京都マラソン《2019》 : コース周辺まち歩き

今年の京都マラソンは、コロナの影響で開催が危ぶまれましたが、なんとかオンライン開催となりホッとしました。思えば昨年の2020大会は、コロナの影が忍び寄っていましたが、なんとか無事開催されました。一昨年の2019大会では、快晴の中で大会新記録が出ました。そこで、過去2回の京都マラソンを振り返ってみたいと思います。といってもレース観戦ではありません。京都マラソンを素材にした歴史のまち歩きです。
今回は、平成最後の年、平成31年2月17日に行われた京都マラソン《2019》です。京都マラソンは、西京極を出て嵐山に向かい、嵯峨、洛北を経て洛中に入り、鴨川を渡って岡崎へと向かうコースです。コース上には京都自慢のネタがたくさんありますが、今回は御土居にこだわってまち歩きをしました。ランナーの皆さんと一緒にたくさんの宝物を見つけましたので、ご案内します。

 

ご案内

西京極陸上競技場をスタートし、平安神宮前をゴールとする京都マラソンは、42.195キロの沿道に古都ならではのコースが設定されているのはご存知のことだろう。
世界遺産をバックにするなら仁和寺前が知られているし、神社を背景とするのなら平野神社や今宮神社の前がある。しかし、ここではあえて鴨川の岸辺から道路に駆け上がる丸太町橋の袂にこだわった。なぜなら、そこに鴨川があり、橋があり、そして近代化遺産の建造物があるからだ。

スタート

この場所には、もう一つの意味がある。それは、洛中への入口・出口になっているということだ。京都マラソン・コースで、御土居を横切る場所は3箇所ある。走路順に北大路天神川、大宮交通公園、鴨川丸太町の辺りだが、入口と出口が同じ場所は丸太町橋だけである。江戸時代に京都マラソンが行われていたら、洛中に本格的に入り、出て行ったのが、荒神口南側のこの辺りだったということである。髷を結ったランナーたちが、飛脚のごとく関所を走り抜けていったことだろう。

コース案内

1万6千人のランナーを迎える丸太町橋は、1991(平成3)年11月に竣工した新しい橋である。以前の橋は、1913(大正2)年に開業した市電丸太町線(烏丸丸太町-熊野神社前間)の敷設のため、軌道併用橋に架け替えられたという。市電開業の10年後には、南西角にモダンな京都中央電話局上分局が建ち、現在もその姿を残している。
ランナーを見守るこのモダン建築は、1997(平成9)年に国の文化財に登録された。その解説文には次のように紹介されている。「逓信省技師吉田鉄郎の設計。施工清水組。吉田の表現主義から合理主義建築へ展開する過程を知ることのできる作品の一つ。現存するRC造電話局舎の中でも最も古い作品の一つ。鴨川の右岸に位置し、その特異な外観は近代京都の河岸景観を特徴づけている。」と。

京都中央電話局上分局

ここには女紅場址の石標もあり、明治期には女子教育機関である「英女学校女紅場(のち京都府立京都第一高等女学校)」が建っていたという。この学校は現在の府立鴨沂高校である。

丸太町橋の袂

スタートから32.6キロ地点のこの場所は、鴨川の風に乗って緩やかに下るコースから、坂道を駆け上がり市街地に出る処でもあり、ランナーにとっては場面転換の意味合いもあるかもしれない。みやこめっせの『おこしやす広場』で、昨日 “コース攻略ガイド”をしていたランナーの牧野さんは、丸太町橋辺りについてこのように案内していた。
「荒神橋西詰の給水所は32.2キロ地点のミニ関門。残り10キロに体力の半分を使うので、後半戦スタートと思って臨むこと。丸太町橋袂の坂道を登るときには、ピッチを乱さないよう、歩幅を狭めて走るのも一案。最後は、まっすぐ一点を見つめて足を前に踏み出すとよい」と。

平安神宮前

マラソン日和となった2019大会は、平安神宮が大会新記録の丸山さんを温かく迎えた。
 

フィニッシュ
参考文献
京都マラソン2019大会公式プログラム
国指定文化財等データベース文化庁

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・1万6千人のランナーが西京極のトラックにあふれかえっているネ
・ランナーは古都の景色をどう見てるかナ
・ミス着物に迎えられて、完走した人へのご褒美だネ

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この記事を書いたライター

公益財団法人 京都市文化観光資源保護財団 アドバイザー 
京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了
一級建築士

1957年生まれ
1982年4月から京都市勤務
2018年3月に京都市都市計画局建築技術・景観担当局長で退職
2018年4月から2023年3月まで京都市文化財保存活用・施設整備アドバイザー
2023年7月から現職

著書:「花街から史跡まで 散歩でハマる! 大人の京都探訪」(リーフ・パブリケーション)
   「いろいろ巡ろ! 京都の文化都市施設」(KLK新書)
共著:「京都から考える都市文化政策とまちづくり」(ミネルヴァ書房)
   「『京都の文化的景観』調査報告書」(京都市)

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