「暑い!」
年々言う回数が増えてるこの言葉。近年は、異常な暑さが6月末から始まる年もあり、9月にはバテバテになったはる方も多いのと違いますか?それでもお日さんは確実に傾いて差し込むようになり、暑いながらも見上げる空に秋を感じることができます。そんな季節の移り変わりの中、9月早々やってくる節句がありますが、ご存じですか?

それは9月9日の「重陽の節句」。ご存じの方はもちろんお有りやと思いますが、なかには全く聞いたことがないという方も結構おられます。おんなじ節句でも3月3日や5月5日を知らん人はほぼ無いですが、なんででしょうね?

この疑問を解く前に、まずは「重陽の節句」についてご説明しときましょうね。「重陽の節句」の「重陽」の意味は、「陽が重なる」ということ。陰陽五行の考え方によると、偶数は「陰」の縁起の悪い数、奇数は「陽」の縁起の良い数となります。1、3、5、7も奇数で陽が重なっているのですが、9は特にその中でも一桁で一番大きな数であるため、9が重なった9月9日を「重陽」としています。奇数は縁起が良いのですが、それが重なると偶数となることから、この日には厄払いをせんとあかんという考え方もあります(注1)。どちらにしても、「節句」は季節の節目を表していますので、9月9日も大きな季節の節目となっているわけです。

さて、ではまず「重陽の節句」について、基本的なチェックでお尋ねしましょう。

京都人度チェック 「重陽の節句」はどんな日? また何をする日でしょうか?

まずは「どんな日」かを見てみましょう。一般的にはこの日、邪気を避け延命長寿を願う日とされています。後漢の時代より中国で行われていた行事が日本に伝わったのが行事のおこりです。

中国の古い年中行事記「荊楚歳時記」には、重陽の節句の起源についてこんなふうに書かれています。後漢のころというのでもう2000年ほど前の話。ある日、道教を学んでいる人が先生にこう言われやはったんです。「九月九日、君には災難が来る。茱萸(しゅゆ)の種を入れた袋を身に着けて、山に登って菊酒を飲みなさい。そうすれば災難から逃れられる。」と。そのおかげでその人と家族は無事やったのですが、家に帰ってみると飼っていた動物がすべて死んでいたということでした。茱萸袋を身に着ける、山に登る、菊酒を飲むという3つの行動の関連性はわかりませんが、なんにせよこれが行事の起源となりました。

 

長寿と菊の関係を語る「菊慈童」のお話

重陽の節句が中国から日本に伝わったのが平安時代。宮中ではそれを「重陽の節会」として行事を行ったそうです。その行事には菊の花に関わることが多いのですが、それは重陽の節句の起源よりもさらに昔になる中国のお話が基となっています。

お能を見やはる方はようご存じかもしれませんが、これは能の「菊慈童(または枕慈童)」という曲で伝わってきています。お話の時代は紀元前1000年ごろ、今から3000年ほど前のことです。そのころ中国には周という国がありました。周を治める穆王(ぼくおう)に寵愛された慈童という子どもが、ある日王様の枕をまたいでしまわはったんです。それはとても重い罪やったんですね。可愛がられてた子どもでもそれはあかんことで、遠い山に流罪となりました。可哀そうに思わはった穆王は、枕に法華経の一部を書いて常に唱えるように渡さはりました。慈童はそれを菊の葉に書き留めたらその葉に露がたまり、それを飲むと若い姿のまま700才も生き続けやはった、ということでした。菊のおかげでもう信じられへんほどの長生きができたというお話なんですね。

また菊というのは、霜にあたっても丈夫であることや薬にもなったことから延命長寿のイメージを持たれ、昔から中国では重陽の節句には菊が必ず使われてきたのやそうです。

 

重陽の節句は「何をする」の?

では、次は重陽の節句は「何をする日」なのか説明していきましょう。
中国ではさまざまな行事がある「重陽の節句」ですが、日本にもいろんな行事が伝えられ、また日本独自の行事も生まれました。実際かなりたくさんの行事がありますが、その中でもまず、菊に関わる行事をご紹介しますね。

 

①菊の詩(漢詩)を詠む

1つ目は現代ではちょっと難しいことですが、菊を見ながら漢詩を作るという行事です。たとえば中国の有名な詩人の白居易さんとか王維さんとかが、重陽の節句の宴で菊にちなんだ詩を詠んだはります。日本でも嵯峨天皇が神泉苑に行幸されて漢詩を詠まはるのが恒例やったそうですよ(注2)。

 

