えっ!京都に動物園?

京都市動物園の園長をしています片山博昭です。紙面をお借りして、今回は動物園のお話とアジアゾウの飼育の楽しいお話を紹介します。

「えっ、京都に動物園があるの?」と他都市にお住まいの方は意外に思われる方もいらっしゃるでしょう。京都には有名な社寺仏閣をはじめ、観光資源が豊富ですので無理もないと思います。

ところが、日本全国で91の動物園がある中、実は京都市動物園は老舗中の老舗、明治36年(1903)に作られた、日本で2番目に古い動物園なのです。そう、1番目は当時の宮内省…つまり国が作った上野動物園。

京都では、「明治」に時代が変わると同時に、江戸(東京)に皇室が移られ、人口減少・経済の衰退という厳しい時代になりました。京都の復興をなんとかせねばと、約6千人の市民の皆様から、文化教育施設として「京都に動物園を!」と多額の寄付金をいただいて、言わば市民の手による日本で最初の動物園が作られたのです。

近くて楽しい動物園

京都市動物園は、京都市左京区岡崎に位置し、市街地に近い都市型動物園です。また、周囲には京都市京セラ美術館、平安神宮、ロームシアター京都など文化施設が集まる文化ゾーンでもあります。

平成27年(2015)にリニューアル整備が終わり、「近くて楽しい動物園」に生まれ変わりました。

ラオスからゾウがやってきた!

京都市動物園では、現在、5頭のアジアゾウを飼育しています。

右側は昭和54年(1979)にマレーシアから来園した美都で推定49歳、左側は平成26年(2014)にラオスから来園した4頭のゾウです。

4頭のゾウは、京都市動物園の開園110周年及びラオスとの国交樹立60周年を記念して寄贈を受けました。平成25年(2014)来園時3歳~6歳の子ゾウでした。

この4頭の写真は、プールで遊んでいる最中、ちょっと一息のポーズの写真です。

野生下でもアジアゾウは水遊びが大好きで、京都市動物園のゾウプールは知る人ぞ知る名物となりつつあります。プールでは、沈めっこ合いしたり、デングリ返りしたりとても楽しそうに遊んでいます。

皆さんもご存じのように、ゾウは賢くて知性も高く、感情も豊かな動物です。特に子どものゾウは行動も活発で、見ている私たちを飽きさせることはありません。

飼育の様子とゾウのイベント

寝室の上部にはカゴがあり、ここに夕方、餌の一部を入れます。

ゾウは夕方から翌朝まで、長い時間を寝室で過ごします。寝室での時間を退屈させないために様々な工夫を凝らします。寝室の壁の上に設置したカゴの下から、思いっきり伸ばした鼻で餌をちょっとずつ引き抜いて食べるわけですが、あえて少し取りにくくすることで採食時間を伸ばしているのです。

野性下での動物は、起きている時間の多くを、集中して狩りをする時間や、餌を探し回る時間として過ごしていることから、京都市動物園のアジアゾウの寝室でも、このような工夫をしています。

また、広く来園者にゾウの魅力を伝えるためのイベントも開催しています。

夏場には、プールに入り豪快に大好物のスイカを一口で食べる姿を来園者の皆様にご覧いただいています。3年前から始めたイベントですが、大人気のイベントになりました。

アジアゾウは熱帯地方の動物ですが、さすがに京都の夏は彼らですら厳しいものがあります。そこで、氷のプレゼントのイベント。

氷はスポーツドリンクを薄めたものに果物を入れて凍らせてあるので、何か美味しそうなものが…と皆こぞって食べようとします。

ゾウは鼻や足をとても器用に使って食べ物を掴んで頬張るのですが、硬くてツルツルすべる氷は、なかなか思うように割れません。しかし、彼らは長い時間、さほどイライラもせずに楽しんでくれています。

冬場には普段は琵琶湖の水をためているプールに、隣接の熱帯動物館で太陽熱やボイラーで沸かしているお湯を注いで「ゾウ温泉」を開催しています。

とても寒い京都の冬でも、水遊びをして楽しむのですが、ホースのお湯は、ゾウ達にとってとても気持ちよいようで、喜んでくれます。

ゾウの繁殖プロジェクトと健康診断

京都市動物園とアジアゾウをいただいたラオス人民民主共和国の環境省との間で「ゾウの繁殖プロジェクト」を立ち上げ、ゾウの飼育・健康管理・繁殖技術の向上を図るため、ゾウたちの発達、行動や生理指標など、繁殖に関連する日常の基礎データを収集して共同研究を実施しています。

この写真は、2か月に1度の血液検査をスムーズに行うために、地道に日常的にトレーニングを行っている様子です。

血液検査のための注射は、耳に注射針を刺します。このためトレーニングは、針を刺す真似を繰り返すことで、実際に採血するときの恐怖心を取り除いてあげることなのです。

また、足のケア(診察や爪切り)のために4本の足を順番に上げさせる訓練だったり…。

つまり、健康診断のための受診動作を、ゾウが自ら協力することのトレーニングなのです。これをハズバンダリートレーニングと呼びます。


そして、健康管理の基礎、定期的な体重測定は最も大切な事柄です。特に、夏美ブンニュンは上手に体重計に乗ってくれます。

写真のように、エサを食べながらご機嫌に測定中です。

この日の体重は約1900kgでした。ゾウの体重計は、400万円もする高価な物です。元々はトラックの過積載の違反を量る「トラックスケール」、慈善団体の「京都ライオンズクラブ」からご寄付いただきました。

ゾウの健康管理をはじめ動物園の運営には、多くの方々の善意で支えられています。このように、日々の健康管理のデータや、繁殖に成功するまでの貴重な記録をデータ化して、近い将来、ラオス政府やラオス大学に提供することで、ゾウの生息地ラオスでの繁殖に京都市動物園が寄与することとしています。

京都には、とても素敵な動物園があります。いきいきした動物の様子に癒されますよ。どうぞ京都市動物園にお越しください!

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この記事を書いたKLKライター

京都市動物園 第31代 園長
片山 博昭

<略歴>
右京区副区長
建設局水と緑環境部 緑政課長
右京区まちづくり推進課長

<社会活動歴など>
技術士【都市及び地方計画】
日本造園学会 企画委員
日本造園修景協会 京都府支部長
生物多様性、まちづくり、地域活性化などの講演活動

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<略歴>
右京区副区長
建設局水と緑環境部 緑政課長
右京区まちづくり推進課長

<社会活動歴など>
技術士【都市及び地方計画】
日本造園学会 企画委員
日本造園修景協会 京都府支部長
生物多様性、まちづくり、地域活性化などの講演活動

|京都市動物園 第31代 園長|動物園/象/アジアゾウ

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