上ル下ルに振りまわされて…

前回に引きつづき「上ル下ル」の住所表記が、配達の現場にもたらす影響とは?をご紹介いたします。まずは私のアタマの中に「?」がてんこ盛りになったケースから。京都市上京区に「桐木町」という町名があります。ザックリいうと千本通今出川の北東、正確にいうと千本五辻の交差点を東に入って1本目の通りを北に行けば桐木町です。この桐木町を舞台に不思議ワールドを経験しました。この地はふつう「千本通五辻東入上ル桐木町」と表記されます。でも、ある時こんな住所の荷物がありました。「千本通五辻東入上ル西入下ル」と書かれていたのです。なんだか、ひと昔前の宝探しの地図にある暗号のようですね。ちなみに町名は省略されていました。表記通り素直にたどっていくと、あらフシギ、一周まわって元の千本五辻に戻ってしまうのです。

よく考えれば、「東入上ル」と「西入下ル」で、それぞれを打ち消していますよね。「1+1-1-1=0」みたいなもんです。私もアタマがこんがらがりました。もう一度よ~く考えて地図とニラメッコしているうちに正解が見えてきました。目指すお宅はやっぱり桐木町でした。実はこの桐木町には路地がたくさんあって、まるで1つの町内を形成するかのように路地があちこちに伸びているのです。

この細~い路地まで上ル下ルにカウントしていることに気づかなかったのが失敗でした。ある意味、親切といえば親切な表記なのですが、それならひとこと「桐木町」と書いてくれれば、私も「地図内遭難」をせずにすんだのですが…。

五辻通り

五辻通り

今出川通りの1本北側にあり、東は大宮通りから、西は北野天満宮までを走る。かつては織物の看板が並び西陣中枢の一角をなしていた。法華宗真門流総本山・本隆寺や千本釈迦堂など由緒ある寺院とともに、地鶏の水炊きで知られる鳥岩楼や五辻の昆布など老舗の名店が連なる。

♪迷子の迷子の配達員、目指すおうちはどこですか?

今度は逆にこの暗号のような住所に助けられた例をお目にかけましょう。「上京区北町」という町名があります。小林氏の記事で述べられていました、郵便番号簿のほぼ一列分を占拠する、トンデモ町です。ザックリいうと北野天満宮を5~600mほど南に行ったあたりにあります。

「北町」でジャックされた郵便番号簿

「北町」でジャックされた郵便番号簿

理由の1つに上京区内に北町が2つあることが挙げられる。本稿で取り上げている北町の他に、北野天満宮の北にも「北町」が名を連ねている。

この北町は初心者時代の私には、非常に難易度の高い町内でした。何しろ通り名のない道が交差する十字路がいたるところにあるのです。ゆえに目印となるものが少なく同じような景色が続くため、「自分が今、どこにいるのかわからない状態」という、ドツボに陥ってしまうのです。これは絶望的です。何しろ地図を見たって現在地がわからないのだから、どうしようもありません。童謡「犬のおまわりさん」に出てくる迷子の仔ネコ状態です。しかたなく当てずっぽうで車を進めて、大通りが見えるところまで戻ってやり直しです。ビギナーはここで10~20分を費やしてしまいます。なにより精神的にくたびれてしまうことの方がツラかったですね。

さて、この北町はなぜか番地が大ざっぱで、570番と574番と580番の3つの番地でほぼ9割を占めています。つまり、同じ番地の家がめちゃめちゃ多いわけです。たとえば574番地だけで約100軒あります。ここからお目当ての家を探すと、地図を追っかけている目が「イーーーー!」となってしまいます。でもここで「天神道妙心寺道上ル 二筋目東入上ル」と書いてくれれば、その指示通りに目を進めていくことで、お届け先を発見できるんです。

このような「同じ番地に100軒の家」エリアが、北町には3つもあるのですから、難易度「高」区域であることがお分かりいただけるかと思います。

ここまで見てきましたように、まるでアミダくじを思わせる「上ル下ル東入西入」の住所表記に振り回されることもあれば、助けられることもある。京都の住所とは、まことに摩訶不思議なものでございます。


 

上ル下ル必ずしも宛先を示さず

前稿で「寺町通今出川上ル1,000m」のエピソードを述べましたが、さすがにあれはレアケースといえます。それとは別に「おいおい、それはないやろ!」となった事例をご紹介します。「上ル下ル」の表記には、いろいろな法則があります。たとえば「○○通上ル」といえば、その次の通りまでの間を指します。「堀川三条下ル」であれば「♪姉三六角蛸錦」にならい堀川六角までの間を示すわけです。そして、もう1つ「上ル下ルは、家の場所ではなく町名を基準に示される」というものもあります。よーわからん?。説明がヘタなものですみません、一例をお目にかけた方が早いですね。

KBS京都、皆さんご存知の京都唯一の地上波テレビ&ラジオ局です。このKBS京都は別名「蛤御門劇場」とも呼ばれています。理由は御所の蛤御門のほぼ向かいにあるからです。その蛤御門はどこにあるか。烏丸通下長者町上ルです。なのにKBS京都の正式住所は「上京区烏丸通一条下ル竜前町」となっています。下長者町通と一条通は400mも離れています。どういうことでしょうか。改めて地図を見てわかりました。竜前町は、と~っても長細い形をしていたのです。北は一条から南は下長者町の手前までを覆っています。他の町名をみてみると、100~150mの長さがほとんどです。ここで先ほどの原則「上ル下ルの基準は町名」を思い出してください。竜前町は確かに一条通を起点に下ル範囲をカバーしていますが、その間にある中立売通、上長者町通、と2本の通りをまたいで、これら全てが「一条下ル」でいっしょくたにされているわけです。

一般に「烏丸通一条下ル」といえば、中立売通りまでの間を指す。ところが、中立売通りどころか上長者町通りまでを越えて「一条下ル」に含めているのが本稿のケース。

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