上賀茂神社の社家である市家には、古くから多くのツバキが植栽されている。中でも百合椿は貴重で、京都の銘椿。百合椿は幻のツバキと言われていたが、近年上賀茂で成木が発見された。花は細い筒咲きで、濃紅色の遅咲きの花。
 

奥村邸:京都市北区上賀茂北ノ原町

洛北の上賀茂別雷神社の北方の柊野にある、旧家・奥村邸の前庭にそびえる五色八重散椿は、樹高9m、樹齢約450年と言われる(長福寺の項を参照)。散椿としては極めて大きく、全国的にも有数の規模の貴重なツバキであり、京都市指定天然記念物。
 

Ⅱ神社、寺院編

大徳寺・瑞峯院:京都市北区紫野大徳寺町

天正年間(1532~1554)に大友宗麟が創建。銘椿の加茂本阿弥は名古屋地方では窓の月と呼ばれ、また花弁に紅筋が入れば中部真鶴とも呼ばれる。花も葉も共に良く、茶花の名品。筒蕊(しべ)、筒咲—椀咲で大輪の花が咲く。白雪(しらゆき)は白色、一重、平開咲き、花糸白色、梅芯で中輪の花。当倶楽部評議員でもある前田昌道前和尚には、平成三年のつばき展以来「茶花コーナー」を設けて頂き、好評を得ている。
 

大徳寺・総見院:京都市北区紫野大徳寺町・通常は非公開

582年の本能寺の変後に、織田信長、織田家の菩提寺になった。大徳寺と茶道のゆかりは深い。千利休遺愛の侘助(胡蝶侘助、大聖寺の稿を参照)は京椿の代表種銘椿の一つ。これが本当の茶人の言う侘助の原木で、樹齢は400年で京都市の指定天然記念物。
 

大徳寺・高桐院:京都市北区紫野大徳寺町

慶長年間(1596~1615)に細川忠興が父・幽斎の菩提寺として創建した、細川家の菩提寺である。雪中花は桃、白、白に紅筋の入った単弁の名品。天津乙女はほのかな淡桃一重の筒咲で、細く締まった花形は散るまで崩れず、茶花としても銘椿。
 

大徳寺・聚光院:京都市北区紫野大徳寺町・通常は非公開

三好長慶の養子である義継が、永禄9年(1566年)に、養父長慶の菩提を弔うため創建した。千利休の墓があり、それ以降三千家歴代の墓所。早咲きの曙の巨木と、早咲き一重の宗旦椿がある。曙は茶花として膨らんだ蕾は特に珍重され、11月に咲く個体も好まれる。花は筒蕊、抱咲きで淡紅色の巨大輪。ただ一般の曙より花はやや小輪。宗旦椿は茶花としての雅品で、ここの木が原木。一重筒咲の純白小輪のヤブツバキ系の格調高い品種、早咲きで葉も小型で整っている。京の名園のヤブツバキには気品高い名花銘椿が見られるが、この宗旦椿はその中でも逸品。藪椿の木は直立し、花は紅色の筒~ラッパ咲きとなるが、雪椿は低木状に叢生(そうせい)し、花は平咲き。
 

平岡八幡宮:京都市右京区梅ヶ畑

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この記事を書いたKLKライター

京都府立大学 名誉教授
藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

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藤目 幸擴

 
生年月日:1945年(昭和20年)1月5日

現職
京都府立大学 名誉教授、タキイ財団 理事、NPO 京の農・園芸福祉研究会 理事長、(一財)京都園芸倶楽部 会長

主な経歴 
1969年 京都大学大学院農学研究科修士課程修了、香川大学・京都府立大学教授を歴任
1982年 京都大学農学博士
1984年 園芸学会賞奨励賞
2008年 京都府立大学農学部定年退官・名誉教授
1985~1986年 ケニア・ジョモケニヤッタ農工大学へ出張(国際協力機構) 
1993~1994年 英国ロンドン大学を中心に欧米7カ国 へ出張(文部省長期在外派遣)
1997年 デンマーク植物と土壌科学研究所へ出張(学術振興会派遣研究員)
この間に欧米、アジアなど約30カ国での国際シンポジウムに参加すると共に、留学生10名に学位論文の指導を行う

主な著書  
Q&A 絵で見る野菜の育ち方、農文協、2005
野菜の発育と栽培、農文協、2006
ブロッコリーとカリフラワーの絵本、農文協、2007
ブロッコリーの生理生態と生産事例、誠文堂新光社、2010
ブロッコリーとカリフラワーの作業便利帳、農文協、2010
はじめてのイタリア野菜、農文協、2015
「おいしい彩り野菜のつくりかた」(監修) 農文協、2018

|京都府立大学 名誉教授|京野菜/伝統野菜

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