KBSの京都ロケ取材
私は京都に生まれ、京都で育ちました。KBS(京都放送)に入社後、3年目を過ぎたころテレビ制作に配属になるのですが、入社当時は民放初のゴールデンタイム報道番組(月~金放送)「タイムリー10(テン)」が人気でした。そのころは、後継番組として「ザ・タイムリー」(報道部とテレビ制作部の共同制作)があり、私もその番組のロケ取材を担当することが出来ました。京都における話題や気になるスポット、たまにはお祭り行事などを取り上げるのです。しかし、いつも良いネタがあるわけでもなく、大変苦労したことを覚えています。そのせいか、今でも様々なことに興味を持っていて、たまに珍しい京都の史跡などを発見することがあります。その中から今回は、第1回目として『京のお伊勢さん』をご紹介しましょう。京都市内にある「お伊勢さん」をご存知でしょうか?
京都市内にある「お伊勢さん」
創建1300年を迎えた、天橋立にある元伊勢・籠神社は有名ですね。また、福知山の大江山にある元伊勢三社は、北近畿にお住まいの方にとって信仰が篤いと言われています。元伊勢三社とは、元伊勢内宮皇大神社、元伊勢外宮豊受大神社、天岩戸神社を指すらしいです。でもこれ以外にも京都市内に『京のお伊勢さん』があるということをご存知ない方は多いと思います。恐らく、あまりにも三重のお伊勢さんが有名であり、浸透しているから? それとも他の有名な寺社仏閣にお参りするからでしょうか?
他に思いつく理由は、目立たない場所にあり、しかも少し山道を歩かなければならないからでしょうか。場所は、意外にも地下鉄「蹴上駅」から徒歩で行ける距離にあります。もちろん外宮、内宮もあり、『天の岩戸』もあるのです。ここは知る人ぞ知る、今やパワースポットになっていて、『天の岩戸』の洞窟の中に誰でも入ることが出来ます。洞窟をくぐり抜けると心身の穢れが払われると言われ、開運の御利益も授かることができます。
京都最古の神社「日向大神宮」
この京のお伊勢さんの名前は、『日向大神宮』と呼ばれ、京都最古の神社の一つとも言われています。創建は487年頃、第23代顕宗天皇の治世に、筑紫の日向にある高千穂の峰の神蹟(神が宿っていた場所)を移したのが起こりだそうです。
その後、天智天皇が神田を寄進したことから、神域の山は日御山と名付けられました。しかし、京の3分の2が焼けたという応仁の乱で社殿等が焼失します。江戸時代初期になって、篤志家・松坂村の松井藤左衛門によって旧社地に再建され、後陽成天皇が書かれた「内宮」と「外宮」の勅額も賜れるようになり、慶長19年(1614年)には、徳川家康により失われた領地も戻されて社殿が改造されます。
因みに参拝の方法ですが、伊勢神宮と変わらず外宮から内宮への順序でお参りします。
この神社は、昔から「京のお伊勢さん」として親しまれ、遠い伊勢神宮に参拝できなくても、京都でお伊勢さんの参拝ができると有名になり、東海道を往来する旅人たちも道中の安全祈願として多数参拝に訪れたそうです。
社殿は神明造(神社建築の一様式)で、分かりやすく言うと、茅葺き屋根の上に千木(X字の組木)と鰹木(屋根の上に並べた木)があるのが特徴です。
『天の岩戸』は、内宮の横の坂道を上がると見えて来ます。岩には大きな穴が開いており、中には「戸隠神社」があります。岩戸の天照大神を引き出し、世界に明るさを取り戻した、筋力・腕力を象徴する神様の天手力男命が祀られているのです。
一直線に結ばれるパワースポット
お参りが済んだら、今度は是非とも「伊勢神宮遥拝所」へ向かってください。元の入り口(駐車場辺り)に戻り、山道へ向かうのです。どうしても人がまばら?というより、見かけないので奥へ行かずに帰られるか、知らずに帰る人が多いのです。私も初めて行ったときは、帰ってしまいました。後から知ったので、後日もう一度行ったくらいですからね。(最近は、トレイルのコースになっているのでランナーも多そうですが)。
ここへ向かうには、山道を登る辺りで、「伊勢神宮遥拝所」と書かれた道標を見つけてください。
約15分ほど山道を登れば、小さな山の頂に突如として鳥居が姿を現します。これが遥拝所です。
この鳥居は南東方向を向いており、ちょうど伊勢神宮の方角を向いているのです。どうぞ、伊勢神宮に手を合わせて下さい。お伊勢さんに行ったぐらいに、ご利益が授けられますよ!
参拝を済ませたら、今度は鳥居をくるりと回れ右をして下さい。伊勢神宮とは全く逆の北西の方角に向くのです。すると木々の間から遠く京都市内が見えます。赤くて大きな平安神宮の鳥居が見え、京都御所の緑や、後方には左大文字も見えますよ。
お伊勢さんのパワーを京都御所に送っているんだ、という人もいるそうです。でも、ここはパワースポットと言われる通り、ちょうど伊勢神宮から遥拝所のある日向大神宮、平安神宮、京都御所と一直線に結ばれているのです。これは偶然なのか、それとも神の仕業でしょうか?一度体験して感じてください!