森脇:当時、家の近くにおじさん2人がやっているCDショップがあったんです。そのお店はクラシックのCDの取り扱いが多く、よく通っていました。ある時、その店で購入したCDのカップリング曲にブーレーズ作曲のピアノソナタ第2番が入っていたんです。初めて聴いた時は「なんだこのデタラメは!」と思いました(笑)

ー最初から現代音楽をかっこいいと思っていた訳ではないのですね。

森脇:そうです。でも、中学生ってそういうものにハマるじゃないですか。人とは違うのがかっこよくて。いつしか「デタラメ」と思っていた現代音楽が「かっこいい」に変わったんです。
「かっこいい」曲を作曲したブーレーズをもっと知りたくなって、いつものCDショップへブーレーズのCDを探しに行く。すると、クラシックマニアのおじさんがCDをたくさん並べてくれて……

ーたまたまクラシックマニアのおじさんと出会えたのも幸運だったのですね。

森脇:運命ですね。ですが、私が高校3年生の時にお店が閉店してしまいました。閉店間際に半額セールをやっていて、CDを買い占めました。するとおじさんも「この分はまけてあげるよ。頑張ってね、音大行くんでしょ」と激励してくださったり。

ー良い話!


クラシック少年、アイドルと出会った

ー現代音楽にハマった中学時代を経て、どのような高校時代を過ごされたのですか?

森脇:高校生の頃は、私立恵比寿中学(以下:エビ中)というアイドルに出会いました。確か、山梨にエビ中が来て、それでその音楽にハマりまして。

ーアイドルの女の子ではなく音楽の方に?

森脇:はい、「何このコード進行!変な転調!」って(笑)それまでポップスを全く聴いたことがなかったので、衝撃を受けました。
そこからアイドル曲にハマり、時代を遡って聴き進めるとキャンディーズまで行きつきました。松任谷正隆さんを知って、プロデューサーってかっこいいなと思っていましたね。そもそも、リーダーシップというものに憧れがあったんです。それこそ指揮者もそうですが。

ー当時はまだ、指揮科に行くことは考えていなかったんですよね?

森脇:いや、実は指揮科には行きたかったんです。
小学生の頃から指揮者の真似事はしていましたし、興味はありました。ですが、ピアノの先生に指揮科に行きたいと相談したら「和声ができないと(合格は)無理」と言われてしまって。初めは指揮が無理ならピアノで受験しようかと色々調べていたのですが、高2の頃にアイドルに出会い、プロデューサーもやりたくなってきてしまって。とにかくその時ハマったものに全振りしてしまうんですよね。
そして、音大でプロデューサーになれる科はないかと探していた時に……。

ー出会ったんですね、音楽環境創造科に。

森脇:そう。でんぱ組.incのプロデューサーのもふくちゃんの出身がここだと知って受験しました。


 

挫折、そして指揮者へ

ー私たちは作曲のゼミにいましたが、作曲経験はありましたか?

森脇:全くありませんでした。入った当初は、自分なら何でもできるような気がしていたんですけど、数年過ごしてみてDTM(※2)での作曲があまり向いてない気がしてきて。オーケストラを聴いてきたので、音の重ね方は何となくわかるのですが、DTMの才能はないなと思い始めました。
(※2)パソコンを利用した音楽制作手法。デスクトップミュージック。

ー森脇さんにも挫折があったんですね。
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この記事を書いたKLKライター

アートライター
阿部 千加

埼玉県出身。東京藝術大学音楽環境創造科卒。
2020年に結婚を機に京都に移住し、現在は滋賀で暮らしている。「より京都での暮らしを楽しみたい」という想いで移住前より京都検定の勉強を開始し、その年中に3級を取得。歴史や文化を知りながら街歩きをするのが楽しくなり、趣味が昂じたような形でまいまい京都 同行スタッフに。現在は、コンサートスタッフ・パソコン事務・時々ライターとして活動する傍ら、街をまいまいしている。

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埼玉県出身。東京藝術大学音楽環境創造科卒。
2020年に結婚を機に京都に移住し、現在は滋賀で暮らしている。「より京都での暮らしを楽しみたい」という想いで移住前より京都検定の勉強を開始し、その年中に3級を取得。歴史や文化を知りながら街歩きをするのが楽しくなり、趣味が昂じたような形でまいまい京都 同行スタッフに。現在は、コンサートスタッフ・パソコン事務・時々ライターとして活動する傍ら、街をまいまいしている。

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