KLK 龍神の水ということですと、昨年の山鉾の辻回しを八坂神社のご神水でされたことが挙げられますよね。今年もそのようなことは行われるのでしょうか?

木村理事長「今年もそのようにさせていただくつもりではあります。昨年はテレビの実況なんかでそれを見られた方から『祇園祭ってそういう神事があったんですね。』というような反応があったんです。
今までは単なる山鉾の巡行という形で見てられたものがやはりこういうことで、神事もあり、清めの意味があるんだなということを再認識していただいたみたいですね。」

画像提供:公益財団法人祇園祭山鉾連合会

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山鉾の役割とは何か

KLK 山鉾連合会は、山鉾の統率をされておられる組織ということでしょうか?

木村理事長「私はお祭の山鉾というのは各ご町内の保存会が独自にやっている行事だと考えています。山鉾連合会というのはそれの一種の調整役をしているだけ。くじ取りをして順番を決め、17日24日にくじを取った順番に巡行する、というようなことが大きな仕事ですが、その他については、保存会が独自にされているお祭の行事という感覚を持っております。
反対に、それは非常に大事にすべきものだなとも思っています。連合会がご町内の保存会にこういうふうにせよとかいうようなことではなく、保存会が独自にお祭をされている。こういうことは、長い歴史の中で培われてきた一つの文化の継承の在り方だと思っています。」

KLK 昨年の講演でお聞きしたのですが、野村宮司は山鉾を陰陽道の観点からお話されてましたよね。

野村宮司「もともと鉾というのは貞観11年の神泉苑で始まりました。鉾といっても剣矛(けんぼこ)みたいなものが建っていたわけですよね。当時の疫病の原因というのは水の淀みですので、『矛』が金偏(かねへん)のついた『鉾』になることで、水を清める役目をするものに変わったんです。
陰陽道では木火土金水という気の流れがありますけど、その中の金のエネルギーが冷えることによって空気中の水の分子がそこに付着します。それによって水を浄化するエネルギーを金が持っています。」

KLK 昔は武器の矛でやったものが66本建てられたわけですが、それの漢字が変わることによってさらに祭が進化したと考えるのでしょうか?

野村宮司「金偏(かねへん)の鉾が都の中を巡りますが、建てていたものを何故あえて巡らすようになったのかということですよね。根本的なことを神事の面から見ていきますと、金偏の鉾を巡らすことによって空気中の気の流れを整えて、巡らす。そのためにはそれが時計回りじゃなきゃいけないんです。今の前祭は反時計回りになっていますけどね。
本来、山というのは動かないものでありますけど、それを都の中で動かすことによって、さらに気を流すという効果があります。時計回りによって都の気の流れを整え、都の風水を浄化していくというかね。そこに神を宿らせ、仏を宿らせ、龍神を宿らせ、そういった神さまの力をいただきながら都を清めていくということです。
山鉾というのは私から見ますと、風水祭祀というんですかね。気の流れや空気を浄化していくという。そういうお役目が、鉾にはあるんじゃないかなと考えています。」

KLK 木村理事長、今の宮司様のお話に対していかがでしょうか。

木村理事長「今まで宮司様はお考えについてのお話はされなかったので、野村宮司はそういうふうに考えておられるのかという感じです。鉾への考え方もいろいろありまして、さらに長い歴史の中でいろんな考え方の変化が起こっているので、精神性の問題はなかなか統一できないんです。我々としても答えが出しにくいものがあります。
関係者の誰に聞いてもやはりいろんな考えがあり、いろんな形で『この人はこう思っているんだな。あの人はこう思っているんだな。』という感じで、どれが間違っているとか合っているとかいう話ではなく、人によって違っているな。と感じます。というのは、山鉾というのは精神性の問題よりも、やはり物というか文化の継承、この形を残していくという継承に対する考え方のほうを我々としては重視してやっております。

そういう精神性の問題はやはり個々の人々の考え方の問題であるので、我々山鉾は長年こういうふうな形で受け継いできたものを引き継いでいく技術や文化をこれから先に継続してやっていけるような状況を作るということに重きを置いて考えております。祇園祭というあんだけのものが現在まで残ってきているということに対しては、やはり我々の先輩や過去の人たちが、それをどうしても守っていこうという気持ちがあったわけですから。祭をこれからも続けていくためには、そのためには何をしないといけないかを考えることを重要視していきたいと考えております。」

一番好きな祇園祭のシーン

KLK なるほど。お二人とも山鉾についての見解をお聞かせいただき有難うございます。それでは第一部のラストとして、お二人にとっての「一番好きな祇園祭のシーン」をお聞かせいただけませんでしょうか。

木村理事長「我々山鉾連合会にとって一番大事なことは山鉾巡行です。四条烏丸の出発で、これからやっていくぞ!という瞬間ですね。それが私にとっては一番緊張するものであり、大事なことです。
もう一つは、祇園祭が立ち上がるという鉾建ての感動も、これはもう。何年もしてますけど、あれだけはやっぱり感動します。これだけ大きなものを人の力で立ち上げる。この技術とこれを考え出した人がえらいなと、毎年それを思いながらあの鉾建てを見ています。
四条烏丸で出発時に朝日を浴びてさあこれからっていう時にガラッとこう鉾が動き出すっていうところ、これは長年やってきましたけど、やっぱり体が震える瞬間やなと思いますね。」

長刀鉾の鉾建

長刀鉾の鉾建

画像提供:公益財団法人祇園祭山鉾連合会

KLK 山鉾連合会理事長に就任されてからは当然、山鉾巡行で一番前を歩かれますよね。 その後ろに理事長のご出身である長刀鉾があるというところにはやはり感無量なものがおありなのではないでしょうか。

木村理事長「長刀鉾が先頭というのは決まってますんでね。なんでやという人もいますが、もう応仁の乱以前から先頭は決まってるんです。去年初めて長刀鉾の前を歩いたのですが、前を歩くことそのものにはあんまり感動はなかったんですけど、なんかポツンと、こういうものなんだなっていうのは去年初めて経験しました。やっぱり私は長刀鉾のお囃子や、巡行に対するいろんな世話役として関わってきた関係で、鉾に乗るのではなく前を歩かんならんっていうのは、なんか手持ちぶさたな感じもありましたね。昨年はたまたまご神水で清めさせていただくという役割を与えていただいたんで、山鉾連合会としてはやはり必要だろうなという思いはありました。

あまりにも人が多かったので、ちょっとびっくりしたというかやっぱり圧倒されましたね。去年はコロナの関係でもうあまり見に来ないでくださいというアナウンスはしたつもりなんですけど、あまりの人の多さでした。こんだけ人に見ていただく、それから関心を持っていただけるというのは本当にありがたい存在やということを一番に感じました。」

KLK 去年は本当に3年ぶりでしたからね。やはり祇園祭というのは、京都人の心の中に非常に大きなウエイトを占めている行事なんだなと、つくづくと感じました。それでは、野村宮司が思われる一番好きなシーンは何でしょうか。

野村宮司「1コマですよね。いろんなコマがありますけど、山鉾巡行や、私もくじ改めもさせていただいたりといろんな経験はありますけど、絞るなら私はあれです。この部屋の壁に飾っている写真を見てください。令和3年の祇園祭のものなんです。

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