それから40年以上。
ここに桜の園があったことを知った現地の人たちが、昔の姿を偲んで桜を植え始めます。
最初は初老の男性二人だったそうです。
『持ち主京都府の許可を得て生い茂った木や竹を伐った。 山桜が人知れず育っていた。光を受けて花をつけ、二人は憑かれたように木や竹を伐り山桜を紡ぎだした。
一人加わり二人加わり参加する者が増えた。 みな稼ぎを終えた男だった。応援する女もあらわれ活動は雨の日と休日以外朝から夕方まで続いた』

向日神社の北へ抜け、勝山公園から「桜の道」に入ると、幾つかのパネルが建っています。
一つや二つではありません。大小二十以上あります。

笹部新太郎氏がここに桜の園を作っていた歴史。

桜の品種についても、ひとつひとつ説明書きがされています。
訪問したときには、早咲きで知られるカワヅザクラが花を咲かせていました。

不思議に思うことがありました。
ソメイヨシノ一辺倒の文化を批判し、ソメイヨシノに圧迫された旧来の桜を守ろうとしていた笹部新太郎。
しかし、向日神社の参道を現在彩っているのは、主にソメイヨシノなのです。
この参道の桜たちも、笹部新太郎ゆかりのものだと記述がありました。

笹部氏はどんな思いで参道の桜を植えたのでしょうか。
さいごに、鎮守の森の会から、笹部新太郎について、こんな記述を引用して終わりたいと思います。

『ソメイヨシノをけなし続けた人として知られているが、ソメイヨシノのよさを認めていた人でもある。
 樹齢400年の荘川桜を移植した人として知られているが、就職せず、私財を使い日本古来の桜の保存とソメイヨシノに代わる桜の品種改良に生涯をかけた人である。 使った私財は今の貨幣価値で100億円を超えたという。 理解しにくい人であり、一口で言うと「けったいな人」である。』

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この記事を書いたKLKライター

写真家
三宅 徹

 
写真家。
京都の風景と祭事を中心に、その伝統と文化を捉えるべく撮影している。
やすらい祭の学区に生まれ、葵祭の学区に育つ。
いちど京都を出たことで地元の魅力に目覚め、友人に各地の名所やそれにまつわる歴史、逸話を紹介しているうち、必要にかられて写真の撮影を始める。
SNSなどで公開していた作品が出版社などの目に止まり、書籍や観光誌の写真担当に起用されることになる。
最近は写真撮影に加えて、撮影技法や京都の歴史などに関する講演会やコラム提供も行っている。

主な実績
京都観光Navi(京都市観光協会公式HP) 「京都四大行事」コーナー ほか
しかけにときめく「京都名庭園」(著者 烏賀陽百合 誠文堂新光社)
しかけに感動する「京都名庭園」(同上)
いちどは行ってみたい京都「絶景庭園」(著者 烏賀陽百合 光文社知恵の森文庫)
阪急電鉄 車内紙「TOKK」2018年11月15日号 表紙 他
京都の中のドイツ 青地伯水編 春風社
ほか、雑誌、書籍、ホームページへの写真提供多数。

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京都の風景と祭事を中心に、その伝統と文化を捉えるべく撮影している。
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SNSなどで公開していた作品が出版社などの目に止まり、書籍や観光誌の写真担当に起用されることになる。
最近は写真撮影に加えて、撮影技法や京都の歴史などに関する講演会やコラム提供も行っている。

主な実績
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しかけに感動する「京都名庭園」(同上)
いちどは行ってみたい京都「絶景庭園」(著者 烏賀陽百合 光文社知恵の森文庫)
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