②菊を愛でる

2番目は菊の鑑賞ですが、これは今でも行われていますね。ポイントは「高貴なイメージ」を楽しむということ。今も菊を盆栽や植木鉢で育てている人は多いですが、大きな菊の花は優雅で、私も見るのが大好きです。またここでちょっと注目したいのは、「重陽の節句」と「菊の咲く時期」の関係なんですが、あとでもう一度出てくるので頭の片隅に留めといてくださいね。

しかし菊の花を見るだけでは、今の若い人やったら「面白くな~い!」って思わはるかもしれんので、次はこんなちょっと変わった行事も紹介しときましょうね。
 

③菊の花に被綿(きせわた)をする

「被綿」、あんまり聞いたことない言葉ですね。これは、菊の花に綿を乗せることなんです。なんでそんなことをするのか?夜、花に降りた露を綿にしみこませ、翌朝それで身体を拭くためにするのです。これを行うと不老長寿が得られるという行事が宮中であったということです。ただ、これを一般人がしようと思ったら綿を乗せる大きな、あるいはたくさんの菊の花がないとあかんなぁ、と気持ちが「今では無理無理!」のほうに傾いてしまいます。そやけど、以前上京区役所で被綿の菊の展示があったんですが、美しい白・赤・黄色の綿を乗せた菊の花を見て思いましたね。花と綿の色合いや美しさを楽しみたいだけやったら、庭に植えるような大掛かりなことしなくても、盆栽や植木鉢の菊でも十分できるのとちゃう?って。実際近世の宮中で行われていたときは、天皇さんがお住まいになっている御殿の欄干に菊を結わえ付けたそうなので(注3)、案外似たものになりそうです。

▲上京区役所ロビーにて展示された被綿の菊。

▲上京区役所ロビーにて展示された被綿の菊。

▲蕊を表す色違いの綿が可愛らしい。

▲蕊を表す色違いの綿が可愛らしい。

しかし「もっと楽しめることしたいなぁ」という方のために、飲食の行事はどうでしょうか。

 

④菊酒や菊花茶を飲む

菊花茶って飲まはったことあります?私は実はいっぺんも無いのですが、これを重陽の節句に飲むのやそうです。菊花茶はビタミン・ミネラル・ポリフェノールを多く含み、ネットで拾い上げただけでも消炎・眼精疲労・抗菌作用など10以上もの効能があるというお茶で、これ聞くと使わんと損な気がします。元祖中国では普段使いされているそうで、病気予防・美肌・アンチエイジングとして飲んだはるようですね(注4)。これは老若男女興味のあることですよ!そやけど、漢方薬のように薬効があれば副作用もあるもんなので、ご自分の体質をみながら飲んでくださいね(注5)。
菊酒も菊花茶と同じように飲まれるのですが、こちらは生のお花をまるごとや花びらをちぎったりして入れたようです。今は食用菊の花びらが使われることが多く、薬効というより気分で味わうのがいいような気がしますね。インスタ映えするのはこちらかな?

▲おしゃれな菊酒♪

▲おしゃれな菊酒♪

▲菊茶は乾燥した菊の花を抽出します

▲菊茶は乾燥した菊の花を抽出します

菊関係以外の行事もご紹介

さて、ここまでは菊にまつわる行事でしたが、ここからはそれ以外の行事について説明していきましょう。ごく普通の「やってもええかな」というものから、「こんなことするの?!」レベルのものまで並べてみました。
 

⑤栗を食べる

④は飲食の「飲」の行事でしたが、今度は「食」のほうです。「え、栗を食べるってのも重陽の節句の行事なん?」と不思議に思う方もやはるかもしれませんが、ちゃんと昔の書物にいくつも書かれてるんですよ~(注6)昔から節句行事として栗を食べることがあったとは嬉しいですよね。菊は飲む行事に使うので、食べるものがあるといいなぁと素直に思います。栗の黄色は実りの色、秋には似つかわしい食べ物です。これは是非とも9月9日にやってみたいですね。

 

⑥おひなさまを飾る?

またとんでもないものが出てきましたね。おひなさまって言うたら3月3日の桃の節句ですが、それをまた出してくるっていうのです。有職京人形司の大橋弌峰さんによると、雛人形は3月3日だけではなく、「後の雛(のちのひな)」といって江戸時代には重陽の節句にも飾っていたそうです(注7)。虫干しの意味もあったんでしょうかね。

▲長寿を願う「百歳雛」(2021年上京区役所ロビー展示・大橋弌峰作)

▲長寿を願う「百歳雛」(2021年上京区役所ロビー展示・大橋弌峰作)

⑦茱萸(しゅゆ)袋を身に着けて高いところに登る!

