展示されている石材は、花崗岩製の細長い切石で一端の角が二つ合せると約135度になるように加工されていることから、八角九重塔の基壇に使用されていた石材である可能性があるという。
また塔の周囲からは平安時代から鎌倉時代の瓦が多数出土し、塔には瓦が葺かれていたことがわかったともいう。京都アスニーの京都市平安京創生館には、建都1200年記念で造られた法勝寺復元模型が展示されている。この模型の屋根は檜皮葺きと想定されているが、2010年の調査成果により屋根が瓦葺きであることがわかり、その重さにも耐えうる木構造での再検討も必要になったようだ。

京都市平安京創生館で展示されている法勝寺復元模型

京都市平安京創生館で展示されている法勝寺復元模型

(京都市歴史資料館所蔵)

この説明版の北側は“京都の森”だ。中央の棚田を囲むように水禽舎やクマ舎などが建ち、棚田を流れる小川には二つの橋が架かっている。一方の橋には絲桜橋と書かれ、他方は六条通(六条商店街魚棚通)の西洞院川に架けられた橋の親柱を移設したものだ。それでは絲桜橋とは何だろうか?実は動物園の園内に白川が流れているのである。場所は東エントランスを入った西側にあるエミュー舎の南東で園内に流れ込み、フクロウ舎の南で琵琶湖疏水と合流している。

“京都の森”の絲桜橋

“京都の森”の絲桜橋

この白川から東の部分は、1920(大正9)年に園用地として拡張した場所(4,231平方メートル)で、同年に橋を架け絲桜橋と命名した。“京都の森”の絲桜橋はそれを表現したものだ。当時、この用地内には草川が疏水に流れ込んでいたので羽衣橋が架けられ、26(同15)年から東門の出改札が始まった。
結局、法勝寺は白川のそばに築かれ、白川と琵琶湖疏水の合流点に動物園が造られたわけだ。

白川と琵琶湖疏水の合流点

白川と琵琶湖疏水の合流点

(左側:白川)

「巨大な輝き」の像から動物園を望む

「巨大な輝き」の像から動物園を望む

参考文献
「京都市動物園80年のあゆみ」京都市・京都市動物園 1984年
「法勝寺八角九重塔跡発掘調査現地説明会資料」京都市埋蔵文化財研究所 2010年
「京都市動物園」 
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この記事を書いたKLKライター

京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
松田 彰

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
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