
冬を感じる!うつわの衣がえ【京都で伝活!~私たち伝統産業を愛する活動はじめました~】
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秋の陶器まつりが終わると、いよいよこたつや毛布を出して冬支度が始まります。あったかい飲物も頻繁に飲むように…夏に比べてマグカップの出動率も高くなります。あたたかい食事に幸せを感じるこの時期はお皿よりもお鉢のほうをよく使うような気がします。
ああ、お正月の準備もしないといけないなあ、来年の予定もちらほら入ってきて…なんだか気ぜわしい。
そんな季節ではありますが、クリスマスやお正月に向けてテーブルコーディネートに関心が高まる時期でもあります。キッチンやリビング雑貨など扱うお店では、パーティーグッズなどいつもより多く並び、ウキウキと気分も高まりますよね。私もこの時期は食器売場をクリスマスのテーマにした商品ディスプレイをしたり、お正月に向けてのテーブルコーディネート講座などを開催することが多くなります。
こんなハレの日には華やかなうつわも登場することも多くなると思います。キレイな絵が描かれていたり、時には金や銀色の模様が入っていたり・・・。
今回はうつわの絵について注目してみましょう。
うつわの作り方
陶磁器には釉薬だけを掛けた無地のうつわ(“釉薬もの“と言われます)と、絵が描かれた絵付けのうつわがあります。
絵付けされたうつわにも種類があり、素焼きのうつわに描かれた「下絵付け」と、本焼された後に描かれる「上絵付け」があります。その違いを説明する前にうつわが出来る行程をご紹介しましょう。
①菊練り・土殺し・・・土をよく練り、土に含まれる空気を抜く作業を行います。両手に体重を掛け、練った跡が菊の花のように見えることから菊練りと言われます。
土殺しとは物騒な名前ですが、ろくろ成形する際には必要な工程で、土をろくろに置き、回しながら、土を上に長く伸ばしたり、下に縮めたりして粘土の質を均一化する作業です。
②成形・・・回転するろくろ(電動または手動)で成形したり、石膏型に入れて形取ったり、たたら板と言われる道具を用い、ワイヤーで土の塊を横方向からスライスして板状のうつわを作る方法など、成形にも様々な作り方があります。
③乾燥・削り・・・土ものは少し乾燥させたのち、石ものは完全に乾いてから表面を削って形を整えます。ここでしっかり乾燥させないと、土の中に水分や空気が残っていると熱せられ、窯の中でうつわが大爆発します!!(水蒸気爆発)
④素焼き・・・約800度の窯で素焼きを行います。焼き上がった後、ヤスリで再度、形を整える場合もあります。
⑤下絵付け・・・染付(そめつけ)という青い絵のうつわは、素焼き後に呉須(ごす・酸化コバルトが主成分の顔料)を使って描かれます。この顔料を溶く際にはお茶を発酵させたものを使うと、描きやすくなるのだとか。
⑥施釉(せゆう)・・・釉薬をうつわ全体に掛けます。釉薬には植物の灰や鉄、銅などが含まれ、配合の割合でうつわの色や質感が変わってきます。工房ごとに釉薬のレシピが存在し、このことが京焼・清水焼の多種多様な技法につながっています。焼〆(やきしめ)と言われる土の質感がそのまま出る技法は釉薬を掛けずに焼かれます。
⑦本焼き・・・約1200度の窯で本焼きを行います。酸素を取り入れる「酸化焼成」、酸素を遮断して焼く「還元焼成」など、焼く方法も様々あります。工房ごと、作品ごとに温度や時間は違い、使用する土や釉薬がベストに仕上がるように何度もテストされて算出されています。
⑧上絵付け・・・本焼き後の釉薬の上から多彩な顔料や金液などで絵が描かれる技法。上絵つけ師さんにより絵付けされます。
⑨上絵焼き・・・上絵付けを施した後、約700~800度の窯で焼きます。表現によってはこののち、さらに絵を描き加え再度焼かれる場合もあります。
陶磁器は形を作る「成形」と、絵を付ける「絵付け」と業務が分かれることが多く、特に上絵付けは絵付け専門に工房を構えてられることが多いです。
その昔、薪を使って登り窯で焼いていた時代には、窯の火を付ける専門の方がいたんだそう。(現在、条令により京都市内では煙の出る薪窯は禁止され、ガスまたは電気窯で焼かれています)
上絵付けと下絵付けのちがい
絵を付ける場合は⑤の下絵付け、⑧の上絵付けの工程が加わることになります。(両方の場合もあり)特に、上絵付けは本焼きの後さらに焼きますので、同じ柄なのに下絵付けだけの物に比べて高価に感じるのは、手間と時間が掛っているからなのです。
また、先述にもあるように釉薬の上または下に絵が描かれていることから「上絵付け」「下絵付け」と言われますので、この違いがお手入れに大きな違いが出てきます。
「下絵付け」は絵の上に釉薬が掛ってコーティングされていますが、「上絵付け」はそのコーティングの上に描かれていることから、かたいスポンジで強くこすると絵が消える恐れがあります。うつわを購入した際にはご確認をしていただき、「上絵付け」なら柔らかいスポンジで優しく洗浄してください。
また、温めなおす時に便利な電子レンジ。ですが、金彩、銀彩を施したうつわは絶対に使用しないでくださいね。
私、金の入ったうつわをレンジに入れ、雷のように庫内がピカピカ光って腰を抜かしそうなほどびっくりした記憶があります。スパークしたうつわの絵には無残にも黒く焦げた跡が…。
レンジを壊したり、火災にもつながりかねませんので、お買い求めになるときにお店の方に必ずご確認ください。(近年はレンジOKの金彩・銀彩もあるそうです)
冬・お正月を迎えるうつわとは
冬のうつわをイメージしたときに思うのが土鍋(うつわと言って良いのかな?)。寒くなるとお鍋料理が恋しくなりますね。土鍋は保温力もあるので、この時期頻繁に登場するご家庭も多いのでは。
お正月には、煌びやかなハレのうつわが登場。
おめでたい絵が描かれたり象ったうつわ、赤(紅)や金色が入ったうつわなどが新春のお祝いらしくなるでしょう。
(写真左)古来より〔鶴亀〕は長寿を象徴する吉祥の生き物として崇められてきました。
(写真右)松竹梅の〔松〕は年中緑を保ち生命力あふれることから〈不老・長寿〉、〔竹〕は地下から竹の子が出てすくすくとまっすぐ上に伸びることから〈成長・子孫繁栄〉、〔梅〕は寒い冬を越し、春を知らせるのに一番に花を付けることから〈高潔・繁栄〉をあらわすと言われています。
縁起の良い吉祥文様は他にもあります。


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京都生まれ。祖父の代まで染屋を営み、親戚一同“糸へん”の仕事にたずさわる環境で育ち、学生時代はファッションを学び、ウェディング業界へ就職。そこで出会ったテーブルコーディネートに感銘を受け、後に食空間コーディネーターとして起業。京都の伝統産業の産地支援や、五節句や年中行事など生活文化を次世代に伝える活動を行っています。京焼・清水焼の卸売をする夫と夫婦ユニット「おきにのうつわ」を結成して、京焼・清水焼の魅力の発信や講演、展示会プロデュース、また陶磁器以外の伝統産業品のPRや観光業とのコラボなども手がけています。近年スタートさせた「伝活」では実際に京都の伝統産業品を愛でたり、使っている様子をSNSで紹介。
特非)五節句文化アカデミア 理事
|おきにのうつわ
食空間コーディネーター 工芸品ディレクター|うつわ/清水焼/伝統産業
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於:清水焼団地協同組合