重陽の節句の起源のところで出てきたお話の中に、茱萸袋を身に着け、山に登って菊酒を飲むっていうのがありましたね。山に登ったのは物理的に災難を避けるためのようですが、そこで菊酒まで飲んでしまうんですねぇ。とっても陽気な解決法やけど、よさそうなことはなんでもやってしまう、というところでしょうか。そしてもうひとつ出てきた「茱萸袋」、これはどんなものか知ったはりますか?袋には茱萸(ぐみ・しゅゆ)と呼ばれる赤い実が入っていて、薬草にも使われる茱萸が邪気を避けると考えられました(注8)。京都でも茱萸袋は複数の寺社で授与されています。それにしても重陽の節句の行事の中にハイキングが入っていたとは思いもよりませんでした。

▲嵐山法輪寺で授与される茱萸袋

▲嵐山法輪寺で授与される茱萸袋

こんなふうに、重陽の節句にはたくさんの行事が行われてきました。この中でご存じの行事はあったでしょうか?

 

重陽の節句をやらないようになった理由(わけ)

さて、五節句とは文字通り5つの節句なので、間違いなく「重陽の節句」も入っていますが、この「重陽の節句」だけはあんまり聞かへんなぁと思う人は多いでしょう。まだ京都では、華道や茶道、神社仏閣の行事としては行われているところは少なくないです。でもごく一般の暮らしの中で目にすることは無く、最初にも書きましたが9月の節句と聞かれても、ほとんどの人は首をかしげてしまいます。

実際うちの家でも、この重陽の節句だけは全く何にもやってませんでした。菊酒を飲もうにも私の家は家族全員お酒が飲めず、また優雅に菊の花を育てることもなかったので関心がなかったのかな、とは思いますが。でも他のお家でも重陽の節句をやったはるところは見たことないのです。こんなにたくさんの行事があったにも関わらず、です。どうしてなんでしょう?

それではちょっと難しいですが、この疑問をチェックにしてみましょう。

 

京都人度チェック 「重陽の節句」はなんで知られなくなってしまったんでしょう?

名前すら知らん人が増えた重陽の節句ですが、これには菊の花に原因があるように思います。その中でも特に注目すべき5つの点で説明してみましょう。大きなポイントだけでも5つもカウントできるって、行うのにどれだけ壁があるんでしょうね。たくさんの理由があることが、この節句の影の薄さを表しているような気もします。ではさっそく1つ目から。

1つ目は菊の咲く「時期」です。重陽の節句は他の節句と比べて、菊という「花をメインとする」イメージが強い節句。なので、菊が咲いている時期に行事が行われるはずなんですよね。先に「重陽の節句」と「菊の咲く時期」の関係を頭の隅に留めといてください、と書いたかと思うのですが、問題はここなんですよ。そう、古来から菊はいつ咲く花やったか?ということ。

調べてみると、菊は大体10月半ばから11月にかけて見頃になるようです。そしたら「なんで今菊の咲いてへん9月にこの節句があるのか」というと、アレです、ほとんどの行事の時に言うてるような気がしますが、「新暦」と「旧暦」の違いですね。今は新暦の9月9日に行いますが、「旧暦の9月9日」というのは新暦でいうと10月のうちのどこかにあって、ひと月からひと月半くらい後になってしまうのです。9月の初めいうたら今はまだまだ夏気分で、とても菊が咲く季節とは思えません。10月の終わりごろに盛りになるので、大阪の某遊園地で行われる菊人形展もこのころ始まります。つまり、新暦になって「重陽の節句」が本来菊が咲く時期とは全く違う時に行われるようになってしまったんですね。これはお花がメインの行事にとっては不幸なことでした。

でもみなさんこの時思わはりませんでしたか?

「あれ?菊って1年中あるやん。9月に無いわけやないのやし、それでやったらええやん!」

もちろんそうなんですよ。そうなんですが、それがかえって良うない結果を生んだんです。まず、年がら年中咲いてることで、「菊ていうたら秋(晩秋)」ていう季節感が消えてしもたんです。しかし例えば、「桃の節句」と呼ばれるひなまつりの桃の花も、実は3月3日よりもっと後に咲くので、本来やったら花が咲く時期がずれていて違和感があったはず。そやけどひなまつりの場合、メインはお雛さんを飾ることであって桃の花を愛でることやない。なのでひなまつりが桃の季節がどうか、があんまり意識されず問題にならへんかったのです。でも重陽の節句は菊がメイン。なんというてもこの季節感のずれが、行事を廃れさせてしもたんやと感じています。

