お供え物をお地蔵さんの前へ

うちの町内は、設置する道具を前日のうちに倉庫から出し、当日朝早くお地蔵さんの飾りつけをします。これは町内総出の作業、みんなタオルを首にかけての大仕事です。子どもの遊び場所も必要なので、車の通らないところにテントを張り、地面にすのこを置きその上にビニールカーペットを敷いて場所を確保します。

そこまで済んだらお供えです。写真のように町内によってお供えはいろいろ。色とりどりのおかずが作られ供えられていますが、精進料理が基本なので肉魚はありません。しかし、お酒はある!目の前にビールがドーン!

お盆の時は肉魚はもちろんお酒も一切ダメでしたが、地蔵盆ではここが違うところです。これはあとで行う懇親会のための準備なんですね。なので、なんとなく仏教、なんとなく宴会、という感じ。ここに「地蔵盆で一番大事なのは何か?」が表れています。お地蔵さんの信仰は大事やけど、みんなが仲良く、みんなが地蔵盆を楽しむことことがなにより大切なんです。そしてみんなで「町内安全」を祈るのです。

お供えはものだけでなく金銭もあります。いやむしろそちらがメインですね。お金を包む袋(金封)は人によっていろいろです。赤白の水引がついてたり、中には黄白のもあります。でも私の見る限り無地の袋(お供え袋)が一番多いです。これ、地蔵盆やからというわけやないけど、お盆の上に乗せていくんですよ。このお盆が大事で、あとで役に立つのです。

全ての町内で行っているわけではありませんが、お供えを受け取ると金封だけ預かり、お盆は名前を書いた紙片を付けてお地蔵さんの前に積み上げられている町内もあります。

お供えをこれだけもらいましたよ、というお地蔵さんへの報告なんですね。

昔も今も地蔵盆は子どものパラダイス!

町内の行事は時系列で表にして配られたり、町内の家の外に貼られたりします。

▲上京区内にある町内の地蔵盆予定表

▲上京区内にある町内の地蔵盆予定表

子どもらはランチ会やスイカ割り・ふうせん釣り・金魚すくい・ゲーム・花火と遊び放題です。夕方には今度は大人も入って懇親会、反省会というような名前で宴会が開かれ、バーベキューなどするところも少なくないです。

子どもも大人もおやつと福引は楽しみです。おやつの時間が来ると、数人の子どもたちが鉦を「カンカンカン」と叩きながら町内を回り、それを合図に町内の子どもらがおやつをもらいにお地蔵さんのところへやってきます。鋭い音がするので遠くの方からでも家の中からでも良く聞こえます。この鉦はお寺にもよくあるもので、祇園祭で叩く鉦にも似てますね。以前どこの町内でも行われていたご詠歌でもお鈴(りん)とともにこの鉦が使われていました。

福引はそんなに高価なものが当たらへんとわかってても嬉しいものです。昔は「ふごおろし」と言って、2階から当たった景品を籠に入れてロープで降ろしたりしました。「ふご」とは竹やわらを編んで作った容器のことで、鳥の雛を育てる時に使う藁製の入れ物もそう呼びますね。ふごおろしではもっと大きなかごを使います。昔の京町家の中(ちゅう)二階で景品を「ふご」に入れるのですが、降りてくるまで何が入っているかわからずみんなドキドキしたと母から聞きました。母の世代の子ども時代は80~90年経っているので随分と古い話やし、今はもうないやろと思ってたんですが、上京区にもまだやったはるところがいくつかあると聞いて驚きましたね!写真は西陣の真ん中あたりにあるお町内のふごおろしです。かごを背負ったくまさんが降りてきますね。

また別の町内のふごおろしを見せてもろたんですが、そこは籠を降ろすまでの間ずっと、古い銅鑼(どら)を「ガンガンガンガンガン!」と鳴らし続けやはるのでビックリしましたよ!そののち浄土宗のお寺で同じものを見つけました。やはりお寺さんの行事とどこかでつながっているのでしょうか、行事ひとつにも深いものを感じます。子どもらは大きくなってもこの音を覚えているのでしょうか。今は目の前のおもちゃしか意識してませんけどね。

この日子どもらはいくらおやつを食べてもいくら遊んでも怒られません。子どものためのお祭なので。もう天国です。私もこの日だけはいくら子どもがアホみたいにおやつをほおばっていても叱りません。言いたいときもありますが、大人も大体タガが外れてますので…

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この記事を書いたKLKライター

鳴橋庵 店主・京都上京KOTO-継の会 会長
鳴橋 明美

 
上京の、形になりにくい文化(お祭・京都のおかず・伝統工芸・京ことば)の継承のお手伝いをする「京都上京KOTO-継の会」会長。
「鳴橋庵」店主。
「能舞台フェスタ in 今宮御旅所」実行委員会会長。

組紐とお抹茶体験を鳴橋庵店舗にて行っております。
合間合間に京都のお話を挟みつつ、楽しく体験していただけます。
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