
毎日お世話になっている食器。
素材も、陶器、磁器だけでなく、お椀に代表される漆器、竹製品や木で出来たもの、錫といった金属、ガラス製、プラスチックなど多彩なうつわが日々食卓に上っています。
種類もお皿、お鉢、長皿、角皿といった汎用性高いものから、グラタン皿、お鍋用のとんすい、しょうゆをいれるのぞき、ふた付きの茶碗蒸し用といったその料理専用(でも、とらわれずに他の用途にも使ってくださいね)の食器など、その種類は様々です。
なかでも日本人は、属人器(ぞくじんき)といわれる自分専用のお茶碗、お箸、湯呑み、お箸、マグカップなどを持つ習慣があります。中国や西洋では、お揃いの食器を用意して、皆でシェアして使うので、こうした属人器の文化は、世界的にも珍しいのだそう。江戸時代に使われていた、食事中はお膳として、食後は自身の食器を入れていた箱膳の名残や、うつわを持って食する文化のために、自身の手に合うサイズを選ぶからだといわれています。
皆さんも自分専用のうつわがあると思います。末永くかわいがってあげてください。
今回はそんなうつわと、盛り付ける料理の関係性のお話です。
うつわは料理の着物
時々うつわの販売のお手伝いをしているとお客様に「何を盛ればいいか」と尋ねられます。和食器だからとこだわらず、洋食、中華、スイーツ…何を盛ってもいいんですよ。私もこれまで、色々とコーディネートや、盛り付けたりしてきましたが、和のものに洋をミックスすると、センス良く見えるので、ぜひ和洋織り交ぜた使い方をしてみてください。
ある美食家が残した「うつわは料理の着物」という台詞、本当にその通りだと思います。うつわと料理、どちらか一方が目立ちすぎるのではなく、うまく調和することで、より一層、目から、そしてもちろん口からも美味しく感じられると思います。
これまで、私が盛付けのお仕事をしてきた中で気付いた、ご家庭でも取り入れられるポイントをご紹介しましょう。
いつもよりグレードアップ盛付けのコツ
余白が大切
家で作ったものにしろ、買ってきたお惣菜にしろ、料理をお皿や鉢に盛り付ける際、一回り大きい器に盛付けて余白を多めに取ると、とても華やかになります。

斜め45度から見て盛る
レシピ本の写真は、座ったときの料理の見え方を意識して、斜め45度から見下ろした構図が多いです。単品なら山高に、盛り合わせる場合は、奥に背の高いもの、手前に低いものを盛るなど、高さを意識します。
小分けにしたり、まとめたり
普段、ひと盛りにしているものを、小分けにして盛り付けるだけで、随分印象が変わります。小鉢に盛っているものを、大皿やトレイに乗せてまとめても変化が出ます。この時、同じ色合いが隣同士にならないように気をつけます。色の差がないときは、一方を小鉢に盛ったり、上に添え物を足すなどして、配色に気をつけます。
うつわは食材の反対色を
つい、無難な白い器を選びがちですが、メイン食材の反対の色、白の食材なら黒、黄色なら青、緑なら赤や茶色といったコントラスト大きい色を選ぶと、センス良く見えます。また、夏はガラス、冬は厚手の器など季節のテイストを加えると、さらに仕上がりがアップ。悩んだら、染付の器。白地+青の絵が描かれた器は、どんな食材の色も万能に対応してくれます。

四角は丸に、丸は四角に
食材の形もお皿を選ぶのに重要なポイント。四角く白い豆腐を、四角と丸にそして、白と黒のお皿に盛ると、見栄えが随分違います。
このようにお皿の色形によって、食卓の雰囲気も変わります。定番のお料理も、違う形のお皿に盛ってみるとまた新鮮に感じると思います。

植物の力を借りよう
料理の下に敷いたり、横に添えたりする飾りの植物。例えば、下に敷く笹の葉、横に添える南天の葉、春なら桜の枝、夏なら青楓など、控えめにそっと添えるだけで、ぐっとグレードが上がり、プロのような仕上がりになります。

しかし、どんな植物を飾っても良いわけではありません。例えば、紫陽花の花葉など毒をもつ植物もあるので、必ず調べてから使いましょう。また、添え物といわれる、料理の上に載せる食材も活用。ネギやパセリ、ハーブ、木の芽の葉、レモン、ゆず皮など、足りない色を補ってくれて、かつ高さも出してくれる名脇役です。
おきにのうつわ流、盛り付け方
とうがらしの炊いたん
お皿…白い厚手の片口鉢
食材…万願寺とうがらし、ちりめんじゃこ
ポイント…盛付けの基本である山高でこんもりと盛り付けています。一緒に炊いたちりめんじゃこを上に乗せています

海老とタラの芽の天ぷら
お皿…青い釉薬の丸皿
食材…スーパーで買ってきたお惣菜の天ぷら
ポイント…黄色い衣と反対色の青のお皿をセレクト。お懐紙を敷き、下に寝かしたタラの芽に、もたれかかるように盛りました

初午のいなり寿司
お皿…粉引長角皿
食材…スーパーで買ったいなり寿司(白砂糖・黒砂糖)
ポイント…色の違うお揚げさんのいなり寿司だったので、交互に並べてリズム感を出しました。南天の葉を添えて

かしわの南蛮漬け
お皿…山水画が描かれた染付の皿
食材…鶏肉・玉ねぎ・しめじ・パプリカ・にんじん・オレンジ
ポイント…カラフルな素材なので、何でも似合う染付のお皿をチョイス。まんべんなく色が見えるようにします

ほんの一例ですが、盛付け例をご紹介しました。
今日は余裕があるから盛り付けに凝ってみようかな…そんな日からチャレンジしてみてください。