*****************
学生フリーマガジンFASTNER.が、京都の学生たちの活動に迫る本企画。
紙面には載せきれなかった思いをKyoto Love KyotoにWEB連載!
彼らは今、何を思い、何を発信しているのか。
****************
京都を拠点に活動する学生フリーマガジン制作団体moco。学生の視点から京都の魅力を伝え、若者の活力を引き出すフリーマガジンとして活動を続けて15周年。今回、mocoの制作に携わるメンバーに話を聞き、魅力とそして未来への展望について探った。
「学生の声を届ける」mocoの存在意義
「私たちが大切にしているのは、学生の声を届けることです」とmocoのメンバーは語り始めた。「例えば、鴨川デルタで新歓をしている大学生や、大学周辺を歩いている学生を見ると、同世代の多様な生活に触れることができます。そんな京都ならではの光景を、mocoを通じて読者の皆さんにも感じてほしいんです」
この言葉には、学生の内なる声を引き出し、形にしたいという強い思いが感じられる。mocoは単なる情報誌ではなく、学生文化の発信源としての役割を担っている。
学生団体ならではの大学との両立
学業と並行してmocoの制作に携わるメンバーたち。大学との両立について尋ねると、「私は大学でデザインを学んでいるので、その延長線上でmocoの制作に携わることができています。意外と両立はできている方かなと思います」と語る。
しかし、課題の多さや週1回の会議など、決して楽ではない様子も窺える。「課題も多いので、予定を立ててしっかりやっていく必要があります。時間管理は本当に大切ですね」と、両立の難しさと工夫について語ってくれた。
多様性を活かす 大学や専攻の違いを強みに
mocoのメンバーは、様々な大学や専攻から集まっている。この多様性について、「いろんな学生の活躍があふれるのが京都の街のいいところだと思うんです。mocoはその縮図みたいなものかもしれません」と語る。
「学部はみなさんデザイン系ですか?」という質問に対し、「そういうわけではないんです。メンバーの専攻は様々で、デザイン系の学生もいれば、全く異なる分野の学生もいます。その多様性が新しいアイデアを生み出す源になっていると思います」
学生コミュニティとしてのmoco
mocoは単なる情報誌ではない。一つのコミュニティとして機能している側面もある。
「週1回の会議は、単に制作のためだけじゃないんです。みんなで集まって話すこと自体が楽しくて。大学も学部も違う人たちと話すことで、新しい刺激を受けるんです。それが私のモチベーションになっています」
この言葉からは、mocoが単なる制作団体ではなく、メンバー同士が刺激し合い、成長できる場所になっていることが伝わってくる。フリーマガジンだからといってデザイン系の学生だけでなく、社会学や政策、商学など、普段デザインについて学ぶ機会のない学部に所属するメンバーも多数在籍している。この学生の多様性もmocoならではの視点を生み出す源泉となっている。専門的にデザインを学ぶ学生とは全く異なる視点が交わり、新しいアイディアが生まれることもあるという。
「一人では難しいことも、みんなと一緒ならできる。そんな経験がmocoにはたくさんあるんです。それがこの活動の魅力だと思います」
紙媒体の魅力でデジタル全盛時代に挑む
デジタルメディアが主流となる中、あえて紙媒体にこだわる理由を尋ねた。mocoのメンバーは熱く語る。
「紙には特別な魅力があるんです。デジタルはどこでも見れるという利点はありますが、紙を通して情報を得るという体験は、私個人的にとても好きなんです」
さらに、「紙媒体は大切にしたくなるんですよ。1点だけ、1冊だけだからこそ、ずっと手元に置いておきたくなる。そんな価値を持つのが紙の魅力だと思うんです」と、紙媒体ならではの価値を強調した。
制作で大切にする気持ち
mocoの制作プロセスは、チームワークと個々の創造性が融合する場だ。学生が作るからこその重要なマインドを教えてくれた。
「流されず否定せずみたいな。お互い肯定し合うみたいな。なんかちょっとみんなが発言しやすいように丸く進めるみたいなのは学びました。」
特集やコンテンツの決定プロセスについて、「テーマが決まったら、それに沿った特集や小特集、インタビューの対象者をメンバーひとりひとりが考えていきます。そして話し合いを繰り返して、最終的にmocoに載せるものを決めています。」と説明する。
