京都・紫野の魅力と、新しい宿泊施設づくりを目指して(大徳寺一久主人×フラットエージェンシー会長 クロストーク)

京都市中心部から外れた北部、大徳寺のお膝元のエリアを「紫野(むらさきの)」と呼びます。左大文字と賀茂川にはさまれ、今宮神社や船岡山があり、閑静で歴史の深さが感じられるエリアです。銭湯が多いという意外な特色もあるんですよ。

ここ紫野で長くお商売をされている大徳寺一久(だいとくじいっきゅう)ご主人の津田義明様と、株式会社フラットエージェンシー会長の吉田光一様に、紫野の魅力と、これからの展望について聞かせていただきました。

紫野でどのくらいお商売しているの?

大徳寺一久さまは、大徳寺精進料理方として、長い間精進料理を作ってこられたお店なんですね。

大徳寺一久 津田様(以下:津田)

大徳寺が1300年から1400年の間にできたといわれています。その後、先祖が大徳寺にお出入りさせてもらうようになり、大徳寺精進料理方として500年余り経ちました。現在のかたちの料理は元禄時代に出来上がったと伝えられています。
大徳寺さんのご信用をいただいたというのが出入りの発端ですが、やはりそれを継続することで今につながる力になったと思います。出入りさせてもらっている本山が相変わらずここにあるということ。そして一久も同じくここにあるということが、今までの歴史そのものだと感じています。

一久(いっきゅう)というお名前は、あの有名な一休さんと同じですけど、お名前をいただかれたのでしょうか?

津田

はい。一休禅師に懇意にしていただいていた関係で、先祖が名前を賜りました。大変偉い方ですので、そのまま使うということは恐縮で、漢字を変えて一久という形になったといわれています。

フラットエージェンシーさまは、吉田会長がここで起業されたことが始まりなんですよね?

フラットエージェンシー 吉田様(以下:吉田)

はい。横浜から50年前に来て、紫野の地で起業しました。京都の人々と接していくうちに気づいたのですが、京都には独特の気質がありますよね。気難しいとか、ちょっといけずだとか、非常に人を見て、また見られてしまうというような。でもそれだけではなく、「人を育てる風土がある」というふうにも感じます。若者が何かに一生懸命取り組んでいるのを、きちんと見ていただいて応援や協力をしてくれる。特にこの紫野の地には、そういう京都独特の風土があります。人柄が非常に良く、皆さん協力的で頑張っている人の応援をしてくれる。だから私は紫野で起業してよかったなと思っています。

お二方はどのくらいのお付き合いなんですか?

吉田

私が起業して数年ぐらい経った時に、津田さんが経営するアパートの入居募集をさせていただいたんです。もう45年以上のお付き合いになるんですね。
当時僕はまだ25歳でしたから、あの若造を本当によく受け入れて信用していただけたと思います。大事な不動産の入居者を募集するという非常に大事な仕事を任せていただいたというのは有難かったですね。

津田

はじめは未知数でしたけど、吉田さんの人柄や仕事ぶりを見てお願いすることになりました。今日行ったら明日動いてくれはるみたいなね。

紫野の魅力って何ですか?

紫野に根を張って商いをされているお2人、ぜひ紫野の魅力を教えていただけませんか?

津田

紫野は、北区の中でも特に住むのにふさわしい環境です。賀茂川も山もあって住み良いし、この近くは、風致地区にもなっていますよね。
三千家が近くにありますので、そういう関係でね。どうしても環境的に皆さん、お茶とかお花とかそういうものに親しまれているような気がして教養が高いように思います。私は南の人間なので、全然ちゃうなあと感じます。やはり人間を形成しようと思ったらお茶やお花が大事、そういうふうに思っている人が多いのではないでしょうか。そういう中で育っているので、皆さん言葉遣いから人間の性質まですべて優しいように感じます。

吉田

紫野っていうのは、本当に環境的にも自然に恵まれてるし、人柄もあんまり昔と変わってないんですよ。街中とは違って、50年前も今もそんなに大きく変わってないと思うんですね。昔は市電が走ってたとかはあるんですけど、でもそれ以外の街の様子はあんまり変わってないんですよね。その辺が紫野の貴重な魅力だと思います。

