上賀茂神社で紫式部に出会う ~森のしずくに立ちやぬれまし~
紫式部が石山寺に参詣したのは有名ですが、実は上賀茂神社にも訪れていたことはご存知ですか?紫式部は神様に何を祈ったのでしょう。彼女の願いは何だったのでしょうか。
和歌に託された想い
紫式部が詠んだ和歌で、わたしが特に好きなものが3つあります。
これは百人一首にも選ばれている有名な歌ですね。「めぐりあってお会いしたのがあなたかと見定めかねているうちに、雲に隠れる夜半の月のようにあなたは帰ってしまった」という意味です。切ない恋の歌に聞こえるので、大事な旧友を歌ったものだというのを知った時はびっくりしました。イラスト付きで、中学校の図書室に大きく掲示されていたのを強く覚えています。
「紫式部日記」を読んで出会った歌です。暗く凄みのある、嵐のような心情を詠った歌だなと感じますが、この歌が詠まれた文脈は意外なものでした。紫式部はある年末に、はじめて宮中に出仕した頃のことを思い出していました。宮仕えに慣れてしまった自分をあざけり、また自分の老いを悲嘆してこの歌を詠みます。非常に内省的な心の動きから、こんな壮大な歌が詠めるのは人間の器の大きさを感じます。
仕事で上賀茂神社に取材に伺った際に知った歌です。片岡の社に参拝した紫式部が、
「ほととぎすの声を待つ間は、片岡社の森の梢の下で朝露のしずくに濡れても、ずっと待っていますね」という意味の歌を詠みました。
片岡社は縁結びの神様なので、「ほととぎす」を待つというのは「恋しく思う相手(将来の結婚相手)」を待つという意味になるんです。恋愛祈願だったんですね。この御利益もあって藤原宣孝と結婚したんでしょうか。それとも……?
上賀茂神社へ参拝してみよう
それでは、紫式部と縁のある上賀茂神社をご案内します。上賀茂神社は正式には賀茂別雷(かもわけいかづち)神社といいます。ご祭神は賀茂別雷大神。広大な敷地に国宝や重要文化財の建物が建ちならび、ユネスコ世界文化遺産にも登録されています。神社は京都市の北の方に位置しています。
片岡社は正式には片山御子神社といって、賀茂別雷大神のお母さんである賀茂玉依姫命が祀られている社です。縁結び、子授け、安産などのご神徳があります。賀茂玉依姫命には、賀茂川の上流で身を清めているときに流れてきた丹塗矢を拾ったところ、懐妊して賀茂別雷大神を産んだという神話があります。
片岡社には十二単を着た紫式部を描いた絵馬が飾られていて、華やかでかわいいです。縁結びということで、気合を入れてお参りしました。境内には紫式部の和歌が刻まれた歌碑もあるので是非探してみてくださいね。
「風そよぐ ならの小川の 夕ぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける」
藤原家隆の歌で、百人一首にも選ばれているものです。これは上賀茂神社の「ならの小川」を詠んだもの。千年の時を経た今も爽やかに川が流れており、当時と同じ景色を見ることができます。
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