粽のこれから

公益財団法人放下鉾保存会で役員をされている松原常夫さんが粽を持続可能な形で調達できるような仕組みを構想されています。
もう少し広域でのチマキザサの採取や、作業場所や職人の確保などができるか検討を始められています。松原さんからこのお話を伺った時に粽づくりの現場の映像を見せていただきました。

80歳は超えておられると思えるおばぁちゃん(あえてこう呼ばせていただきます)がチマキザサに芯となる藁をくるみ、紐状のイグサでくるくるッと巻いて1本出来上がり。
これを10本束ねてまたイグサで括って完成です。
実に器用な熟練の手さばきで1つの粽が完成します。
しかしこれを1軒の農家が何千本かを作られるかと思うとそれは想像を絶するような時間と作業量です。

粽本体の生産作業はここまでですが、この裸の粽が6月に各町内に運ばれてそこからまた「蘇民将来子孫也」の護符をつけて掛け紙をつけて完成となります。
これでだけ多くの方々の手数を経て出来上がることを知れば、粽のありがたみもさらに高まるのではないでしょうか。
そんな粽が千円程度で授与されているのはかなり良心的な設定だと思います。

粽を「売る」とは言わないのは信仰の観点からももっともでありますが、その収益が保存会の運営費になっている現実を思うといかにも京都的な言葉遣いだなとも思います。
また当初は賛否が分かれたインターネットでの粽授与も、コロナ禍の3年間で当たり前のことになりました。いやむしろ遠方の人にも粽をお受けいただく機会ができたという意味は大きいと思います。

祭りとは信仰(祈る気持ち)であると考えます。
であるならば、そのシンボルともいうべき粽が持続可能な形で生産から流通できるのは大切なことではないでしょうか。
これまで何百年もの長きにわたって町衆の叡智で幾多の困難を乗り越えてきた祇園祭です。
京都が誇る祇園祭の信仰を守るためにも、粽を作り続け届けられ続ける令和の新しい知恵を待ちたいと思います。

(追記)粽の由緒、そもそも「蘇民将来子孫也」の意味、祇園祭の起こりについては私が7月17日に京都新聞に記した拙い詩から調べたり思いを馳せていただけると幸いです。
来年の祇園祭がさらに待ち遠しくなると思います。たぶんですが。

この記事は2023年7月28日に掲載したものです。

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この記事を書いたKLKライター

三若神輿会幹事長
吉川 忠男

 
三若神輿会幹事長として、八坂神社中御座の神輿の指揮を執る。
神様も、観る人も、担ぐ人も楽しめる神輿を理想とする。
知られざる京都を広く発信すべく「伝えたい京都、知りたい京都 kyotolove.kyoto」を主宰。編集長。
サンケイデザイン代表取締役。

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