春の訪れを感じるようになってきました。
スーパーには、春の食材が並び出し、鯛やホタルイカ、春キャベツ、山菜なども出てきましたね。お惣菜コーナーのタラの芽のてんぷらに思わず手がのびます。お花もそう。いつも通る桜並木。端っこの桜は毎年誰よりも早く春を知らせてくれます。
服装もニットが暑くなってくると薄手の服を引っ張りだし、更に暖かくなるといよいよ衣替えの作業がありますが、京都のうつわに関わる私たち、我が家ではもう一つの衣がえがあります。
うつわの衣がえ。
と言ってもそんな大げさなことではなく、冬の間に使っていた、濃色のうつわや厚手のものを食器棚の奥にしまい、春らしい淡色やガラスのうつわを前に出してくるだけのこと。
意識しないと、ついつい一年を通して同じうつわを使ってしまいそう。旬の味覚だけで季節を感じるだけでなく、さらにプラスしてうつわも季節の味わいに加えていただくのはいかがでしょう。
京都のやきものって
京都は千年の都であったことから、その昔、宮中や公家、茶人の要望に応えるため全国各地から優秀な技術を持った陶工が集まって来ました。その歴史から多種多様な技法が現在の職人さんまで伝わります。
京都のやきものが花開いたのは江戸時代。野々村仁清(にんせい)や尾形乾山(けんざん)などの名工が登場し、絵付けされた煌びやかなうつわが作られました。江戸時代初期には粟田焼・御室焼・御菩薩(みぞろ)焼など都のあちらこちらで作られていましたが、そのうちの1つ、清水寺周辺で焼かれていた清水焼の窯元は今も多く残っています。昭和52年、経済産業省伝統的工芸品の指定時に京都のやきものの総称である京焼と合わさり、以降「京焼・清水焼」と言われます。
現在、京焼・清水焼は東山区の五条坂、今熊野、泉涌寺近辺と、山科区の清水焼団地、宇治市の炭山地域などで作られています。
夫婦で販売する機会やうつわのセミナーの場で必ずと言っていいほど聞かれるのが京焼・清水焼の特徴。先述の歴史背景から「いろんな技法があるのが京都のやきものの特徴です」と決まってお答えしています。
陶器・磁器のちがい
うつわの材料は大きく分けて陶器と磁器に分けられます。どちらも土から出来ていますが、陶器は陶土と言う粘土から出来ており、明るいうす茶色から灰色、赤土色や褐色、黄土色など元々の土の色があります。磁器の磁土(じど)には陶石と言われる、白い石を砕いたものが多く含まれていることから白っぽいうつわが出来ます。メインの材料が主に土、主に石と言うことから陶器=“土もの”、磁器=“石もの”とも言われます。
かつては京都でも作陶用の土を採取されていましたが、現在では土は採られず、京都近郊から取り寄せられています。その土地の土を使うから、地名の付いたやきものが生まれるのですが、京焼・清水焼はレアなケース。土ではなく、京都のやきものを焼く技術を以て京焼・清水焼を指すという言い方が近いかも知れません。
陶器・磁器の見分け方は、うつわの裏側を見比べます。陶器は土の色、磁器は陶石の白色が見受けられます。
わかりにくいときは、うつわをそーっと爪でたたいてみてください。(お茶碗を鳴らすなんてお行儀悪いと叱られるかもしれませんが…)土ものは「コンコン」とした低い音、石ものは「キンキン」と高く澄んだ金属音がします。
(余談ですが、叩いた際に鈍く短い音がした時はどこかにヒビが入っている可能性があります)
また、お茶碗を光にかざしてみてください。
陶器は特に変化はありませんが、特に薄く作られた磁器はうつわの外側に描かれている絵やうつわを持つ指の影が透けてみます。(京焼・清水焼は比較的薄く作られているので見やすいです)
これは、白い素地が持つ光を通す特徴(透光性)です。
春を感じるうつわ
さあ、春のうつわ。
春の山菜料理に合いそうなペールトーンと言われる淡い色調や、お花がモチーフになったもの、特に桜の絵なんて最高に季節感を味わえると思います。ですが、ほんの短い期間だけしか使えないと気にされる方もあると思います。そんな時は桜と紅葉の両方が描かれた「雲錦(うんきん・桜を白雲に、紅葉を錦織に見立てた名前)」と言われる絵を選ばれると、春と秋と両方楽しむことができます。(年中を通して使えると解釈することもあります)
陶磁器以外にも木製品のうつわもいいですね。天然素材を加えると、ナチュラルで安らぎのある食卓になります。
手軽に季節を感じることが出来るので、毎度オススメするお箸置きも、春デザインのとってもかわいいものがたくさんあります。
テーブルを春らしく演出するには、うつわ以外のアイテムも淡い色をベースに、ピンクや黄色、緑、水色など、多色配色=カラフルにするのがコーディネートのコツ。かわいい雰囲気になりますが、コーディネートに慣れてこられたら、差し色を入れたりして、大人っぽい雰囲気にもチャレンジされてみてはどうでしょう。