路地にユーウツとなる配達員

冒頭から恐縮ですが、路地沿いにお住まいの方にお詫び申し上げます、ゴメンナサイ!正直にいいます。配達時に路地内のお宅があると、私は少~し(いや、けっこう)ブルーになりました。理由は、ただただメンドーであること。自慢じゃないですが、私はかなりのメンドくさがり屋です。なので、配達中もできるだけ家の真ん前に車をつけるようにしていました。だって、重たい荷物を持って歩くのはシンドイじゃないですか。しかも、お留守だったら、帰り道もモレなくも荷物つきですよ。だから、車のドアとお届け先のドアをピタリと合わせる「ドアtoドア」を原則としていました。でも、たいがいの路地は狭くて車が入れないので、ドアtoドアを断念しなくてはなりません。そして、歩く距離が長いということは、すなわち時間もかかるということです。配達は時間との戦い、このロスタイムは痛い。「メンドイ、シンドイ、時間かかる」の三拍子ゆえに路地を見るとユーウツになるのでした。

黒門今出川下ルの路地

黒門今出川下ルの路地

ひっそりとした路地に、実は中華料理の隠れ家的名店が佇んでいる。

道なき道を往く配達車

そういうわけで、私は路地であっても多少なりとも道幅があれば、車で乗り入れるようにしていました。路地に入るときはバック運転が鉄則です。前進で入ると出るときがバックとなり、出口の出合い頭事故となる危険が高まるからです。とくに配達の前半では、荷物をたくさん積んでいるので、バックミラーに移るのは荷物だけ。後方視界ゼロの状態で出口を抜けるのはかなり怖いです。何ごとも安全第一ですからね。「それやったら、歩いて行ったらええやないか」って?ごモットモなんですけどね。そこで問題になるのが私の「イラッチ」な性格なんです。

上京区慈眼庵町

上京区慈眼庵町

両手いっぱい程度の道幅をつき進む。

「京都の道は狭い」とよく言われます。ということは、路地がある前の道も狭いことが多いんですよね。するとどうなるか?配達車が道をふさいでしまうことになり、後続の車が来てしまうとクラクションを鳴らされることになります。たぶん、みなさんも経験あるんじゃないですか?こうゆうときの反応って性格が出ますよね。「スイマセンスイマセン」と小走りで車に戻ってくる人、何ごともなかったかのように、ワルツのごとく悠然と来る人。イラッチな私は待つのも待たせるのも大嫌い。「じゃかましいわ!ちょっとくらい待てんのか?!」という心の叫びとともに、イライラメーターがいきなりマックスに振りきれてしまうのです。このイライラモードに耐えられず、お届け先のピンポンだけ鳴らしてそのまま立ち去る「ピンポンダッシュ」をやってしまったこと、一度や二度ではありません。いい年こいた大人が何やってんでしょうね。でも、これはまだ「お届け前」だからマシです。最悪なのが代引き、つまり代金引換の商品のときです。

この状況では、どこに停めようが道をふさいでしまう。

代引き悲哀物語

代引きってメンドーなんですよ。お金を用意して待ってくれている良心的なお客様率は10%くらい。「え~と、ナンボやったっけ?」といいながら財布を取りに奥まで引っんで、なかなか出てこないお客さんや「そんなん買うた覚えがない」と言いだす人も時どきいます。一番ナンギしたのが、ある奥さんにネックレスだったかの貴金属をお届けしたときのことです。玄関に出てきたのがダンナさんで、代引き明細を見てケゲンな表情を見せます。どうやら奥さんはダンナに内緒で買っていた模様。なにせ代引きですからね、金額もバレバレです。最初は夫婦でボソボソとした会話だったのですが、だんだんヒートアップし、ついにはバトル開戦に至ってしまったのです。「おいおい、かんべんしてくれよ。奥さん、アンタ脇が甘いわ。せめて代引きやなしにカードで買えよ…」と思いながら、頃を見計らって「あの~、キャンセルされます…?」と仲裁がてら2人の間に割って入り、結局お金はもらえました。バトルの続きが気になったのですが、荷物が第一なので次のお届け先へと向かったのでした。

