竹ぼかし。吊るした黄色い糸の下部を黒い染液に浸けて染めたもの(葛西絣加工所)

竹ぼかし。吊るした黄色い糸の下部を黒い染液に浸けて染めたもの(葛西絣加工所)

鎖編みで染め分けた絣の経糸を手織りした布(徳永弘氏作)

鎖編みで染め分けた絣の経糸を手織りした布(徳永弘氏作)

使われる糸の種類

西陣絣の職人さんのもとには、さまざまなクライアントから仕事が来ます。西陣絣で織られている着物や帯、雨ゴートもあれば、絣の上にゴージャスな紋織が凝らされる能衣裳、神社などで使われている几帳、前回紹介した祇園祭芦刈山御神体の小袖の復刻といった文化財の仕事もあります。それらの布次第で、西陣絣職人が手掛ける糸もさまざまなのだとか。
以下、葛西さんが手掛けている西陣織の絹糸の一例を教えていただきました。

・14/2双 イチヨンノニモロ
・21/2双 ニイチノニモロ
・21/4双 ニイチノヨツモロ
・21/6双 ニイチノムツモロ   
・21/8双 ニイチノハチモロ 
・21/8片 ニイチノハチカタ 
・31/2双 サンイチノニモロ 
・31/2駒 サンイチノニコマ 

いきなり「ニイチノニモロ」と言われても意味不明なんだけど……と、思われた読者も多いでしょう。でも実は、これだけで分かる人には糸の特性が分かる、シルクならではの糸番手表記なのです。シルクなどの長繊維は、デニールという単位で計量されます。14/2の14、21/8の21など、スラッシュの前にある数字が糸の太さを表すデニールです。9000mの長さで1gの重さの糸の太さが「1デニール」と定まっており、9000mの長さで10gであれば10デニール、14gであれば14デニール、21gであれば21デニールになります。この数が小さいほど重さが軽いわけですから、数が小さいほど糸が細いことがわかります。

次に、14/2の2のようにスラッシュの後ろにある数字は、糸の撚り本数です。シルクは1本だと細すぎるので、何本かを撚り合わせて使うのでこのように表記します。21/2なら、21デニールの糸を2本撚り合わせた糸、21/8なら21デニールの糸を8本撚り合わせた糸という意味。21/2より21/8のほうが4倍太い糸になりますね。

最後の「双」「片」「駒」というのは、代表的な糸撚りの方法です。片はゆるく、双はしっかり、駒は強く撚り合わせたことを表しています。撚り方によって糸は柔らかくなったり、硬くなったり、風合いが変わります。

これらは西陣織の生糸の例ですが、葛西さんは他産地の絣仕事も引き受けているので、生糸以外の紬糸や麻糸なども手掛けるのだそう。また、かつて西陣絣ではウールを経糸に使った時代もありましたが、現在はほんどないそうです。

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この記事を書いたKLKライター

いとへんライター・文筆家
白須 美紀

染織や紙を中心に地元京都の工芸を取材し、WEBや雑誌に寄稿。
2014年に西陣織の職人さんたちと西陣絣を伝える「いとへんuniverse」を結成。個人でも西陣絣の研究活動を続けている。また、2020年より染色作家岡部陽子と手染毛糸Margoを立ち上げ、インディダイヤーとしても活動中。


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2014年に西陣織の職人さんたちと西陣絣を伝える「いとへんuniverse」を結成。個人でも西陣絣の研究活動を続けている。また、2020年より染色作家岡部陽子と手染毛糸Margoを立ち上げ、インディダイヤーとしても活動中。


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