五山の送り火でお精霊さまをお見送りすると、急に季節が進む京都。昼間は夏を思わせるような暑さでも、日の暮れは日に日に早くなり、蝉の声から虫の音に変わってくると、すぐに秋の気配を感じます。
肌寒くなるとあわてて羽織りものを引っ張りだし、さらに気温が下がるといよいよ衣がえの作業が待っていますが、京都のうつわに関わる私たち、我が家ではもう一つの衣がえがあります。

うつわの衣がえ。

と言ってもそんな大げさなことではなく、夏の間に使っていた、涼しげな色のうつわやガラス製のものを食器棚の奥にしまい、秋らしい色や厚みのあるうつわを前に出して来るだけのこと。
意識しないと、ついつい一年を通して同じうつわを使ってしまいそう。旬の味覚だけで季節を感じるだけでなく、さらにプラスしてうつわも季節の味わいに加えていただくのはいかがでしょう。



京都のやきものって

京都は千年の都であったことから、その昔、宮中や公家、茶人の要望に応えるため全国各地から優秀な技術を持った陶工が集まって来ました。その歴史から多種多様な技法が現在の職人さんまで伝わります。

京都のやきものが花開いたのは江戸時代。野々村仁清(にんせい)や尾形乾山(けんざん)などの名工が登場し、絵付けされた煌びやかなうつわが作られました。江戸時代初期には粟田焼・御室焼・御菩薩(みぞろ)焼など都のあちらこちらで作られていましたが、そのうちの1つ、清水寺周辺で焼かれていた清水焼の窯元は今も多く残っています。昭和52年、経済産業省伝統的工芸品の指定時に京都のやきものの総称である京焼と合わさり、以降「京焼・清水焼」と言われます。
現在、京焼・清水焼は東山区の五条坂、今熊野、泉涌寺近辺と、山科区の清水焼団地、宇治市の炭山地域などで作られています。
夫婦で販売する機会やうつわのセミナーの場で必ずと言っていいほど聞かれるのが京焼・清水焼の特徴。先述の歴史背景から「いろんな技法があるのが京都のやきものの特徴です」と決まってお答えしています。

 

陶器・磁器のちがい

うつわの材料は大きく分けて陶器と磁器に分けられます。どちらも土から出来ていますが、陶器は陶土と言う粘土から出来ており、明るいうす茶色から灰色、赤土色や褐色、黄土色など元々の土の色があります。磁器の磁土(じど)には陶石と言われる、白い石を砕いたものが多く含まれていることから白っぽいうつわが出来ます。メインの材料が主に土、主に石と言うことから陶器=“土もの”、磁器=“石もの”とも言われます。

かつては京都でも作陶用の土を採取されていましたが、現在では土は採られず、京都近郊から取り寄せられています。その土地の土を使うから、地名の付いたやきものが生まれるのですが、京焼・清水焼はレアなケース。土ではなく、京都のやきものを焼く技術を以て京焼・清水焼を指すという言い方が近いかも知れません。

陶器(左)と磁器(右)のちがい

陶器(左)と磁器(右)のちがい

陶器・磁器の見分け方は、うつわの裏側を見比べます。陶器は土の色、磁器は陶石の白色が見受けられます。
わかりにくいときは、うつわをそーっと爪でたたいてみてください。(お茶碗を鳴らすなんてお行儀悪いと叱られるかもしれませんが…)土ものは「コンコン」とした低い音、石ものは「キンキン」と高く澄んだ金属音がします。

(余談ですが、叩いた際に鈍く短い音がした時はどこかにヒビが入っている可能性があります)

また、お茶碗を光にかざしてみてください。
陶器は特に変化はありませんが、特に薄く作られた磁器はうつわの外側に描かれている絵やうつわを持つ指の影が透けてみます。(京焼・清水焼は比較的薄く作られているので見やすいです)
これは、白い素地が持つ光を通す特徴(透光性)です。

 

秋を感じるうつわとは

さて、京都のやきもの、陶器と磁器の違いがわかったところで、我が家の食器棚の奥から衣がえをした、秋のうつわってどんなものでしょう。

そろそろ収穫時期の、お芋さんやかぼちゃ、きのこ、新米などの食材が楽しめます。日夜涼しくなってくると、あたたかいお料理が恋しくなってきますね。そんな秋の恵みを盛るのは素朴でかつ保温性のある〈ぽってり〉としたフォルムの陶器がオススメ。

秋らしいうつわ

秋らしいうつわ

ほんの一例ですが、写真のような刷毛でさっとうつわに模様が描かれた「刷毛目」、カラメルのような色の「飴釉(あめゆう)」、淡いグレーベージュに白い斑点が特徴の「御本手」など、暖色系の色の“土もの”のうつわが合います。
もちろんこれ以外に磁器でも秋のお花が描かれたお皿や、白っぽい厚手の生地のうつわや、寒色の青でも色調を下げたものでしたら秋らしい印象を与えてくれます。

お箸置きも季節を感じさせる重要なアイテム。紅葉や菊の花、柿など季節のモチーフがあるだけでぐっと季節感が引き立ちます。

秋のお箸置きのコレクション

秋のお箸置きのコレクション

こんなにも豊富な技法、デザインのうつわがある京都。食空間コーディネーターの私としてもカジュアルなシーンから、格式高い場面、スタイリッシュな空間、はたまたナチュラルな表現など多岐にわたるご提案が可能で、こんなに面白い環境はないと思っています。
皆さまも、食器棚を見渡してみると、そういやこんなうつわもあったな…なんてこともあるかも。ぜひうつわで季節感を感じてみてください。

「おきにのうつわ」は祖父の代から京焼・清水焼の卸売をしている夫と、食空間コーディネーターの私との夫婦ユニット。当初は2人が深く関わる京焼・清水焼にまつわることをSNSに発信したり、イベントやセミナーなどにお招きいただき、お話させてもらってきました。近年は、やきもの以外の工芸品のPRや展示会プロデュースなどを手がけることも増え、〈作り手〉と〈買い手〉をつなぐ〈つなぎ手〉として活動しています。

今回は京都のやきものの紹介になりましたが、食卓にはやきもの以外にも漆器や木製品、金属製のアイテムもあります。また、床の間や棚にしつらえる飾り、身につけるものなども伝統的な技術を使って、今の時代に合うように作られたおしゃれで素敵な工芸品がたくさんあります。

我が家でスタートさせた、京都の伝統的なものを愛でたり使ったりして日々を楽しむ活動、略して「伝活」を今後も文章にしたためて紹介していきたいと思います。

秋をたのしむ食卓のコーディネート

秋をたのしむ食卓のコーディネート

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この記事を書いたKLKライター

おきにのうつわ
食空間コーディネーター 工芸品ディレクター
三谷 靖代

京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
特非)五節句文化アカデミア 理事

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京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
特非)五節句文化アカデミア 理事

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食空間コーディネーター 工芸品ディレクター|うつわ/清水焼/伝統産業




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