観光地・清水五条で暮らす京都生活 ~老舗バイトと隠されたゲストハウス~

京都市東山区は若者が少なく、高齢化が進んでいると言われています。観光地で人も多く、住むのには厳しいんじゃないか?と思われる方もおられるでしょう。しかし、京都人には馴染み深い名門・京都女子大学(※京女「きょうじょ」と略す)があるので、意外と学生向けの安いアパートやマンションがあります。ちなみに、京女の校章の金バッジって格好良いですよね。

わたしの住んでたアパートはもともと京女生のためのもので、女性専用・敷金礼金なし・月額3万1000円(洗濯機共有・水道代込み)でした。3万円で清水五条に住めるの!?とよく驚かれたものです。四条河原町にはひと駅ぶん歩けば出られますし、京都駅には自転車ですぐ行けます(歩いても30分)。ただし清水寺に向かうバスはぎゅうぎゅうで、乗るのも降りるのももみくちゃになります。

わたしは、Kyoto Love. Kyoto編集部に入るまえ、10年間清水五条に住んで、リアルに生活していました。清水寺を観光する人、大谷本廟にお参りする人、様々な人でにぎわう清水五条。良いことも悪いことも含めて、観光地で「暮らす醍醐味」をお伝えいたします!

清水五条でバイトする

わたしは大学1年生から就職が決まるまで「五建ういろ」という水無月専門店でバイトしていました。人生はじめてのバイトです。お店の窓に筆文字でかっこよく「アルバイト募集 17時~20時」と書いてあってしびれました。「水無月」とは、小豆がのった外郎(ういろう)を三角形に切った和菓子です。

京都市内に生まれ育ち、大阪と奈良の国境にある大学(往復5時間)に通っていたわたしは、京都らしい仕事がしたくてここで働きます。和菓子を販売したり、工場でおまんじゅうをまるめたり、2階の喫茶を手伝ったり、時には百貨店の売り場や支店に応援に行ったりして、楽しく働きました。老舗の奥さんや若奥さんに厳しくも温かく見守られながら働けたので、本店バイトを大学生で経験できてよかったなと思っています。

クリスマスにケーキやケンタッキーを食べるように、京都人は6月30日に水無月を食べます。6月は飛ぶように水無月が売れました。6月30日は使命感をもって、毎年気合を入れて売っていました。工場でも夜通しで水無月を作って、お祭りのようです。
大学を卒業してから3か月遅れで城陽の会社に就職したときも、会社に頼み込んで6月30日まではアルバイトに行かせてもらって、7月1日に入社しました。その時に京都大丸で、殺到するお客様に整列してもらいながら、1日で78万9千円もの水無月を売ったことが忘れられません。

清水五条で道案内する

今の京都はどこもインバウンドがすごいですが、清水五条ではコロナ前から外国の方が特にたくさん来られていました。昔ながらの住宅や町家がことごとく海外資本の簡易宿泊施設に変わり、「民泊」が問題になっています。一住民として普通に生活していても危機感を覚えるほどでした。

家の前とかでよく、キャリーケースを引いた外国の方を目にするのですが、みんな迷っていました。いま大地震が起きたら、わたしはこの方たちをどこに連れていって助ければいいんだと、不安に思ったりしていました。「最寄りだと東山開睛館(京都市立開睛小中学校)かな、京都国立博物館なら言葉もなんとかなるかな」とか。

ある晩、1人の外国人女性に声をかけられました。ゲストハウスを探しているそうです。示された地図ではまさにそこにあるはずなのに、実際にはどこにも見当たりません。あるのは、わたしのバイト先の工場とお米屋さんだけです。
周りをいろいろ見て回ったのですがお手上げ、女性は御礼を言って立ち去られました。1人になったわたしはスマホのグーグルマップで「ゲストハウス」と検索、やはり現在地に何らかのゲストハウスが存在していることがわかりました。

「でも、どこに・・・??」

グーグルマップの画像欄を見ていると、ゲストハウスの看板が米屋のドアの前に置かれている画像があります。
「えっ!もしかしてお米屋さんの2階?!」

わたしは米屋のドアをがしっと掴んで開けてみました。すると、たたまれた看板があります。2階の奥には人がいるかもしれないのですが、呼んでもインターホンを押しても返事がありません。

近くでうろうろしていた女性を呼び戻し
「This!!!!」とドアの看板を指さしました。
「GO!!!!」と言って2階へ向かう階段に押し込みました。英語が話せないので実力行使です。

女性とは心が通じ合い、御礼を言ってもらって別れました。それはとても嬉しかったのですが、不案内なゲストハウスにはしっかりしてくれよという気持ちでいっぱいになりました。遠い外国の地で、疲れ果てて、夜泊まる場所が見つからないなんて、不安でしかありませんよね。京都は観光で人気ですが、ちゃんと皆が幸せになるようにしていきたいなと思った夜なのでした。

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この記事を書いたライター

Kyoto Love. Kyoto編集部スタッフ。京都が好きで入社し、Kyoto Love. Kyotoの編集や記事制作を行っています。