
京都市での定住移住について日々考えているKyoto Love. Kyoto編集部ですが、先日「京都府京丹後市」に魅力を感じ、移住して子育てをされている方と出会いました。京都市と他都市とを比べることで、それぞれの良さがもっと見えてくるかもしれません。今回は、京丹後市を愛してやまないというBさんに、移住にいたるまでのお話をお伺いしました!


なぜ京丹後市に移住したのか

Bさんのご出身はどちらでしょうか?



奈良県奈良市です。
京都の大学を出られたとお聞きしています。大学生活はいかがでしたか?



はい。幼稚園の先生になりたくて、京都の大学に入りました。一人暮らしをしてみたくて、京都に来たんです。伏見区に寮がありまして、先輩と合部屋でした。めちゃめちゃ古い木造の建物の寮で、月の部屋代が700円とか。
家賃が700円!?



水道とか光熱費関係は住んでる人数で割って、全部で2万ちょっとぐらいかな。今では考えられないくらい格安ですが、ここで生活してました。
京都は大学のまちで、たくさんの学生が地元を離れて生活している場所だと思うんですけど、何か大学生ならではのエピソードはございますか?



鴨川や、三条や四条に自転車で行けたというのは、今になると良かったなって思います。あと、寮には男子寮と女子寮があって、いろんなイベントをするんですよ。たとえば毎年4回生の先輩がストーリーを考えて、新入生の1回生が演じるっていうイベントで、「寮祭」という劇をしていました。
え!入学してすぐ演者になるんですか、緊張しそう!!



大道具や衣装もしっかり作るんですよ。みんなで徹夜しながら、手作りでひとつの劇を作るっていうのが、今思うと青春やったなーって…
青春そのものですね!大学生活は京都市内で過ごされて、就職はどうされたんですか?



京丹後市で就職しました。
京都から地元に戻られるとか、逆に大阪や東京などの都会に出られるのはよく聞くんですが、京丹後市に就職しようと思われたきっかけは何なのでしょうか。



寮の先輩が、京丹後市で田植えや稲刈りのボランティアに参加されていて、一緒に行かないかと誘ってもらったんです。
それが京丹後市との出会いなんですね!



もともと自然が好きだったんで、是非やってみたいと思ったんです。3時間ほどかけてみんなでバスに揺られて、断崖絶壁の道を通り、京丹後市のさらに北部の袖志(そでし)というところに行きました。


この写真、絶景ですね!海と田んぼがすぐ近くに!



棚田で手刈りや手植えをするという地域活性化のためのイベントだったんですけど、初めて行ったのに、そこの景色がすごく好きになったんです。海が見えて、振り返れば山があり。ジブリの世界に入ったようで、すごく良かった…
素足で田んぼの泥の中に入る感覚や、おばあちゃんたちの優しい笑顔とか。「よー来たねー」って言ってもらえることがすごく嬉しくて、楽しかったんです。それからは毎年、春と秋と田植え・稲刈りに行くようになっちゃいました。
えぇー!運命的な出会いだったんですね。





もう、ハマっちゃってハマっちゃって!卒業時に学校の先生になるかどうしようかって悩んで。でも、すぐ先生になったら社会人経験をしてないので、教科書以外に子供に教えられることが少ないと思ったんです。
袖志の棚田でおじいちゃんやおばあちゃんに「よう来てくれた、ありがとう」って言ってもらえたことがすごい嬉しかったことを思い出して、人の役に立つ仕事がしたいなって思い、京丹後市で働くことにしました。
感動で、言葉が出てきません。
心折れそうになる、冬の厳しさ
Bさんが京丹後市での暮らしで、得たものは何ですか?



移住して10年くらいなんですけど、独身で、新卒でやってきて。人も、食べ物も、もうすべてが新しい出会いでした。海がすぐそこにあるんで、魚は特においしいなって。
食べ物、すごく気になります!



旦那さんには棚田で出会ったんですよ。京丹後市に来たことでパートナーに出会えて、人とのつながりが得られたのは良かったなってすごく思います。
おふたりが出会えて良かったです。ちなみに、想像と違ったことはありますか?



一番に思うのは、雪です。
奈良は全然降らなかったので、積もったらすごいな~みたいなレベルでした。でも、京丹後市では、普通に膝ぐらいまで雪が積もるんです。長靴の中に雪が入るんですよ!ここは雪国なんやと、1年目に思い知りました。
京丹後市ってそんなに積もるんですか?日本海が近いから??





しかも雪が降ってもみんな普通に働きに行くんですよ。わたしは雪があると車の運転も怖かったです。朝は雪かきからスタートなんですけど、みんなは朝の5時頃から雪かきをしてるんですよ。雪が降るのが当たり前の生活に驚きました。
日常、なんですね。



冬には晴れ間が全然ないんです。ずっとどんより、みたいな天気でだいぶしんどかったです。人は優しいし、食べ物も美味しいけど、雪にはちょっとかなわないですね。
独身でいた時は除雪のしんどさで心が折れそうになったり、晴れ間が見えない天気が一日中続くのは辛かった記憶があって、これは本当に想像と違いましたね。
今は平気になったんでしょうか?



子どもができて少し変わりました。子どもは雪が降ったら、雪だるまを作ろうと言ってすごく喜ぶんです。せっかくなので、私も冬を好きになれたらいいなっていう気持ちはあります。
地域の人とのつながり、おさがり交換会
先ほど「人とのつながりを得られた」とおっしゃっていましたが、ふつうに暮らしていて自然と得られるものでしょうか?それとも意図的にいろんなところに参加して出会われているんですか?



