京ことばで綴る新しいコミュニケーション

京都は、人と人とのかかわり合いがとても密接なところである。
私は、かねてから、日常のちょっとしたことばの掛け合いが、先様への思い入れをじょうずに伝え、互いの心を通じ合わせる機会となっていることに魅力を感じている。

例えば、「どこいかはるのん?」「ちょっとそこまで」など。行先を聞きたいわけではない。
ちょっと留守しゃはるから、気をつけといてあげなあかんな、との気働きも伝えるわけだ。
やんわりとしたコミュニケーション。素敵ではないか。

町のなかで繰り広げられるこうした日常会話を便りに添えてみたい。そうした思いは、人と密になれない今、いっそう強くなっている。
もちろん、書きことばは、ボディーランゲージつきの話しことば以上に深いものを伝え合うことはできない。
しかし、京都の日常会話のなかの、そのやわらかな含み、微妙でいて奥深い言い回しなどを思い出しながら、かな文字にして綴ってみると、気持ちがほぐれてなんだかほっとする。
また、ひらがなの効果なのだろうか、五感が働いて、発想力が豊かになるような気がするのだ。

短信を出す折は、手書きはもちろんのこと、京ことばを添えて。それが話の糸口や、人と人との潤滑油になってくれれば、楽しい。

例えば、時候の挨拶あとの書き出しには「」つきでこう書いてみるとか。
「先日は、おそぉーまで、寄せてもうて、えらいおやかまっさんどした」。

新しいコミュニケーションの形、となれば面白い。

*「京ことばポストカード」は、月刊京都創刊70周年を記念して企画。表紙画イラスト/中川学、デザイン/鷺草デザイン事務所、文・京ことば説明/山岡祐子
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この記事を書いたKLKライター

白川書院編集顧問
山岡 祐子

 
株式会社白川書院編集顧問/元編集長
平安女学院大学文化創造センター主任研究員
日本ペンクラブ会員、日本旅のペンクラブ会員

京都市左京区で生まれ育つ。
立命館大学経済学部卒。
『月刊京都』を発行する白川書院で15年編集長を務め、書籍編集や執筆、読者イベントを企画。
新しいメディアのカタチを模索しながら、本づくり、コーディネート、イベント企画に邁進する。
モットーは、暮らしに根差した京のひと・もの・ことを丁寧にあんじょう伝えること。
共著(編集主幹)に『祇園祭のひみつ』(白川書院) ほか

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山岡 祐子

 
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平安女学院大学文化創造センター主任研究員
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京都市左京区で生まれ育つ。
立命館大学経済学部卒。
『月刊京都』を発行する白川書院で15年編集長を務め、書籍編集や執筆、読者イベントを企画。
新しいメディアのカタチを模索しながら、本づくり、コーディネート、イベント企画に邁進する。
モットーは、暮らしに根差した京のひと・もの・ことを丁寧にあんじょう伝えること。
共著(編集主幹)に『祇園祭のひみつ』(白川書院) ほか

|白川書院編集顧問|手書き/筆ペン/名入り/職人/味がある

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