京都の夏は暑いとは聞いていたが、これほどとは想像がつかなかった。去年、おととしは(自粛ムードのせいもあって)昼間に出歩く用事が少なかったからそんなに苦にならなかったが、今年は本当に暑さに悩まされている。私の中での夏は未だに北国仕様なので、つい屋外で力いっぱい遊びたくなってしまうのだが、ここではそうはいかない。遊ぶにしても、いろいろと工夫が必要だ。

さて、夏といえば浴衣である。私は浴衣が大好きだ。好きポイントを挙げていけば枚挙にいとまがないが、なにより全身で『夏』になれるのがいい。浴衣を着ずして私の夏は来ないと言っても過言ではない。
今回はちょうどKYOTO LOVE KYOTOで浴衣特集をするということなので、先日私と夫が浴衣でおでかけした日のことを、ありのまま記事にしたいと思う。かなり「ちゃんとしていない」一日だったのだが、これを読んだ人が「なーんだ、こんな適当なかんじでいいんだ」と思って、浴衣に袖を通す回数が少しでも増えれば幸いである。

 

すんなりといかない朝の支度

「朝ごはんできたけど、そろそろ起きる?」という夫の声を聞いて私は半分目を覚ました。時計を見ると9時半である。しまった、早起きして、浴衣を着てかき氷を食べに行くという話だったのに、すっかり寝坊してしまった。私はあまり寝起きが良い方ではないので、朝食を食べ、化粧をし、髪型を整え、さあこれから浴衣を着るぞ、というときには、もう11時になっていた。
さて、コーディネートを決めよう。きものの着方の本には「前日のうちにコーディネートを決め、使うものをひとまとめにして準備しましょう」と書いてあるのだが、いかんせん私は気まぐれな性格なので、「今日はこれ着たい!」という気持ちを大事にするべく、たいてい当日の朝に着るものを決める。まず着たい浴衣を決め、その上に合いそうな半幅帯を何本か並べてみる。そして、一番気分に合う帯を選んで、着付けに入っていくのである。

浴衣の着付けなんて慣れれば早いもので、5分くらいで帯を結ぶ前の段階までできてしまう。帯結びもそんなに難しいことはなく、手慣れた簡単な結び方ならささっと結べ…ばよかったのだが、この日はなぜか本に載っている難しい結び方をしてみたくなってしまい、しかも本に書いてあることを読み違えて何度も失敗し、たいへんに時間をくってしまった。夫、本当にごめん。結局家を出たのは12時半のことである。

 

昼ごはんはかき氷

この日行ったのは、東山七条にある『茶匠清水一芳園 京都本店』。すっかり昼時になってしまったが、店内には他にもたくさんのお客さんがおり、人気のほどを伺わせた。私はほうじ茶のかき氷、夫は抹茶のかき氷を注文し、待つことしばし…

じゃーん!こちらが、『ほうじ茶エスプーマの雪氷』。上のモリモリは「エスプーマ」という、液体の食材を泡状にする技術で作られたほうじ茶のクリームで、口に入れるとほわわんとほうじ茶の香ばしい香りが広がる。また、ここのかき氷は氷部分にも特徴があり、「雪氷」というネーミングの通り、氷というより雪のような見た目をしている。地元や、学生時代住んでいた札幌で冷え込んだ夜に降る、細かいサラサラした雪にそっくりだ。小さいころから雪はあまり食べるなと教えられてきたので、大手を振って食べられる雪だ~♪と、嬉しくなってむしゃむしゃ食べてしまった。

夫は抹茶のかき氷にちょっと苦戦していた。抹茶のかき氷は二種類あり、夫はお店のオススメに従い『上抹茶エスプーマの雪氷』を注文していた(もう片方は『抹茶エスプーマの雪氷』)。

私も一口もらったところ、苦みの中に複雑なうまみを感じ、確かにこれは上等なものだと感じるお味だった。抹茶クリーム部分にはほとんど甘味が付いていないので、抹茶そのものの味をしっかり堪能できる。その反面、(夫のような)苦みが苦手な人は、食べ進むにつれちょっと辛くなってしまうようだった。しかしご安心を、店内には、お茶のポットと一緒に、練乳の大きいボトルが常備されている。「苦すぎる!」と感じたら、練乳をかけて中和することができる。注文時にバニラアイスをトッピングすることもできるので、苦みが強めの抹茶スイーツが苦手だと感じている人にはそちらもおすすめだ。

 

予定は未定

さて、本日のメインイベントである「かき氷を食べる」は終わったが、次の予定を全く考えていなかった。しかし心配はいらない。行きのバスで買った市バス一日券があれば、どこへだって行けるし何だってできるのだ。私たちはひとまず、近くの智積院の庭を見に行くことにした。

智積院には国宝である長谷川等伯の障壁画があって、庭園の拝観料を払うとその収蔵庫にも入ることができる。障壁画が見事であることはもちろんなのだが、収蔵庫内はキンキンに冷房が効いており、この季節にはありがたいことだなあと思った。(人間のためだけに空調を効かせているのでないことは承知している。)

名勝庭園には、真夏の強い日差しに対抗するかのような力強さを感じた。カササギのようなカラーリングのトンボが飛んでいてきれいだった。東山通のすぐそばのはずなのに、あたりはセミの鳴き声と、時々鯉が跳ねるボチャンという音しか聞こえずとても静かで、しばらく無心になってボーっとしていた。

 

夏×浴衣×お酒=

そうこうしているうちにお腹がすいてきた。かき氷は食べた直後は結構お腹いっぱいになるが、腹持ちは良くない。またしても次の予定は決めていないので、お寺の中だというのに、どこの飲み屋に行くのがいいか話し合った(酒を飲むことだけは最初から決まっていた)。ああでもない、こうでもないと話すうち、パッと閃いた。「ビアガーデン行きたい!!」浴衣でビアガーデンに行く、というのは、私のかねてからの願いだった。今こそその時!京都市内、ビアガーデンはいくつかあるが、今回はずっと行ってみたかったロシア料理店「キエフ」のビアガーデンに行くことにした。ビアガーデンの開始時間は17時半だったので、電話で予約をし、祇園のお土産屋さんを見て回りながら時間をつぶして、ちょうどくらいの時間にお店に行った。

受付を済ませて屋上に出ると、遮る物のない大きな空が目の前に広がっていた。眼下には、たくさんの人がひしめく四条大橋と、のんびりと流れる鴨川。私はすっかり開放的な気分になってしまった。

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きものライター
千賀 佳織

青森県出身。母の実家が小さい呉服店であったことから、幼少期よりなんとなく着物に興味をもつ。実家が裕福でなく、実際に着物を着る機会はほとんどなかったため、着物愛をこじらせて、新卒で関西ローカルチェーンの呉服店に就職。仕事自体は楽しかったものの、理想と現実のギャップに悩んで心を病み、一年で退職。その後は京都に移り住み、自由気ままに着物と触れ合う日々を送っている。

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|きものライター|着物/移住/天神市

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