自分で事業をすることと値付けの話【京都でゼロから学生起業】

前回の記事で、事業アイデアを考えるところまでは達成しました。やりたい事業を思いついたあなたは、今にも起業したくてうずうずしているかと思います。
はやる気持ちを一旦おさえるために、ここで一度、深呼吸をしておきましょう。まだ1つ、事業をするうえでの重要な工程があるからです。
今回は自分で事業をするうえでの〝値付け〟について詳しくお話していこうと思います。

お金をもらうことを怖がってはいけない

事業を考えるうえで難しいのが〝値付け〟です。私自身、すごくこの過程は苦手です。どれだけ自信のあるものだったとしても、いざ値付けをすると「高すぎるかな?」「こんなにお金をもらっても良いのだろうか……」という思考になってしまいます。また、個人で仕事を始めた当初は、そもそも「お金をもらうことは大丈夫なのか……自分はそんなに価値のあることをできているのだろうか……」という葛藤がありました。
需要と供給〟という言葉はよく使われます。経済学では、市場における商品の価格というのは、需要量を表す需要曲線と、供給量を表す供給曲線の交わるところに一致する、とされています。
供給量が少ない場合、商品の価格は高くなります。もしあなたの商品が高い価格でも売れていくのであれば、あなたは他の人が真似することが難しい、良いものを提供しているのです。反対に、あなたが適切な価格だと思っても売れない場合は、消費者から見て価格と価値が見合っていないわけです。

よく、正月に、「誰がこんなもの買うのだろう……」というような高い福袋が売っていたりします。ですが、毎年ちゃんと売れていきます。売れているということは、「この福袋にはこの価格の価値がある」と判断して購入している人がいるわけです。散髪などでも、「髪を切るなら1,000円程度の床屋で十分」と考える人もいれば「この人に切ってもらいたいし、パーマやカラーもしたい」と1回の美容室に2〜3万円使う人も多くいます。食事もそうです。本もそうです。占いなどもそうです。大多数のモノやサービスにおいて、需要と供給に応じて、価格や質の異なるラインナップがちゃんとあります。

取引は、売り手と買い手が納得していれば成立します。また、買い手もれっきとした大人ですから、売り手側が「こんな高いもの買って大丈夫ですか!??」なんて思うのは失礼です。相手が価値を感じているから購入するわけで、それを否定することは避けましょう。

価格が価値に見合っているかどうかを決めるのはお客様です。ですから、こちらは自信を持って価格を提示しましょう。もし価値が見合ってないと判断された時には、〝売れない〟という結果で返ってきます。値下げするかどうかはその時に考えれば良いのです。

お金をいただくことを怖がらずに、自信を持って値付けをしていきましょう。

相手の中の、〝気持ちの財布〟で考える

ただ、どれだけ良いもので価格と価値が見合っているものだとしても、売れない場合も多くあります。この場合、売り方に原因があるのかもしれません。逆に言えば、同じものでも、売り方を変えるとすごい売上を記録する可能性もあります。

例えば、
共働きの家族のために、献立と食材がセットになったものを、毎週宅配してくれるサービス
があったとしましょう。
このサービスを、「献立を考えるための手間が省けて、さらに買い物に行く必要がなくなります!」という売り文句で売ったとします。

この場合、消費者は、スーパーの食材の価格と比べてこのサービスを判断します。スーパーの食材の価格と比べられるとなかなか高価格はつけられません。さらに言えば、家計の中で〝食費〟はできるだけ削りたいという人が多いです。

このような売り方だと、価格競争に巻き込まれ、こちらの提供する〝献立も考えて、食材を事前に詰め込まれている〟という価値や〝配送してくれる〟という価値に、積極的にお金を払おうと考える人は少なくなってしまいます。
「お金を払うくらいなら自分で献立を考えるし、仕事終わりにスーパーに寄って買い物をすれば良い」と考えてしまうわけです。

そこで、売り文句を変えてみましょう。
「お子様が料理のお手伝いをしやすいように、事前に献立を考え、食材を宅配するサービスです!忙しい両親のために、家事のお手伝いをしたいと考えるお子様の教育にもってこいのサービスなのです!」

この売り文句だと、消費者は〝食費〟として考えるだけでなく、〝教育費〟としても考えます。また、お子様のいる家庭において、多くの場合、食費よりも教育費の方が、心理的にもお金を出すハードルは低いです。
食事にはお金を惜しまない人、恋愛にはお金を惜しまない人、旅行にはお金を惜しまない人、〝推し活〟にはお金を惜しまない人……。人それぞれで、お金を出しやすいカテゴリと節約したいカテゴリは様々です。相手が「これにはお金を出しても良い!」と感じる分野を想像して、価格や売り方を決めていくと良いでしょう。

起業に失敗などない!

さて、いよいよ値付けまで完了した状態で、今にも起業家として走り出すことができそうなところまできました。そんなあなたに、どうしても知っておいてほしい考え方があります。それは、〝仮に失敗をしたとしても、どの起業アイデアにもとてつもない価値がある〟ということです。

事業をやるうえで〝失敗〟はありません。〝失敗は成功のもと〟という言葉がありますが、事業をすることにおいて、この言葉はより一層の重みがあると私は思います。

自分で事業アイデアを考え、売り方を考え、価格を考え、営業の文言を考え、損益を考え、市場や競合を調べ……
と、事業をやろうとすると、とてつもなく沢山のことを自分で考えて取り組むことになります。これらの経験は、座学などには変え難いくらい価値を発揮します。その後に自分で起業家として生きていくにしても、勤め人として生きていくにしても。

また、仕事だけに活きるわけでもありません。売り方や価格設定は、相手の立場になって考えるわけです。ですから、プライベートでのコミュニケーション能力にも良い影響をもたらします。損益を考えることで、お金への深い理解をもたらし、家計への理解が深まります。

さらに自分で事業をしてみる行為は、その事業の成果に関わらず、経験した人にしかわからない視野が身につきます。ですから、失敗することを恐れずに起業をしてほしいのです。

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この記事を書いたライター

愛知県の一般サラリーマン家庭に生まれ育ち、大学から京都に移住する。元々教育に興味のあったことから学習塾でアルバイトを始める。その後、アルバイト先の会社から話をいただき、18歳時で大学を休学して学習塾の教室長を務める。その後、複数の教育系会社の運営補助、コンサルティング等で生計を立てつつ、京都、滋賀、奈良で飲食、補助金などの新規事業の創設に携わっている。専門分野は補助教育、人事採用など。

|BRANCH SCHOOL プロデューサー|学生起業/京都移住/教育