独身の頃はだいぶあちこち出回って、アクティブに人との出会いを増やそうとしたこともあって、多くの移住者の方とつながれたと思っています。その時出会った方と、子供服のおさがり交換会をしたりもしてるんですよ。
いいですね~



毎回新しい服を買うのもいいんですけど、すぐ汚れるし、子どもはすぐ大きくなるし。移住者のお一人の方とおさがり交換会ができないかなっていう話になったとき、ぜひしようと言ってくれたんです。そして場所を借りて、インスタで開催告知をしました。
えっ、主催されたんですか!?



そうなんです。インスタを見たお母さん達がたくさん来てくれて。会場に服を保管して頂いているのですが、上手く服の循環ができないか検討しています。自分がしたいなって思ったことを誰かに言うと、それが実現できて、人と繋がっててよかったなって思いました。


京丹後市が素晴らしいのはもちろんですが、Bさんの行動力がすごいですよね。Bさんが頑張って動いた分、京丹後市がそれを返してくれているみたいな感じがありますよね。いい意味でふつうの人ではないというか、ちゃんと自分で求めて行動できる人なんだなということがよく分かりました。
いま、3人のお子さんがいらっしゃるということなんですけど、助かっている子育て支援などはありますか?



京丹後市で、グループチャットのラインがありますね。お母さんたちが自由に入るグループラインなんですけど、子供の遊び場や、こういうイベントがあるよっていうのを、参加している皆さんがいろいろ共有してくれるんです。どこでお祭りがあるだとか、今日何時からここの公民館で子供と一緒に遊べるよ、とか毎日のように。
めっちゃいいですね!



すごく助かってます。今のところ590人くらい参加されてますね。あとは「ゆるりら」っていう民間のおばちゃんたちが作ってる団体があります。子育てを終えられたおばちゃんたちが、子育て頑張っている若いお母さんたちを応援するために、公民館とかを開けてお母さんと赤ちゃんおいでと。そういう場所づくりをしてくれているんです。
そういう場があることで、他のお母さんと話し合ったりして息抜きもできますし、すごく有難いですね。



京丹後市は広いんですけど、手の届きにくいかゆいところにちゃんとサービスがある感じがします。
あこがれの古民家ぐらし
古民家にお住まいということですが、リノベーションをして住まれてるんですか?



そうです。結婚して古民家に住もうということになり、夫婦でリノベしました。床を剝がしたり張ったりとか。壁に断熱材も入れたり、漆喰を塗ったりもしました。
古民家ということは、結構広いんですか?



平屋です、築150年?くらいの。たぶんお蚕さんを飼ってた家で、屋根や天井がすごく高いんですよ。当時は2階があって、家の中で飼っていたみたいですね。桑の葉っぱがカサカサいう中でみんな下に寝てるような。さすがにお蚕さんがいる下で眠れる自信はないですが、元々古い家に興味があったんです。


トトロに出てくるお家みたいな感じですもんね。



リノベ以外にも、育休の間に何かできることないかなって考えて。子どもが一緒にいるし、家にいないといけない。でも何か自分の好きなことをしたいと考えて。
その制限の中で、はじめたのが野菜づくりなんです。家の敷地内でさつまいもやピーマンなどを育てています。実際に食べ物を育てる過程を身近で見られるので、子どもの食育にもなりますし、収穫したては美味しいですよ。
素敵な暮らしですね〜!
エリアごとの魅力
京丹後市のエリアごとの特長を教えてください。



京丹後市には6つの町があって、20年くらい前に合併したんです。わたしはちょっと、地元の人の目線とは違うかもしれませんが…まず峰山町、大宮町は大きなスーパーがあって、栄えてます。若者も多いし、新築の家も建ってますね。
弥栄(やさか)町は、米どころで、山に囲まれている場所です。
久美浜町は果物が盛んですよ。メロン、ぶどう、スイカ、柿、いちじくなど大体のものは売っています。夏場は特に旬のフルーツだらけですごいです。
網野町は、夏に浅茂川水無月祭り(通称かわっそさん)というお祭りがあって、神輿が町を回って、最後に海上を神輿が渡る、とても面白いお祭りがあります。夜には海の上に上がる迫力満点の花火も最高です!
丹後町は、人の手がそれほど入っておらず、自然がそのままの用な町です。わたしが移住するきっかけになった、袖志の棚田があるところですね。


普段は、やっぱり車移動ですか?



ほとんど車ですね。どこに行くにも、車以外の交通手段は不便なんです。歩道が整備されてない道が多くて。ドアtoドアで運動する機会がない上に、ご飯も美味しいからどんどん太っていっちゃう。(笑)畑仕事でなんとか運動量を確保しています。
美味しいものがたくさんあるというのは、素材が美味しいのか、料理が美味しいのかどちらですか?



どちらも美味しいですが、素材がとても美味しいです。米どころもあるので、やっぱりお米は美味しいなって思いますし、魚も果物も。何でも食材が揃うので、それを使った美味しい店も多いんですよ。素材を生かした料理屋さんもすごく多くて、どこも抜群ですね。日本酒も有名なんですよ。
京丹後市への移住の理由やその魅力をたくさんお聞きできました!Bさん、有難うございます。
京丹後市に移住するということ
取材させていただいたBさんは想像以上にすごい方でした。移住には楽しさも大変さもあるものですが、自分で道を切り開いていこうとする気持ちを強く持たれていましたね。自然、おいしい食材、古民家など、京丹後市独自の魅力を愛しておられる方が移住されたのは、Bさんにとってもその地域にとっても幸せなことではないでしょうか。
京都市にも、このような熱い気持ちで移住してくださる方が増えていくことを願います。










