星の数ほどある京都本の中から、Kyoto Love. Kyoto編集部がおすすめ本をご紹介するこの連載!今回は西陣を舞台にした「あなたと式神、お育てします。~京都西陣かんざし六花~」「あなたと式神、お育てします。第二集~京都西陣かんざし六花~」の2冊を取り上げます。私の好きな西陣エリアが舞台になっていることと、まだ2巻しか出ていないので読み始めやすそうだなということで興味を持ちました。登場人物やスポットのご紹介はしますが、できるだけネタバレはしないのでご安心ください!
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作者の仲町六絵先生は京都に関わる本をたくさん出しておられます。「おとなりの晴明さん」や「からくさ図書館来客簿」などは続編も多く出ている人気作品です。「おとなりの晴明さん~陰陽師は左京区にいる~」は読んだことがありますが、若くてイケメンで風変わりな安倍晴明が出てきて面白いんです!スーツがよく似合っていて、一見すると晴明らしくないところが魅力的ですね。「からくさ図書館来客簿」ではあの小野篁が登場しているそうで、そちらも気になっております。
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「あなたと式神、お育てします。」とは?
京都・西陣を舞台にしたメディアワークス文庫のライトファンタジーです。主人公は京北出身で京都市内の大学で学ぶ桔梗晴人(ききょうはると)、かの有名な安倍晴明の子孫にあたります。西陣で「かんざし六花」という店を営む謎の美女、茜と出会うことによって不思議な出会いの縁が広がっていきます。
観世稲荷社の使いの白狐、水月(すいげつ)や晴人の式神として生まれるさんごなど、人ならざるものがどんどん登場します。狐であったり、鳥であったり、様々な姿をした式神たちがあやしく、可愛く、もふもふと楽しませてくれます。
各地にいる年齢や境遇もばらばらな晴明の子孫たちが、自分の血筋ゆえの不思議な縁や出会いを通し話が展開します。それぞれの土地ならではの歴史をまじえたストーリーで、ちょっとだけ異なる世界をのぞける優しいファンタジーです。短編で1話完結になっており、とても読みやすくなっています。
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本の推しポイント
①京都を広く学べる
晴明の末裔といういかにも京都らしい主人公の実家が意外に京北にあったり、祇園祭が会津の「田島祇園祭」につながって舞台が福島に移ったりと、広い意味で京都が取り扱われています。ザ・観光地という狭い部分の京都だけでなく様々な側面を知ることができるので、本当に京都好きな人には嬉しい読み物ではないでしょうか。
第二集では四国の土佐中村という地域が出てくるのですが、碁盤の目のような道で三方を山にかこまれており京都とそっくりな町だそうです。なんと、大文字の送り火も葵祭もあるとか!全く知らなかったので驚きつつ、作者の仲町先生の博識さに感服しました。ものすごく勉強になり、知的好奇心が満たされます。定番の京都スポットは知り尽くしているという方におすすめです!
②式神がかわいい
晴人や親戚たちが様々な式神を育てていくのですが、まさかのキュートさ!晴明神社にあるようなもっとおそろしげなビジュアルを想像していました。ネタバレになるのであまり詳しく書けませんが、動物の形になっている描写が愛らしく、なでなでしたくなります。よくおやつも食べています。私も、もふもふした式神といっしょに学校に行ったりおやつ分け合ったりしたい…一般人には難しいでしょうか。
③他作品のキャラクターも友情出演!
冒頭でお話した「おとなりの晴明さん」「からくさ図書館来客簿」の安倍晴明や小野篁が普通に登場しています。かなりの大物キャラクターだと思うのですが、自然に今の京都に馴染んで住んでおられます。それぞれの世界と少しずつリンクしているので、あっちの世界ではどういう話が広がっているのだろうかとわくわくします。他のシリーズも読む楽しみが広がりますね。
かんざし六花がある「西陣」とは?
メインの舞台、西陣を知ると物語がもっと楽しくなりますよ!小説の中には実在の場所がたくさん登場しています。ちなみに西陣とは下図のエリアを指します。
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室町時代に応仁の乱で多くの人が東軍と西軍にわかれて戦ったのですが、その「西」軍の「陣」が置かれたことからこのエリアを「西陣」と呼ぶようになりました。織物が盛んな地域で「西陣織」が有名です。とても京都らしい地域で由緒のある寺社仏閣も多く、雰囲気のある素敵カフェも多い素敵な場所なんです。
【関連記事】あれ、そうゆうたら西陣ってどこなん?
作品にゆかりがある西陣スポットを地図にまとめてみました。まずは学問の神様で有名な北野天満宮!西陣エリアの西のほうにあります。受験の時は皆がお守りをもらいにいく場所ですね。北東に行くと「かんざし六花」があるとのこと。
この近くに五花街の一つ上七軒(かみしちけん)があり、春には「北野をどり」で舞妓さんや芸妓さんの美しい踊りが観られます。石畳風の舗装でお茶屋さんや綴織屋さん、飲食店などが並び風情がある街並みです。夏蜜柑丸ごとのゼリーを売っている和菓子屋さんもありますよ。
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北野天満宮の前の今出川通は、美味しいパン屋さんが多いパンストリートとして人気なんです。東に進んで大宮通までいくと西陣中央小学校があり、この敷地内に観世稲荷社があります。小学校の中なので残念ながら無断でのお参りはできません。この向かいに佇まいも味も素敵なカフェがあり、個人的におすすめです!
北の方にはマジョリカタイルが見事な銭湯カフェ「さらさ西陣」が。東に進んで堀川通に出ると、茶道資料館や晴明神社があります。
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(画像提供:晴明神社)
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(画像提供:晴明神社)
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(画像提供:晴明神社)
安倍晴明の屋敷の跡に建てられた晴明神社は、晴明桔梗(五芒星)の紋が印象的です。りりしい安倍晴明の像が参拝者を見守っており、旧・一條戻橋のそばにはなんと式神が!すこし怖いお顔ですが、控えめにちょこんと座っている様子がけなげで可愛いですね。晴明からの指示を待っているのでしょうか。晴明井や桔梗苑など見どころもたくさんありますので、聖地巡礼には欠かせません。ちなみに晴明神社がある堀川通は秋になると美しいイチョウ並木が有名です。ぜひ散策してみてください。
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西陣エリアからは外れますが、烏丸通の東には広大な敷地の京都御苑があります。北には相国寺というお寺があり、その中に宗旦稲荷社があります。千宗旦は千利休の孫にあたる茶人ですが、相国寺境内に住む一匹の白狐がたびたび宗旦に姿を変えていたそうで、宗旦狐として愛され祀られています。
最後に
「あなたと式神、育てます。」は京都から始まった物語が巧みに展開していき、歴史や文化を「なるほど~」と学びながらすいすい読める作品。現実から少しだけ異なった世界を垣間見れるようなファンタジーです。京都や歴史が好きな方にはまさにおすすめ!小説をきっかけにいろんな興味が広がっていく読書体験ができます。読後はぜひ西陣の街を歩いてみてくださいね。
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