中古車販売業から転身して、全く未経験で「旅行会社萬転」を開業した西河社長。しかしノウハウがないこともありなかなか客が増えず、苦難にみまわれます。そして発想の転換で、やっとお客様が来てくれるように!そのきっかけは綾小路きみまろにありました。
▶︎【前回の記事】ターゲットを絞って勝機をつかめ!~有頂天天狗社長の七転び八起き~ KLK お客様が来るようになって、好転したという感じでしょうか?西河社長 「今の時代は何かに特化していないといけないんですよ。『何でもできます』っていうのは何もできないのと同じなんです。『シニア旅行企画』の話で言ったら、シニア向けという目の付けどころは良かったけど、ネーミングで失敗したってことなんですよね。車の会社を興したときも、事故車買い取りっていうニッチなところで儲かってましたし。
鳥インフルエンザや、地震だとかが起こるたびに、旅行の企画が全部キャンセルになるんですよ。始めて2年半くらいの時はもう会社を畳もうと思ってました。家族も養わないといけませんしね。それで、いつ辞める、いつ辞めると思っていた時に、去年のお客さんから「今年も頼むで!」っていう電話があったんですよ。ものすごく、それに救われました。石の上にも3年って昔から言いますけど、本当ですね。その時がもう40歳手前ぐらいです。同時に、課題にもぶつかりました。『忙しいけども儲かっていない』んです。」
本1冊を信じて
西河社長「『80対20の法則』という本があります。内容は、簡単に言うと「年間売上が1000万円ありました。顧客は100人います。でもそのうちの80人は売上の2割しかもたらしません。残り20人の人が800万円の売上をもたらしてくれます。1度、あなたの顧客を見直してみたらどうですか?』というものです。ほんまかいなと思って自社の売上を調べてみたら、本当にその通りだったんです。なのでその本を信じて、より利益をもたらす2割のお客さんを大事にする方針に変えました。
すると、本当に8割の仕事が無くなったんですが、その分時間ができました。そこでその浮いた時間でお客様に配布する『萬転新聞』を作ったり、ホームページを作り直しました。
当時はまだホームページで集客する旅行会社なんてありませんでした。まだまだスマホもなかったですし、紙の資料をそのままホームページにしたっていうクオリティのものがほとんどでした。そこで、SEO(※1)対策をガチガチにやって、ちゃんと見てほしいお客さんに届くようなホームページを作ったんです。」
ホームページからの問い合わせ
西河社長「そうやって色々取り組んでいると、半年もしないうちに問い合わせがあったんですよ。全然知らないところから、『ホームページ見ました。社員旅行の企画をしてもらえませんか?』という電話があって。旅行会社のほうから営業に行くのが普通なんですが、これまでと全く立場が逆なんですよ。すごいなぁインターネットやりおる!って思いましたね。
あるとき保険会社のネット集客のやり方を聞いたら、同じ生命保険のサイトなんだけど、学習保険のサイト、児童保険のサイトというふうにホームページを分けているっていうんですよ。
それまでホームページは1社に1個みたいなイメージだったんですが、何個作ってもいいんだ、専門ごとに分けたら見やすいんだということに気づきました。
そこでまず『バス予約センター萬転』というのを作ったんですね。すぐに反応がありました。時間があったので次々に他のサイトも作りました。滋賀もいけそうだと思って『滋賀貸切バス予約センター』を作って、『奈良貸切バス予約センター』を作って、町内会旅行専門のサイト、社員旅行専門のサイトなどとにかくいっぱい作ってたんですよ。それがヒットしました。」
西河社長「45歳過ぎた時、YouTubeの勉強会があったんですよ。そこで講演者が最後に言ったことがとても印象的だったんです。『私は皆さんにいっぱいノウハウを言うてますけど、絶対皆さんやらないんですよ。100人中、やるのは1人か2人です。』
僕はこれを絶対やらないといけない。やる方の1%になろうと強く願いました。そこから毎日最低1個はYouTube動画上げるようにしたんですよ。1年後には1000個ぐらい上げてました。そうしたら、例えば『団体旅行 北陸』とか『京都から団体旅行』などとお客さんが調べたら、似たような言葉を打っても全部僕の動画が出てくるようになったんです。あまりにもヒットしやすくなっちゃって、あるとき知り合いの旅行会社の人から『きみ、わしのスマホに何してくれてん!何調べてもきみの顔ばっかり出てくるわ!』という苦情の電話がきたこともありました(笑)」
コロナ禍を超えて
西河社長「コロナ前くらいまでは、旅行業の同業者は『ネットにお客さんを取られてる』とみんなが言ってたんです。世の中はどんどんネットで申し込んで物を買うというのが当たり前になってたのに、それについていけていなかったんですよね。『これからはネットにお客さんが行くんやから、ここにお店を持たないといけないやん、それがホームページなんですよ。』って僕は言ってたんだけど、分かったような分からないような顔してる人が多かったですね。
ホームページ制作会社が作るホームページっていうのは、見栄えはいいけども、実は集客はあんまりできないんですよ。商品を売りたいんだったらやっぱり自分で作らないといけません。というのは、自分でホームページ制作を頑張ってたんですけど、あるときから検索順位がガクッと落ちてしまったんです。やっぱり検索1位2位でないと問い合わせが半分以下になっちゃうんですね。これは困った、でもどうすればいいか分からなくて途方にくれました。そしたら、昔紹介してもらった大阪の方がWeb集客のセミナーをやるというので行ってみたんです。ただ、そのセミナーが全6回で、100万円。100万は零細企業からしたらまあまあの額です。だけど払ったんです。5位や6位に落ちたホームページが1位になったら、数ヶ月で100万円取り戻せるかと思ってね。6回行って教わったのがブログで儲けよう、ワードプレス(※3)で儲けようっていう話で、そこでいろいろ試してホームページもイチからまた作り直したら、本当に1位になれたんです。
