景観を守る取り組み

四条通の北側で大和大路通から花見小路通にかけての各町内では、今日も町内ぐるみで景観まちづくりの取組が熱心に行われている。
伝建地区を擁する祇園新橋地区では、景観づくり協議会を設立し、2018(平成30)年に①祇園新橋の文化の共有と継承、②伝統的な建造物の維持・保全、品格ある建物の表構え、③祇園新橋の風情を味わう空間づくりを将来像とする「祇園新橋景観づくり計画書」を定めた。祇園新橋で暮らし、事業を行う人たちが協力し合って、風情のある空間づくりに取り組んでいる。
その北側の新門前通に面する西之町は,知恩院の門前にあって、隣り合う祇園町の営みや文化芸能を支える家々が存在し、通りには古美術商が集まって情緒豊かな町並みを形成している。このため1999(同11)年に歴史的景観保全修景地区が指定され、2004(同16)年には風俗店などの用途を規制する「新門前通西之町地区 地区計画」が決定されて、風情ある景観の形成とともに、古美術商をはじめとする商環境や落ち着きのある良好な住環境の形成が図られてきた。また2013(同25)年には景観づくり計画書を作成し、町式目の設定、土地・建物の利用基準づくり、景観デザインの作成などの取組を進めている。
さらにその北側の古門前通に面する元町は、知恩院参道のまちとして形成され、時流とともに逸品の古美術品や高い美意識をもった生業が集積し、趣のある風情と気品を有するまちとして成熟してきた。しかし近年、町内で営業開始した簡易宿所が管理不十分のため騒音や環境問題が発生した。この問題に取り組むなか、2015(同27)年に風俗店などの用途を規制する「古門前通元町地区 地区計画」が決定され、あわせて建築協定を締結することにより、まちの魅力である個性・清閑さ・まちなみなどの維持向上を図るまちづくりを進めている。
知恩院門前から鴨川まで白川に沿ってその界隈を巡ってみると、地域の歴史とともに暮らしと営みを両立させたいという、人々の想いが伝わってきた。

写真10:白川と鴨川の合流点

写真10:白川と鴨川の合流点

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この記事を書いたKLKライター

京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
松田 彰

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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松田 彰

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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