また2つ目の理由は菊の「イメージ」から来ています。古来より重陽の節句に限らず、宮中では菊を愛でることが多かった。皇室の紋も「十六菊」で、昔は皇室しかこの紋を使えへんかったことからも、菊に高貴なイメージを持っていたことがよくわかりますね。そやけど残念なことに、今一番よく菊を使うシーンによって、イメージが少し変わってしもたような気がするのです。一番よく使う、一番よく見るのはどこですか…?はい、そうですね、お葬式の祭壇です。これが随分と影響したのとちゃうかなと思います。ネット検索でちょっと調べていただいたらわかるのですが、祭壇に菊が使われるようになったのは、故人に対しての敬意をもって高貴な花を使った、という説が一般的です。そやけどこれが結果的に「菊=お葬式の花」というイメージを植え付けてしまいました。こうなると長寿を願うという行事に使うのにちょっと違和感が出てくる。「高貴」イメージの花やっただけに、菊にしたら本当に迷惑な話です。

そして3つ目の理由は、菊が長寿を願う行事に使われる「理由」が知られんようになった、ということです。最初に説明した中国の伝説「菊慈童」の話を知っている人が多かった時代には、菊は「長寿アイテム」やったのです。とにかく菊に関係あることやっといたら長生きできる、と、一般の方も考えてたんですね。菊の薬効もきっと知ったはったでしょう。

さらに4つ目の理由は、9月には重陽の節句に似た行事が2つもあるということです。第一に「敬老の日」。「長寿」のイメージから、私は最初、敬老の日は重陽の節句から生まれたのかなと思ってました。でも、敬老の日は昭和22年(1947年)9月15日に兵庫県で生まれた祝日なので関係はありません。そやけど長寿を祝うというイメージは同じですし、とても紛らわしいですよね。

また、第二にはお月見があります。9月のイベントは?と聞かれて一番多い答えが「中秋の名月」やそうです。旧暦8月15日、新暦でいうと9月半ばから10月にかけてなので、まさに秋たけなわに向かう9月の行事の代表です。秋になったら空気が澄んでお月さまが見えやすくなります。重陽の節句と同じく視覚に訴える行事で季節感もあり、自然を愛でる年中行事としては、なんとなく似た雰囲気を醸し出しているようです。お月見には「菊酒」ならぬ「月見酒」っていうものもありますしねぇ。それにちょっと言葉の音の感覚も関係してるのと違うかなと思うことがあります。「中秋の名月」と「重陽の節句」、なんか似てません?そんなふうに思うの私だけでしょうかね??そんな2つの雰囲気が似た行事があるために、「重陽の節句」は存在感を無くしていったのではと考えます。

▲お月見と重陽の節句は何となく似ている。

▲お月見と重陽の節句は何となく似ている。

そして最後の5つ目は秋のお祭りの多さです。秋はお米をはじめいろんな作物の収穫の時期なので、収穫祭が多いですよね。そしてやっぱりみんなはそれをお祝いするほうが嬉しいし美味しい。長寿も大事やけど、食べ物は生きていくための一番身近な問題ですしね。

こうやって見てくると、「菊」という花が持つ生態、イメージ、菊を使う理由が周知されんようになったこと、旧暦と新暦による季節感のズレ、秋のイベントやお祭りから押し出されてしまったことなど、さまざまな理由でマイナーな節句になっていったのは納得がいくような気がします。

 

重陽の節句よ、再び!

そしたら、「重陽の節句」行事は今後無くなっていくのでしょうか?このままいくと廃れてしまいそうな気はしますが、私はこの行事は是非是非残してほしいなと思っています。私自身も行事を一切やってなかった節句ですが、調べたら調べるほど面白く、菊の花のイメージも変わりました。

先ほど、「実際の菊の盛りは今の9月9日よりずっと後やけど、今はいつでも咲いてるし季節感が無くなった。」と書きましたよね。それが行われんようになった理由の1つやったわけですが、いつでも咲いているということは復活にとって逆に好都合とも言えます。割り切って新暦9月9日に使ってみたらどうですか?高齢者も多いし、健康志向もどんどん高くなって広まってきてます。おまけに行事はとっても雅です。京都人、京都通やったら是非挑戦していただきましょう。実際に行われ、体験もできるところがあるのでご紹介しますね。

私の住む上京区にある町家アートギャラリーのbe京都さんでは、多くの節句行事が行われ、一部の体験もできます。こちらでは重陽の節句も菊の花にまつわる行事やしつらいなどが、華道・嵯峨御流教授の石川利佳甫先生により古式にならい再現・指導されています。菊に被綿をする体験や菊酒・菊花茶の試飲もあったので、今年は行ってみよかと思ってるところです。