それで100万円は取り戻しました。それ以外に副産物がとしてノウハウを売る商売をしないかっていう話がありました。当時、着地型観光とかいって、地域活性化のために旅行会社を様々な地域に広げたい国の施策として、旅行業を開業するハードルがグッと下がってたんですよね。」
セミナー講師・コンサルを始める
西河社長「これから旅行業をやろうとしたら、みんながここで悩む。ここでつまずく。自分は全部経験してるから知ってるよ、全部教えられるよ!っていうのが僕の強みだと思いました。それで旅行業を始める人のためのブログを作ったんです。そしたら物凄い勢いで読まれて、旅行業をやりたい人は全国にいっぱいいるんだって実感したんです。それで僕も実際にセミナーを開いてみることにしました。
しかしコロナが来て、ちょっとこのままではまずいなと感じました。旅行の仕事が無さすぎるんですね。それならば、セミナーに来てくれる人のためのコンサル業を極めようと思ったわけです。調べたら中小企業診断士っていう資格が出てきたんですよね。けっこう難しい資格だけど、これを取れたら旅行業開業のためのコンサルだけでなく、もっと色々なことができるということでこの機会に挑戦することにしました。
ネットには、中小企業診断士勉強時間1000時間とか1500時間とか書いてあるんですけど、もう55歳になっていたので、本を1回読んだくらいじゃ全然覚えられないんですよ。当時はコロナで本業が暇なもんですから、勉強時間はたくさん取れる。それで、毎日10時間ずつずっと勉強して、やっと一次試験に受かりました。そこからさらに大阪の専門学校に通って二次試験にも合格、実務補習というのを受けて、経済産業大臣からちゃんと免許証が届いたのは今年の5月のことです。この資格の勉強を通して、これだけ知識をつけたらこれは旅行業相手だけじゃなくていろんなことができるぞという自信が生まれました。さすが、コンサルのための国家資格だなと思いますよね。」
西河社長「僕は観光とWeb集客という、自分の本当に得意なところに特化した中小企業診断士になりたいなと思ってるんです。実際に今、旅行会社を経営してることが僕の最大の強みですね。この仕事で、日本のあらゆる地域を活気ある観光地にするという目標が叶えられればなと思っています。毎月のセミナーでよく『西河さんはいいですよね。京都はいっぱい観光コンテンツあるから。』と言われるんですが、いや、そうじゃないと。田舎だとしても、素晴らしい森や、山や、川がある。都会の人たちはそれを知らないんです。だからそれを教えてあげるだけで観光なんだということを伝えていきたいですね。」
KLK なるほど。強みを活かされる姿勢が一貫されてますね。それでは、西河社長にとって京都で仕事をするメリットってなんでしょうか?西河社長「それはやっぱり、一大観光地である京都のことを、他のどこの人よりもよく知っているということじゃないでしょうか。京都にいるからこそ、京都のことはだいたい分かるじゃないですか。どこか甘味処で休憩したいとなればすぐ提案できるし、地元のもんだからこそ言えるネタがあって、東京の旅行会社が京都のツアー組んでもそんなの絶対組めないんですよね。特別なことをしたいとなっても京都の会社だからさせてくれたりすることもあります。そういう自分なりの地域のネットワークを持ってるっていうことがものすごいプラスになってるし、そこが萬転を通じてお客さんが喜んでくれるツボみたいなところになってると思うんです。」
KLK 最後に萬転さんの社名の由来をお聞かせください。西河社長「『まんてん』という響きがいいなということから始まりました。100点『満点』だったらそれ以上がないし、星空の『満天』だったら夜にならないと輝かないので『よろず、物事が福に転がる』という意味で『萬転』だと、いろんなとこに出向いて福を拾ってくるみたいなイメージがありいいなと思ってつけました。
この記事(前・後編)から得られる13のビジネスヒント!
・オモテには出ない裏のニーズがあるものだ。
・「ありがとう」と言ってもらえる仕事って何があるんだろう?
・わからなければバカになって人に教えを乞おう。
・顧客に商品やサービスを「自分向き」と思わせるのは案外難しい。
・「何でもできます」ではお客様は振り向いてくれない。
・「忙しいのに利益が出ていない」は危険信号。
・本当に利益をもたらしてくれる層を見極めよ。
・専門サイトに勝機あり。できれば自分で作るべし。
・セミナーで「それいいな!」と思っても実行する人は1%。
・投資した時間とお金は利益として取り戻す覚悟を。
・異業種展開しても元の仕事は必ず生きてくる。
・ノウハウを売るビジネスはこれから伸びるかも。
・地域企業にとって地元の繋がりは財産。
※1 SEO・・・Search Engine Optimization 検索エンジンからWebサイトに訪れる人を増やすこと。
※2 アルゴリズム ・・・この文脈でのYouTubeアルゴリズムは、ユーザーの視聴履歴や行動に基づいて表示される動画を決める仕組みのこと。
※3 ワードプレス ・・・Webサイトやブログの作成ができるシステムの1つ。