昔から京都人に信仰されたお地蔵さん

お盆が過ぎると、夏もテンポを上げて走り出していきます。暦からいくとお盆も立秋をすぎてとうに秋。目にははっきりとは見えへんのやけど、吹く風に秋を感じる…とどこかの歌にあったような時期を迎えているのです。

そんなお盆過ぎの京都で行われるのが「地蔵盆」。「~盆」とは名前が付いていますがお盆と直接つながったものではなく、そうはいっても関連も無くはないかなというようなあいまいな関係を持っています。ただ言えるのは、これは子どもたちのため、町内のための行事であるということでしょうか。

明治になるまで、地蔵盆は地蔵祭や地蔵会と言われていました。いつから始まったか明確な記録はありませんが、江戸時代初期には行われていたという記録があるそうです。この地蔵祭は一説によると子どもの遊びから始まり習慣化したものやったらしいです。早く亡くなった子供は賽の河原で石積みをすると言われていますが、そこに鬼がそれを壊しに来て子どもを苦しめます。そんな時に子どもを救ってくれるのがお地蔵さん。その信仰の歴史は古く、正倉院にはすでにお地蔵さんについてのお経があったそうです。中世では室町幕府を開いた足利尊氏も信仰が深かったということで、一般の民衆へも信仰が広まっていきました。お地蔵さんには、危機に瀕している人の代わりに矢を受けたり噛まれたり身代わりまでしてくれる話(注1)が多く、子どもだけではなくて地獄や苦しみの世界に堕ちた人々を救う仏さまとしてとても身近な仏様やったことがわかります。

そんなことで始まった地蔵盆、今も京都の町にはお地蔵さんの像が五千(注2)とも一万(注3)とも言われています。平成25年の京都市の調査によると調査数の約8割の町内が今も地蔵盆を行っているという結果が出ているので、市内の以下にたくさんのお地蔵さんが町内の人たちによって大事にされていることがわかります。

京都人度チェック① 地蔵盆を行う日は?

さて、町(ちょう)にとっても地蔵盆と言うのは年間行事のメインイベントなので、準備は年度初めから行われます。まずは今年地蔵盆はいつやるかを決めます。やるかやらへんかは問題ではないのですよ。やるに決まってますし。でもお子さんのやはらへんお町内は悩ましいところですね。ここが近年のまず大きな一つ目の問題ではあります。まぁとにかくやるということにして、日にちなんですがこれは昔は決まってました。まずこれが1つ目の京都人度チェックになりますかね。

では最初の京都人度チェックです。

①地蔵盆を行う日はいつですか?

それぞれの仏さんには縁日(ご縁のある日)というのがあって、地蔵菩薩の場合は24日やそうです。それで前日と含めて23,24日の2日間するというのがもともとの開催日でした。昔は地蔵盆の日に皆お休みしたので仕事とかち合うことがなかったんですが、今のサラリーマンはそういうわけにはいきません。それで24日が来る前のできるだけ近い土日に設定されるようになりました。今年なら21・22日が一番多いのやないでしょうか。この日にち変更は‘90年代以降に目立つようになってきたようです。バブル時代を経て、みんなの意識が何か変わったんでしょうかね。母から聞いたんですが、これ、本来の日より後やったらあかんらしいです。そういうたら法事でも命日より前にやるのが一般的なので、それとおんなじことなのかなと思います。

▲地蔵盆の開催日(四角)とお地蔵さん・大日さんの縁日(丸)

▲地蔵盆の開催日(四角)とお地蔵さん・大日さんの縁日(丸)

また、みんなが忙しくなって2日間もできひんようになってきたので、1日だけ行うところがかなり多くなってきました。子どもにとってはものすごく残念なところですが、親も忙しい中必死で時間を作ってやっている町内も多いので、やれるだけでもよしとせんとあかんかもしれませんね。それから、京都に住んでる人の子どもが京都から離れている場合、お盆休みしか帰れへんことが多いですから、最近はお盆の間に地蔵盆をする町内も増えてきました。お盆なのか地蔵盆なのかわからんようになってきてますが、帰省する人にとっては便利かもしれません。私の場合はお盆が忙しいので、地蔵盆と一緒やとちょっと困りますね。 また、京都の小学校は最近夏休みが短くなって、今までやってきた日取りやと終わったらすぐに学校が始まって大変なので早める場合も多いそうです。

