短信を書く――京ことばで綴る楽しみ
京都本の草分け「月刊京都」の元編集長が語る、時候のあいさつの極意。
相手を想いながら綴る手書きのひと言は「京都人のたしなみ」ともいえます。
同氏が企画した京の情感たっぷりの「京ことばポストカード」とともにお楽しみください。
京ことばで綴る新しいコミュニケーション
京都は、人と人とのかかわり合いがとても密接なところである。
私は、かねてから、日常のちょっとしたことばの掛け合いが、先様への思い入れをじょうずに伝え、互いの心を通じ合わせる機会となっていることに魅力を感じている。
例えば、「どこいかはるのん?」「ちょっとそこまで」など。行先を聞きたいわけではない。
ちょっと留守しゃはるから、気をつけといてあげなあかんな、との気働きも伝えるわけだ。
やんわりとしたコミュニケーション。素敵ではないか。
町のなかで繰り広げられるこうした日常会話を便りに添えてみたい。そうした思いは、人と密になれない今、いっそう強くなっている。
もちろん、書きことばは、ボディーランゲージつきの話しことば以上に深いものを伝え合うことはできない。
しかし、京都の日常会話のなかの、そのやわらかな含み、微妙でいて奥深い言い回しなどを思い出しながら、かな文字にして綴ってみると、気持ちがほぐれてなんだかほっとする。
また、ひらがなの効果なのだろうか、五感が働いて、発想力が豊かになるような気がするのだ。
短信を出す折は、手書きはもちろんのこと、京ことばを添えて。それが話の糸口や、人と人との潤滑油になってくれれば、楽しい。
例えば、時候の挨拶あとの書き出しには「」つきでこう書いてみるとか。
「先日は、おそぉーまで、寄せてもうて、えらいおやかまっさんどした」。
新しいコミュニケーションの形、となれば面白い。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます
▶︎暗黙の了解「一見さんお断り」「おこしやす、おいでやす」▶︎他人を通して「折れ反れもできませんで」
▶︎漱石も惑わされた「おおきに」の意味
▶︎今昔「春の着物」伝統と工夫
▶︎京野菜で作る昔ながらのお雑煮
関連する記事
株式会社白川書院編集顧問/元編集長
平安女学院大学文化創造センター主任研究員
日本ペンクラブ会員、日本旅のペンクラブ会員
京都市左京区で生まれ育つ。
立命館大学経済学部卒。
『月刊京都』を発行する白川書院で15年編集長を務め、書籍編集や執筆、読者イベントを企画。
新しいメディアのカタチを模索しながら、本づくり、コーディネート、イベント企画に邁進する。
モットーは、暮らしに根差した京のひと・もの・ことを丁寧にあんじょう伝えること。
共著(編集主幹)に『祇園祭のひみつ』(白川書院) ほか
|白川書院編集顧問|手書き/筆ペン/名入り/職人/味がある
アクセスランキング
人気のある記事ランキング