「デザインについては、ラフレイアウトの段階でみんなが参考にするのはそれぞれの好きな雑誌のページだったりします。でも、そこからmocoらしさを出していく。その過程が本当に楽しいんです」と、制作過程の醍醐味を語った。
また、mocoの制作には、メンバーたちの熱意と工夫が詰まっている。例えば、街歩き企画の撮影では、3回に分けてロケハンと撮影を行うという。
「1回目は下見で、実際に歩いてみて気になった看板やお店をメモします。2回目は写真撮影やアポ取りが中心。3回目に実際にモデルさんを呼んで撮影をする、という流れです」
こうした丁寧な準備が、mocoの魅力的なコンテンツを支えている。「大変ですが、この過程自体が楽しいです。街の新しい魅力を発見できる瞬間がたくさんあります」
学生ならではの視点を活かす
mocoの特徴の一つは、学生ならではの視点を大切にしていることだ。「私たちは学生目線でテーマを選び、一冊を作っていきます。学生の声を伝えることが私たちの使命だと考えています」とメンバーは語る。
インタビュー記事では、学生団体を取り上げていることも多い。「読者も学生ですし、同世代の活動を知ることで刺激を受けたり、モチベーションが上がったりするんじゃないかと思っています」
また、京都の文化を反映したコンテンツも特徴的だ。例えば、毎号制作を振り返りつつ銭湯を紹介する湯上がりトークというコーナーがある。「京都って銭湯文化が根付いているんです。そういった地域の特色も、学生の視点から紹介していきたいですね」
課題と挑戦
mocoの今後の課題について尋ねると、「私個人的にmocoをもっと広めたいという思いがあるんです。設置する時に、少し部数が余ってしまうことが最近あって。それをどう改善していくかが課題ですね」と、配布エリアの拡大が課題だと語る。
「たくさんの場所にmocoを設置したいんです。でも学生は時間も限られていますよね。そのバランスを取るのが大変だなと感じることもあります。でも、その苦労を乗り越えることで、私たち自身も成長できているんだと思います」
一冊を手に取ってもらうために
紙媒体を主軸としながらも、デジタル戦略にも力を入れているmoco。「Instagramでmocoを知るきっかけがある人がすごく多くて、SNSの重要性は本当に感じています」と語る。「Pandoというwebメディアにもデジタル版のmocoを投稿しています。それを読んでくれる人が多くて。でも、最終的には紙の冊子を手に取ってほしいんです。デジタルと紙、両方の良さを活かして情報を届けたいと思っています」
未来への展望「5年後、10年後のmoco」
5年後、10年後のmocoについて尋ねると、「今の配布場所は京都中心ですが、他の関西エリア、大阪や兵庫にも展開したいと考えています。まだ十分に実現できていませんが、将来的にはもっと広い地域で読んでいただけるようになれば嬉しいですね」と、配布エリアの拡大への期待を語った。
「ページ数が増えたり、部数が増えたりしたら本当に嬉しいです。mocoを通じて、より多くの学生の声を届けられるようになりたいです」
mocoが目指すもの「ぐんとあがる瞬間をあなたに」
最後に、mocoが目指す姿について尋ねると、「紙媒体という文化を面白いと感じてくれる人が、これからの世代にもたくさんいてほしいんです。そのなかでも特に若者たちに元気を与えられるような存在でありたいですね」
「京都は学生の街です。その中で、mocoが学生文化の一部になれたら本当に嬉しいです。読者の皆さんに刺激を与えながら、私たち自身も成長していける。そうあるといいな」と語った。
おわりに
この取材を通じて、学生フリーマガジンと「moco」の魅力に迫った。デジタル全盛の時代にあえて紙媒体にこだわり、学生の視点から京都の魅力を伝え続けるmoco。その存在は、京都の学生文化を支える重要な一翼を担っているといえるだろう。
これまでの間に、各号のテーマは時代とともに変化し、その時々の学生文化を鮮やかに切り取ってきた。mocoの挑戦は単なる情報発信を超え、時代の空気を形にする文化運動といえるだろう。彼らが紡ぎ出す一枚一枚のページが、京都の学生文化の新たな一章を綴っていくであろうことに期待したい。
Interviewee
フリーペーパー制作団体moco
Mocoメンバーのみなさん
メール:mocofp@gmail.com
活動情報など各種リンク
Instagram
Interview & Text
FASTNER. 代表 早坂虹汰
Instagram
Photos
©️フリーペーパー制作団体moco