それから地蔵盆の日にちにはもう一つのパターンがあります。地蔵盆といいながら「大日さん」をお祀りしている町内の場合です。「大日さん」とは「大日如来」さんのことなのですが、正直「大日さん」はどこが「お地蔵さん」と違うかようわかりません。みんな石仏で、お顔がかなり風化してる方もやはったりするものですからねぇ。まぁ違いをあえて言うならば、「お地蔵さん」はみんなでお守りしてるのに対し、「大日さん」は特定の個人が自宅の敷地内でお祀りしていることが多いです。そして「大日さんをお守りしているとその家は繁盛する」と言われ、反対に「おろそかにするとその家は没落する」というスーパーパワーを持った仏さんなのです。なので、この「大日さん」というのは本来の「大日如来」さんとはちょっと違うような気がします。たしかに大日如来さんも強い仏さんですが、特定の家の運に関わってるところなどをみると民間信仰の部類に入ってるように思えます。

ちなみに、大日さんをお祀りする地蔵盆は少し日が違うんですよ。お地蔵さんの縁日は24日でしたが大日如来さんは28日、よってお祀りする日は28日になるまでの一番近い土日のどちらか、というのがここ10年ぐらい前までの決め方となっていました。なので大体お地蔵さんをお祀りする場合の地蔵盆の1週間後になることが多いです。ところが、最近は夏休みが25日ごろ終わってしまうのでそれまでにはやらんとあかんようになり、お地蔵さんをお祀りしている町内と同じ日に行うことが多くなってきているのです。(注4)学校の都合で地蔵盆の意味合いが変えられるのは残念ですが、子どもあっての地蔵盆なのでこれもご時世、仕方のない事なんでしょうね。

京都人度チェック② 地蔵盆ですることは?

さて日が決まったら次は中身をどうするかを決めんとあきません。前準備の話し合いは、うちの町内では7月の初めごろに行います。町会長・副会長・会計の三役が大体のあらましを決めて、総会を開いて町内の人に言うか、回覧を回して了承を得るという段取りになります。

ではこの中身、地蔵盆では実際にどんなことをするのでしょうか?これをチェックにしましょうか。

②地蔵盆で行うことを並べてみてください。

これは地蔵盆をやっているお町内の方には簡単ですね。見たことがある方にもわかるかな?はじめに、当日「以前」にすることをみてみましょう。

まずは子どもがすることです。

1)お化粧

子どもが自分にするのやありません。お地蔵さんにお化粧するんですよ。地蔵盆前になったらお地蔵さんを祠から出して、きれいに洗ったあとに絵具やポスターカラーで色を付けます。子どもらはとっても楽しそう。いや大人でも面白いと思いますよ。石仏さんをお地蔵さんらしくするためにお化粧したという説(注5)もあるそうですが、とにかく色鮮やかに塗りつぶします。場所によっては友禅や染色の職人さんが描かはるところもあります。実際に見たことありますが、本職さんなのでそれはきれいなお顔になるんですよ。

▲お地蔵さんのお化粧

▲お地蔵さんのお化粧

2)行灯描き

これをやったはるお町内も随分減りました。大きい行灯と小さいのもあります。大きい方は私の実家の町内でも作りましたが、長さが3m以上もあったでしょうか、地蔵盆中、道を挟んだ両側の家にロープをくくりつけて道路の上に吊るしました。その行灯に子どもたちがその時代に流行っているものを描いていくのですが、その作業も楽しいし吊るされているのを見るのも嬉しかったですね。そしてさらに楽しいのは終わったあと、みんなで手や足でその行灯を破ること!夢中になって破ってました。子どものストレス解消にもなってたような。小さな行灯はそれぞれのお家の玄関横に飾るもので、すでに私の時代でもかなり少なくなってました。絵を前に描き、横には「子供中」って書くんですよ。「町内の子ども達みんな・一同」って意味ですかね。あ、もちろんどの絵も子どもだけでは収拾がつかんようになるので、大人がちゃんとお手伝いします。

次に大人がすることです。

1)おやつ・福引の景品の予約・買い出し

おやつや福引の景品は、事前に予約注文してギリギリにもらいに行きます。人数を間違えたら大変なので、ここはしっかりするところです。

2)お供えの準備

お供えはお花、ほおずきや押し菓子(砂糖で代用するところも)、夏の野菜(きゅうり・さつまいも・なんばなど)と果物などのお盛物を用意しておきます。ほおずきはお地蔵さんの提灯ということで、ほとんどの町内でお供えされています。お盛物はお盆のときのと似てますね。お地蔵さんへのお供えも大事なので買い忘れのないように気を付けます。

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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

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