赤い衣装の子供達は、牛車を引く牛の引き綱を持つ牛童(うしわらわ)で、8㎞巡行してもまだまだ元気のようでこのように休憩所に向かって駆け出していました。待っているお母さんの元へ行ったのでしょうか。

斎王代幄舎の斎王代と女官達。斎王はかつては未婚の内親王(天皇の娘)が勤めましたが、現在は京都在住の未婚女性から選ばれ、斎王代として勤めます。 
斎王代の髪はおすべらかしで金属製の飾りもの「心葉」をつけ、額の両側には「日陰糸」を下げます。手には桧扇(ひおうぎ)を持ちます。きらびやかな十二単衣も、重さは30kgもあるそうで、着付けは2人がかりで3時間近くかかります。この衣装では巡行も、また幄舎での待機も大変なことでしょう。

向かって右は舞人(まいびと)6人で、巡幸中は騎馬で進んできました。このあと舞殿で東遊(あずまあそび)を舞います。左は陪従で、神前で雅楽を奏する武官で7人が騎馬で巡行してきました。陪従の衣装には、色鮮やかな唐獅子模様が刺繍されていました。

舞人と陪従が立ち並ぶ中、勅使が参進してきました。勅使は社頭の儀のみに参役され、大勢のお供に社頭の儀で必要な調度品を持たせて進んで行きました。

勅使が御祭文を奏上した後に続いて斎王代の拝礼があるのですが、あの衣装で前に進むのは大丈夫だろうかと心配していました。前に毛氈をしいてもらいそこに立ち、その場で拝礼されました。そうですよね。

警護の衛士が勅使の横に控えていましたが、背中の模様が気になりじっと見ていました。良くは分かりませんが、平安時代に良く出没して源頼政に退治されたという鵺(ぬえ)ではないかと思いました。

陪従により十二歌が唱えられる中、左馬寮と右馬寮から奉献される馬2頭が馬寮使により引かれて橋殿を三周し、その都度馬寮使の拝礼に合わせ二頭の馬も頭を下げるのには、思わず参加者から笑みがこぼれました。

舞人はその衣の上の片方を脱いで直立して立ち、儀式の終わりを迎えました。時刻は3時半から始まり、もう6時になっていました。
この後まだ境内では「走馬の儀」があるのですが、いささか見ているだけで疲れましたので、失礼して帰りました。

豊穣祈願に始まった賀茂祭ですが、今では京の歴史を思い起こさせ、京の文化に人々が魅了される良い機会となっています。京の三大祭のもうひとつである祇園祭の山鉾巡行も今年は再開されます。来年こそは賀茂祭が盛大に巡行され、この行列の華麗で優美な姿を多くの方に見て欲しいものです。

参考資料
加茂別雷神社. 勅祭 賀茂祭(葵祭).神社説明資料.
岡田精司. 2000.一.県主の神ら王城守護のかみへ-二つの加茂神社-、「京の社」.p.13―46. 塙書房.
山本四郎. 1995. 京都府の歴史散歩 上. 山川出版社. 
Twitter Facebook

この記事を書いたKLKライター

京都府立大学 名誉教授
藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

記事一覧
  

関連するキーワード

藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

|京都府立大学 名誉教授|京野菜/伝統野菜

アクセスランキング

人気のある記事ランキング