公園が苦手!?な母ライターも楽しめた けいはんな記念公園
ひょんなことから「けいはんな」
子供がいっぱいいる公園が苦手である。
子育てをしていながら“苦手”とはやや矛盾しているように感じられるかもしれないが、平日、仕事や育児に疲れた心身を休めるのに、どうしてまた子供があふれかえっている公園に行かなければならないのか。大人げないと思いつつも、どうしても足が向かないでいた。
ところが先日、縁あって「けいはんな記念公園」へ子連れで行ってきた。今回はその「けいはんな記念公園」について紹介したい。
「けいはんな」とは京都の「京(けい)」、大阪の「阪(はん)」、奈良の「奈(な)」をつなぎあわせた通称で、その名の通り3府県が交わる丘陵地にある街の名だ。正式には「関西文化学術研究都市」といい、東の「つくば研究学園都市」と並ぶ一大プロジェクトとして80年代後半からつくられた。
その中心部、京都府精華町に「けいはんな記念公園(京都府立関西文化学術研究都市記念公園)」がある。京都市内から京奈和道路で40分ほどだから意外と近い都市公園だ。
メタセコイヤ並木や閑静な住宅街に囲まれた面積は東京ドームおよそ5個分。園内は日本の文化や風土をテーマに整備されており、中でも「水景園」(有料)はもともとこの地にあった永谷池を活かしてつくられた回遊式日本庭園だ。池に立つ高さ約10m、長さ123mの歩廊橋・観月橋は同園のシンボルとも言えるスポットで、橋の上からは園内を一望することができる。
動物にも優しい環境 ちょうど良い遊具
そんな「水景園」とともに地元に親しまれているのが公園の西にある「芝生広場」(無料)である。今回私が訪れた場所だ。広場近くにある駐車場は200台も停められる上に1回400円というリーズナブルな料金も嬉しい。京都市内の公園はたいてい駐車場に時間をとられることが多いので、着いたらすぐに遊べる、スタートダッシュが早いのは子供にとってもノンストレスである。
駐車場から広場へと続く道はなだらかな坂で、お弁当などたくさんの荷物を抱える大人にとってはありがたい。その道中にはベビーベッドのあるトイレがあり、ほとんどの大人がここで子供の早る気持ちをなだめてトイレを促す。よく考えられた導線である。
やがて遊具が見えてくると子供たちのウキウキわくわくは頂点に達する。大人はそれを横目に、シートをどこへ敷こうかウロウロきょろきょろ。それぞれの時間が始まった。
よく見ると遊具を囲むように緩やかな斜面があり、そこを登ると、ほどよい平地があった。よし、ここに陣をはろう、とシートを広げていると地面に何やら黒い影が…。鹿の糞である。
「へぇ!鹿がいるんや笑」ちょっと小躍りしたい気分になった。もともとこの地は山であったと奈良の友人から聞いていたが、とはいえ今は人工的な公園。野生の動物なんて…と思っていた。しかし動物がいるということは、裏を返せば環境が良い証。除草剤や薬を使った安直な管理ではなく、草花や動物たち、ひいては私たち人にきちんと配慮がなされているのだと感じた。
シートに腰を下ろして、子供たちがいる遊具広場をぼんやり眺める。丘に陣取りしたため、やや見下ろすかたちになり、子供たちがどこにいるのかすぐにわかった。滑り台付きの木製遊具やブランコ、人気のターザンロープなどで体いっぱいにはしゃぐ子供たちの笑い声が響く。その様子を見て「これだけ広い公園なのだから、もう少し遊具が多くてもいいのに」と思ったが、いや、むしろ子供が遠くへ行ったり迷ったりしないからいいかも、と思い直した。大人はすぐに子供を見つけられるし、子供も大人を見つけられる。近すぎず遠からず、ちょうど良い距離が生む安心感。けいはんな記念公園さん、拍手である。
立体的なつくりが生む居心地の良さ
昼食を挟んだ頃から家族連れがさらに増えてきた。子供だけじゃない、たくさんの犬も闊歩している。ブルドック、プードル、ドーベルマン、ワイマラナー…。さすがに都会の家で飼われている小さな犬とは違って、体格の大きなお犬様が何頭もぞろぞろと。いつもなら「カオスや…」と根をあげて早々に家路へとついていた私だが、その日はあまり気にならず、むしろゆったり高みから見物していた。それができたのは公園のつくりに秘密がある。
「けいはんな記念公園」は、日本の風土や里山をイメージしてつくられたのは前記したとおりだが、中でも「芝生広場」は棚田をモチーフにしている。遊具広場から少し離れた木陰の少ない開放的な広場は、4面にわたって段違いになっていて、その境目がやや盛り上がっている。その立体感が公園を広く見せ、開放感を生んでいた。子供のイマジネーションもくすぐるのだろう。土の斜面を利用してラジコンで遊ぶ子もいれば、盛り土の上を軽やかに走る子供もいた。
私たちがシートをしいた遊具周辺も段違いの丘に連なっていた。だからポップアップテントを立てようが、キャンプ用の大きな椅子とテーブルを出してくつろごうが、隣との距離があまり気にならない。厳密には目線の高さが違うから、お互いの視線が気にならないのだろう。人混みの窮屈さは視界の切り替えでカバーできる。あれだけ毛嫌いしていた休日の公園でいつになく快適に過ごせたことは嬉しい発見だった。
そんな芝生広場は、春になると300本ものソメイヨシノが咲き乱れる。私が訪れたのは3月初旬だったためその景色は見られなかったが、それは見事なものらしい。桜が咲けば、今よりももっと人出があるだろう。でも、市内から40分で駐車もスムーズ、人混みをあまり気にせずお花見ができて、子供もしっかり遊べるとしたら、これほど子連れにとってありがたい公園はない。次回は桜が見頃を迎えた頃に訪れたいと思う。
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東京都生まれ、京都在住のライター・企画編集者。京都精華大学人文学部卒業後、東京の出版社に漫画編集者等で勤務。29歳で再び京都へ戻り、編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。紙媒体、Web、アプリ、SNS運用など幅広く手掛ける。
|編集者|衣笠丼/由来/真夏に雪/どんぶり/丼
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(写真提供:けいはんな記念公園)