▲若い人たちに伝えられる「重陽の節句」

▲若い人たちに伝えられる「重陽の節句」

(写真提供:be京都様・2枚とも)

▲被綿で拭い、昔の行事を追体験。

▲被綿で拭い、昔の行事を追体験。

(写真提供:be京都様・2枚とも)

さぁ今までご紹介してきた行事の中で、どれやったらみなさんのお家でできるかしらんと。簡単にできるものを考えてみましょね。まずは食べたり飲んだりできるもの。栗ご飯は重陽の節句でなくても食べるけど、節句のご飯として広まってほしいですね。バレンタインのチョコ、端午の節句のちまき、重陽の節句の栗ご飯、そして飲み物は菊花茶や菊酒。お店の方、これいけそうですよ?!雅なイメージのお祭ができますし、私が気になっている美肌やアンチエイジングにもつながる行事は、今の若い人たちにも興味を引くのとちゃうかなと思うのです。

他に手っ取り早くするのやったら、重陽の節句をやったはる寺社をチェック。法輪寺さんや市比賣神社さんがおすすめですよ。他に京都にも、また京都やなくても調べたらたくさんあります。お守りをいただいたり、その場で菊酒を飲んでみたり。ちょっとしたお出かけでできる節句体験ですね。京都の人もこの手の関わり方が一番現実味がありますね。

そしてもっとアクティブに、9月9日がお休みの日にあたったら山にハイキング!茱萸袋は形だけでも再現したものを着けます。リュックに「茱萸袋ストラップ」つけてみますか?お山のてっぺんで菊酒飲んで、ということなのですが、ちょっとビックリしたのは、現代の中国では高い山の代わりにビルの上の階に行くこともあるっていうこと。最上階のレストランで菊酒なんか飲めたら素敵やわ~て思います。お家にいる人はおひなさんを飾り、白酒のかわりに菊酒で乾杯して、大人の「後の雛」を楽しみましょう!菊の花と一緒のおひなさまも趣がありそうです。1年に2回もおひなさまが使えてコスパも上がります!

そうそう、最近のお葬式は菊ばかりでなく、ひまわりのような派手な洋花や亡くなった方が好きやった花を飾ることも増えてきたそうです。お花に疎い私には気の付かへんポイントでしたが、それやったら菊もイメージを変えていけるかもしれません。菊の高貴イメージカムバック!菊の花に乗せる被綿も、その絵を飾ったりタペストリーにするのやったら場所を取らずできそうです。

また、京都らしく旧暦か月後れでする手もありますね。観菊祭もある季節に催したら昔の風情も味わえます。新旧の暦でやれば、七夕のように2回楽しめるメリットも。新暦のほうは、暑い暑い夏に耐えた身体を癒すイベントになりそうです。

何千年も昔からの行事が中国から渡り、確かに京都ではその行事が宮中で行われてました。菊の花のイメージや季節のずれから忘れ去られそうになっている重陽の節句ですが、雅でヘルシーで延命長寿な行事、やって損はありません!ついでに、ここ数年の大きな災難を除ける行事として付け加えましょう。京都人・京都通の必須のイベントとして、これを外すことはできひん、いつかそう言えるようになることを祈りつつ。

注)
1.古郷彰治「重陽」p.27 「季節を祝う 京の五節句」に収録
2.神泉苑サイト
3.猪熊兼樹「『旧儀礼図画帖』に見る宮廷の年中行事」p.53 「菊綿」
4.効能として利尿作用、抗菌作用、解熱効果、高血圧予防、夏バテ解消、のぼせ、慢性肝炎、眼精疲労、解毒、消炎が挙げられています。
わかさ生活サイト「わかさの秘密」
  5.菊にアレルギーを持っている方、冷え性や下痢をする方は控えた方がよいとされています。
茶卸総本舗ブログ
6.「飲菊酒食蒸栗或親戚朋友互贈」 黒川道友「日次紀事 九月十月」1676年(延享4年)
7.大橋弌峰ブログサイト
8.「茱萸袋」の「茱萸」とは、「山茱萸」と「呉茱萸」の2つの説がそれぞれ複数の資料で解説されており、こちらではこの2つのどちらかを取るという判別をしませんでした。

その他、陶淵明の菊の詩から名を取った京都市上京区の旅館「東籬」の女将・望月佐多子さんに中国における重陽の節句について教えていただきました。
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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
お申込みは「鳴橋庵」HPまで。

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