スミマセン、話を戻します。代引きでいちばん厄介なのが、つり銭切れのときです。もちろん、ある程度のつり銭は用意しておくのですが、代引きが何件も重なると手元に万札しかないこともあります。この心もとない状況で次も代引となると、祈るような思いでの訪問となります。「頼むで、万札はやめてや…」と恐る恐るお客様の差し出す手に目をやります。千円札を見てホッと胸をなでおろすときもあれば、ヌッと突きつけられた福沢諭吉さんに「アチャー!」となるときも。こんなときは「スミマセン、お釣りがないんで…」「いや、そんなん言われても…」の押し問答です。ナンダカンダで細かいお金を出してくれることが多いのですが、つり銭を用意して出直すハメになることも多々ありました。

あるとき、究極の三重苦に見舞われたことがありました。つり銭切れ状態で向かった路地奥のお宅で、1,800円くらいの代引き商品に万札が出てきたのです。さらに背後からは「ブッブー」というクラクションの音が。悪いことは重なるもので、この次に時間指定のお客さんが控えていて「タイムリミットまであと10分足らず」という極限状態に追いこまれました。たぶん私の額の血管はピクピクと脈打っていたと思います。で、どうしたか?ウルトラCの大技を炸裂させたのです。なんと!「本日は特別大サービスで、代金まけときますわ!」と言って代金の受け取りを辞退したのです。「つりはいらねえよ」の逆バージョンですね。お客さんのポカンとした顔を背に、ダッシュで路地を駆け抜けていくのでした。1,800円の自腹出血よりも、時間指定の約束を優先したアッパレな配達員魂?いやいや、このときの私はイライラのあまり、損得勘定よりもココロが秒で判断していたと思われます。


 

路地にも名前を

至るところに路地がある京都。「あじき路地」や「三上家路地」など食や織物で名のある路地もありますが、多くは名もなき路地ばかり。あるとき、○○さんというお宅を目がけて路地を入っていきました。ところが、進めど進めど○○さんのお宅は見つかりません。「おっかしーなー。表札を見落としたかな?」と帰り道、もういちど左右をキョロキョロしながら見渡しましたが、やはりナッシッング。やむなく車に戻って地図を見ると、○○さんちはもう一本北にある路地の中にあったのでした。それ以来、路地に入るときは入口になる角の家を地図でチェックし、伝票に「□□宅路地」と路地に名前を付けて書くようにしました。

三上家路地

三上家路地

ある種の観光地ともなっている西陣の路地。さすがにここを車で入るのはためらってしまう。

あと、路地って必ずしも一本道とは限らないんですよ。L字型、コの字型、卍もどき型など様ざまなタイプがあります。最後の卍もどき型になると、さながら迷路のようになり、実際私は何度か「路地内迷子」になったことがあります。カンを頼みに歩みを進めると「あれ、ここさっき見た家や」と同じところをグルグル回っていることに気づくのです。そんなこともあるので、なおさら入口をしっかりとチェックしないと「ない家を探し求める迷宮コース」という不毛なツアーに陥ります。何ごとも最初が肝心ですね。

 

一方通行を制する者、配達を制す

路地とならんで、京都の道路で特徴的なのが「一方通行の多さ」です。大阪も多いと言われていますが、あちらは幹線道路の一方通行。京都は住宅街など幹線道路の内側、俗に「せこ道」と呼ばれる脇道の大半が一方通行なのであります。となると、このイッツーをどう攻略するかが京都における配達のキモとなるわけです。このとき、もう一つのカギとなるのが「いかに信号と大通りを避けるか」問題です。

Twitter Facebook

この記事を書いたKLKライター

  

関連するキーワード