紫野をご存じない方に向けて少しだけ説明しますと、紫野の氏神は今宮神社さんです。平安建都以前より疫神をまつる社があったといわれる歴史の古い神社で、京の三奇祭のひとつである「やすらい祭」で有名。その参道には創業1000年の「一和」と寛永創業の「かざりや」で白味噌のあぶり餅がいただけるんですよ。

また紫野といえば、大徳寺!山内には24の塔頭があります。枯山水や茶室見学、座禅体験ができるところもあります。広い境内をゆったりと歩くだけでも異世界にいるような気分になります。

あぶり餅

船岡山にある、織田信長をまつる建勲神社は歴史・刀剣ファンに大人気です。船岡山からは五山の送り火も綺麗に見えますよ!近くにある「船岡温泉」はお風呂だけでなく、美しい建築も楽しめます。元銭湯のカフェ「さらさ西陣」はマジョリカタイルの装飾がすてきです。

弊社のすぐそば、北大路堀川には、紫式部と小野篁のお墓もあります。

…などなど、紫野には名所・観光地がたくさんあるんです!!

これからの紫野をつくる

この紫野の地で一棟建ての宿泊施設をオープンするご予定があるとお聞きしましたが、詳しく教えていただけませんでしょうか。

吉田

津田さんが新しく土地を取得されたので、いろいろな提案をしました。ありとあらゆる図面を描いたんですけど全く通らない。そこで、私が以前から考えていた「この地域で宿泊施設をやってみたい」という提案をしたら、「考えるわ」と言ってくださって、話が進んだんです。
この宿泊施設を機に、フラットエージェンシーにとって新しい事業を発展したいと考えております。また一久さまでは、最近、精進料理を食べる外国の方が増えてきたので、宿泊施設に興味を持ってくださったということがあります。

この宿泊施設はどういうところにしたいですか?

吉田

紫野は良いところですが、市内中心部と違って北部なので、宿泊する方にとっては少し不便かもしれません。ですから、ここに来てもらえるような魅力を積極的に発信していきたいです。
やはり一久さんの精進料理やご説明は体験してもらいたいですね。さらに、大徳寺で禅の体験をしたり、あと上七軒のお茶屋さんを紹介してお茶屋さん遊びをしていただくことも考えています。またこの付近には非常に名所旧跡が多いのでぜひご紹介したいです。宿泊施設の内容については今はまだ一生懸命考えている最中です。

四条とか京都駅とかじゃない、ここにある魅力をいっぱい持って帰ってもらおうということですね。

精進料理のご説明していただいたり、それをすぐ隣でいただけるっていうのはすごく大きいことだと思いますし。外国の方はいま体験型の観光に興味を持たれているので、ぴったりじゃないかと思います。

津田

私の一つのテーマとして、来ていただく方に日本家屋や日本風の生活の中で生まれるたたずまいを知っていただきたいということがあります。日本に、京都に来て良かったと感じていただきたいですね。

Kyoto Love. Kyoto編集長より
海外の著名アーティストや実業家たちが度々紫野の地を訪れていることを知る人はそれほど多くはないかもしれません。「シンプルであることは、複雑であることより難しい」とはApple創業者のスティーブ・ジョブズが残した言葉ですが、禅、茶道、精進料理という大徳寺を中心とするこの紫野の地に息づく日本の精神文化の源流は、オモテの京都に飽き足らない内外の多く観光客に響くものがあるのではないでしょうか。才知の鋭い思想家として知られる「一休さん」こと一休宗禅からその名を下賜されたといわれる大徳寺・一久様が供する精進料理もまた「禅の心を食で体験するもの」として内外からの観光客に人気のようです。大徳寺一久の別邸として生まれる新しい宿泊施設はKLK編集部がある北大路堀川のすぐそばです。哲学者ともいえる著名人までをも魅了するこの紫野エリアの魅力を、Kyoto Love. Kyotoはこれからも伝えていきたいと思います。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いたライター

食べ比べ記事や、魅惑のスポットガイドなど、編集部の個性あふれる記事が盛りだくさん!